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第3章――動き出す日常と、変わりゆく想い
12話
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応接室のドアをノックすると、父の「入りなさい」という声が聞こえる。サラに見守られながら扉を開けると、すでに父と母が席に着いていて、私を迎えてくれた。
「アーシア、具合はどうだい? 今朝は顔色が良いみたいだな」
「ええ……おかげさまで、今日は体も軽いですよ」
にこやかな父の隣で、母も安心したように微笑む。
「最近はリハビリも順調みたいね。少し散歩するくらいなら、もう平気だってサラさんから聞いたわ」
「うん。まだ長時間立ちっぱなしはきついけど、昔みたいに庭を歩くくらいは、割と……」
言いかけて、私は両親の表情がどこか嬉しそうな反面、緊張感を帯びていることに気づいた。どうやら本題があるようだ。
父は軽く咳払いをしてから、私に向かって姿勢を正す。
「実はな、アーシア……。そろそろお前を、少しずつ社交の場に戻していこうと考えているんだ。もちろん、いきなり大きなパーティーに出るわけではない。まずは、親しい関係者が集まる小さな昼食会やお茶会からでいい。そこで、お前が10年ぶりに目覚めたことを皆に正式に紹介したい」
――やはり、社交の場か。サラの言ったとおりだ。私は一瞬身構えながら、それでもやはり避けては通れない道なのだと悟る。
母が続けて説明してくれる。
「伯爵家には、昔からお付き合いのある貴族のご家族や、子供の頃に仲の良かったお友達も大勢います。もちろん、皆あなたが10年間眠っていたことは知っていますが……改めてあなたが元気になった姿をお見せするのは大切なことなの」
「……そうだね。わかってる。ずっと引きこもってリハビリしてるだけじゃ、いずれ私も辛いままだろうし……」
最初は少し勇気がいるけれど、きっと一歩ずつ慣れていくしかないのだろう。前に進むには、この大人の姿になった自分と、10年の時の流れを受け止めなければならない。
「それで、近々小規模なお茶会を開こうと思っているんだ。招くのはごく限られた人たち――ロウェル伯爵家と親しい貴族の家族や、そのお子さんたちが中心だ。日程はまだ調整中だが、早ければ来週、遅くとも再来週中には開催できるだろう」
父の説明に、私はドキリと胸を高鳴らせる。もうそんなに遠くない未来に、お披露目の場が控えているのだ。
母が優しく、しかし真剣な眼差しで続ける。
「このお茶会が、あなたにとって“第二の社交界デビュー”になるわね。もちろん、形式ばったものではなく、あくまで内輪の会合だから難しく考える必要はないの。ただ……おそらく皆が、あなたにいろいろと話しかけてくるでしょう。10年ぶりに目覚めた伯爵令嬢の噂は、どうしても興味を惹くから」
――私は自然に息が詰まるのを感じた。10年ぶりに起きた“眠り姫”とでも呼ばれているのだろうか。皆が私をどんな目で見るのか、想像するだけで落ち着かない。
けれど、ここで踏みとどまっても何も変わらないのはわかっている。私はゆっくりと息を吐き、意を決して頷いた。
「……やってみる。少し怖いけど、逃げられないし……もう、子供じゃないから」
その言葉に、父と母は同時に安堵の笑みを浮かべる。
「ありがとう、アーシア。無理をさせてすまないが、お前がこうして決心してくれたことが、私たちにとっても嬉しいんだ。……お前なら、大丈夫だと信じているよ」
「私も、サラさんや女官たちと一緒に服装やマナーの再チェックを手伝うわ。ゆっくり思い出せば、すぐに昔の勘を取り戻せると思うの」
母の言葉に、私も笑顔で応える。自分の足で一歩ずつ進む――それを決めたときから、周りはみんな私をサポートしてくれているのだ。それはとても幸せなことだと思った。
「アーシア、具合はどうだい? 今朝は顔色が良いみたいだな」
「ええ……おかげさまで、今日は体も軽いですよ」
にこやかな父の隣で、母も安心したように微笑む。
「最近はリハビリも順調みたいね。少し散歩するくらいなら、もう平気だってサラさんから聞いたわ」
「うん。まだ長時間立ちっぱなしはきついけど、昔みたいに庭を歩くくらいは、割と……」
言いかけて、私は両親の表情がどこか嬉しそうな反面、緊張感を帯びていることに気づいた。どうやら本題があるようだ。
父は軽く咳払いをしてから、私に向かって姿勢を正す。
「実はな、アーシア……。そろそろお前を、少しずつ社交の場に戻していこうと考えているんだ。もちろん、いきなり大きなパーティーに出るわけではない。まずは、親しい関係者が集まる小さな昼食会やお茶会からでいい。そこで、お前が10年ぶりに目覚めたことを皆に正式に紹介したい」
――やはり、社交の場か。サラの言ったとおりだ。私は一瞬身構えながら、それでもやはり避けては通れない道なのだと悟る。
母が続けて説明してくれる。
「伯爵家には、昔からお付き合いのある貴族のご家族や、子供の頃に仲の良かったお友達も大勢います。もちろん、皆あなたが10年間眠っていたことは知っていますが……改めてあなたが元気になった姿をお見せするのは大切なことなの」
「……そうだね。わかってる。ずっと引きこもってリハビリしてるだけじゃ、いずれ私も辛いままだろうし……」
最初は少し勇気がいるけれど、きっと一歩ずつ慣れていくしかないのだろう。前に進むには、この大人の姿になった自分と、10年の時の流れを受け止めなければならない。
「それで、近々小規模なお茶会を開こうと思っているんだ。招くのはごく限られた人たち――ロウェル伯爵家と親しい貴族の家族や、そのお子さんたちが中心だ。日程はまだ調整中だが、早ければ来週、遅くとも再来週中には開催できるだろう」
父の説明に、私はドキリと胸を高鳴らせる。もうそんなに遠くない未来に、お披露目の場が控えているのだ。
母が優しく、しかし真剣な眼差しで続ける。
「このお茶会が、あなたにとって“第二の社交界デビュー”になるわね。もちろん、形式ばったものではなく、あくまで内輪の会合だから難しく考える必要はないの。ただ……おそらく皆が、あなたにいろいろと話しかけてくるでしょう。10年ぶりに目覚めた伯爵令嬢の噂は、どうしても興味を惹くから」
――私は自然に息が詰まるのを感じた。10年ぶりに起きた“眠り姫”とでも呼ばれているのだろうか。皆が私をどんな目で見るのか、想像するだけで落ち着かない。
けれど、ここで踏みとどまっても何も変わらないのはわかっている。私はゆっくりと息を吐き、意を決して頷いた。
「……やってみる。少し怖いけど、逃げられないし……もう、子供じゃないから」
その言葉に、父と母は同時に安堵の笑みを浮かべる。
「ありがとう、アーシア。無理をさせてすまないが、お前がこうして決心してくれたことが、私たちにとっても嬉しいんだ。……お前なら、大丈夫だと信じているよ」
「私も、サラさんや女官たちと一緒に服装やマナーの再チェックを手伝うわ。ゆっくり思い出せば、すぐに昔の勘を取り戻せると思うの」
母の言葉に、私も笑顔で応える。自分の足で一歩ずつ進む――それを決めたときから、周りはみんな私をサポートしてくれているのだ。それはとても幸せなことだと思った。
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