婚約破棄? 結構ですわ。私は領地を立て直します

鍛高譚

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第4章:新たな未来と最高の幸せ

32話

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心の変化

アルベルト殿下は村で数日を過ごし、わたしたちが取り組んできた川の工事や土壌改良の現場を見学しました。村の人々も最初は緊張していましたが、殿下の柔らかな態度に次第に打ち解け、いろいろなことを話せるようになっていきます。
そんな中、殿下はわたしとも何度かゆっくりと会話をする機会を作ってくれました。大した貴族風の儀礼ではなく、素朴な木のテーブルを囲み、村のおばあさんが淹れてくれたお茶を飲みながら話す、というものです。

「あなたがここで頑張っている姿を見て、わたしは改めて思いました。人の上に立つ者として大切なのは“国民の声に耳を傾けること”だと。兄上はそのあたりをどうしても軽視してしまう。でもあなたは、たとえ伯爵家の娘という立場でも、こうして村の人たちと一緒に汗をかき、心を通わせている。」

そう語る殿下の目は、どこか温かい光を帯びています。
わたしは思わず恥ずかしくなり、「わたしはまだまだ未熟です。みんなに助けられているばかりで、自分がどこまで役に立てているのかもわかりません……」と答えました。

「いいえ、そんなことはありませんよ。あなたの働きかけが、確実に村の希望を取り戻していると感じます。王太子妃になるだけが貴族の道ではない。あなたはそれを身をもって示してくれたのではありませんか?」

アルベルト殿下の言葉に、胸がじわりと熱くなるのを感じました。
婚約破棄のとき、わたしは本当に惨めでした。王太子であるエドワード殿下に堂々と捨てられ、大勢の前で恥をかかされ、自分の価値すら否定されたように思い込んでいました。
でも、今はこうして自分の力で歩いている。周りの支えがあるにせよ、決して無力な存在ではないと思えるようになったのです。

「……ありがとう、殿下。わたしはもう、王太子妃という肩書きを失った身ですけど、こうして第二王子殿下にお会いできて光栄です。今は、この村の改善のために全力を注ぎたい。それが伯爵家の娘として、そして一人の人間としての責務だと思っています。」

わたしがそう言うと、殿下は静かに笑みを浮かべました。
その笑顔には、かつて感じていた“王族特有の威圧感”がまったくありません。やがて殿下は、すっと手を差し伸べるような仕草を見せました。

「もし、あなたがよろしければ、わたしにも協力させてください。わたしも王族の一員として、こうした領地の問題を他人事とは思えません。王都に戻ったら、できる限りの支援を検討しますし、資金や人材の面でも協力が可能かどうか、上に働きかけてみたい。もちろん、あなたや伯爵家に迷惑はかけませんよ。」

わたしはその提案に胸が高鳴り、けれど戸惑いもありました。
王太子の弟である第二王子から直接協力を申し出られるなど、予想外すぎる出来事です。だけど、彼はわたしの嘘や偽りのない姿を見て、純粋に力になりたいと思ってくれているのだと感じました。
わたしは深く頭を下げます。

「ありがとうございます。殿下がそうおっしゃってくださるなら、ぜひお力添えをお願いしたいです。わたしも、父と母に改めて相談してみます……。」

そう言いながら、わたしの胸には不思議な温かさが広がっていきました。
かつては王太子に捨てられ、すべてを失ったかのように感じたわたし。けれど、今はこうして別の形で王族と関わる機会を得ている。人生というのは、本当に何が起こるかわからないものです。
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