婚約破棄されたので頑張るのをやめました 〜昼寝と紅茶だけの公爵令嬢なのに、なぜか全部うまくいきます〜あ

鍛高譚

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14話

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 翌朝。
 王都の街角には、真紅の見出しが躍る号外がばら撒かれた。

《危険なワイン!? アルベール領産に基準値超えの鉛》
《王妃御前ジュースは“香料漬け” 専門家が警鐘》

 センセーショナルな挿絵に市民はどよめき、馬車を降りて新聞を買い求める貴婦人たちの手が震えた。
 「まあ恐ろしい! 子どもに飲ませたばかりですのに!」
 「陛下がお気に召したと聞いていたのに……」

 だが動揺は長く続かなかった。
 昼前、王宮から雷鳴のような布告が下る。

《王立薬学研究所による緊急検査の結果、鉛も香料も検出されず。記事は虚偽》

 さらに追い打ち。王妃が自ら記者会見を開き、朗らかな笑みで宣言した。
 「私も子どもたちも毎日いただいておりますが、皆とても健康ですわ」

 この映像が魔石通信で流れた瞬間、街の空気は一転する。

「やっぱり嘘だったのね!」
「エレガント・タイムズは何を考えているのかしら」

 午後には新聞社前に抗議の人だかりができ、夕刻には王都警邏隊が編集長を偽計業務妨害で逮捕した。手錠を掛けられた編集長は顔面蒼白、護送車に押し込まれる直前、震える声を漏らす。

「わ、わたしは依頼を受けただけだ! 金を払ったのは……王宮の……」

 そこまで叫んで口を塞がれたが、群衆は聞き逃さない。ざわめきは渦となり、王宮の名が囁かれる。

その頃、王宮の執務室。
 アルフォンスは机を拳で叩いた。

「どうして捏造だとバレた!? 検査結果が出るには最低でも三日は――」
 「殿下」
 扉を開けて現れたのは、蒼白な顔のロレンツォ騎士。手には王印の封書。
 「陛下から直ちに御前へ、とのお呼びです」
 「……っ」

 胃が、また軋んだ。
 噂は既に王宮を駆け巡っている。編集長の供述に“王太子の資金”という言葉が出たと知れれば、国王の怒りは必至だ。

 アルフォンスは椅子から立ち上がり、ぐらりとよろめいた。
 ロレンツォが支えようと手を伸ばすが、振り払われる。

「いい、放せ。私は……英雄だ……“真実の愛”を選んだ王太子だ……!」
 呟きは自嘲に近かった。
 廊下を歩くたび、兵士や侍女の視線が突き刺さる。――嘲笑と失望。
 扉の向こうで、国王グスタフ三世の雷声が響いた。


 夜。
 王宮から一歩離れた小路で、宮廷顧問オスカーは黒い外套に身を包み、馬車に乗り込もうとしていた。
 「まだ国外逃亡は早いでしょう、顧問殿」
 背後からかかった声に振り向くと、王都警邏隊長が剣を抜いている。
 「ひ、ひと月分の俸給の倍を払う! 見逃してくれ!」
 「ご冗談を。王印偽造と贈賄の重罪だ」
 オスカーは膝から崩れ落ちた。逆襲の策は、見事なブーメランとなって自らの首を刈り取ったのだ。
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