31 / 35
第4章:新たな未来と最高の幸せ
32話
しおりを挟む
心の変化
アルベルト殿下は村で数日を過ごし、わたしたちが取り組んできた川の工事や土壌改良の現場を見学しました。村の人々も最初は緊張していましたが、殿下の柔らかな態度に次第に打ち解け、いろいろなことを話せるようになっていきます。
そんな中、殿下はわたしとも何度かゆっくりと会話をする機会を作ってくれました。大した貴族風の儀礼ではなく、素朴な木のテーブルを囲み、村のおばあさんが淹れてくれたお茶を飲みながら話す、というものです。
「あなたがここで頑張っている姿を見て、わたしは改めて思いました。人の上に立つ者として大切なのは“国民の声に耳を傾けること”だと。兄上はそのあたりをどうしても軽視してしまう。でもあなたは、たとえ伯爵家の娘という立場でも、こうして村の人たちと一緒に汗をかき、心を通わせている。」
そう語る殿下の目は、どこか温かい光を帯びています。
わたしは思わず恥ずかしくなり、「わたしはまだまだ未熟です。みんなに助けられているばかりで、自分がどこまで役に立てているのかもわかりません……」と答えました。
「いいえ、そんなことはありませんよ。あなたの働きかけが、確実に村の希望を取り戻していると感じます。王太子妃になるだけが貴族の道ではない。あなたはそれを身をもって示してくれたのではありませんか?」
アルベルト殿下の言葉に、胸がじわりと熱くなるのを感じました。
婚約破棄のとき、わたしは本当に惨めでした。王太子であるエドワード殿下に堂々と捨てられ、大勢の前で恥をかかされ、自分の価値すら否定されたように思い込んでいました。
でも、今はこうして自分の力で歩いている。周りの支えがあるにせよ、決して無力な存在ではないと思えるようになったのです。
「……ありがとう、殿下。わたしはもう、王太子妃という肩書きを失った身ですけど、こうして第二王子殿下にお会いできて光栄です。今は、この村の改善のために全力を注ぎたい。それが伯爵家の娘として、そして一人の人間としての責務だと思っています。」
わたしがそう言うと、殿下は静かに笑みを浮かべました。
その笑顔には、かつて感じていた“王族特有の威圧感”がまったくありません。やがて殿下は、すっと手を差し伸べるような仕草を見せました。
「もし、あなたがよろしければ、わたしにも協力させてください。わたしも王族の一員として、こうした領地の問題を他人事とは思えません。王都に戻ったら、できる限りの支援を検討しますし、資金や人材の面でも協力が可能かどうか、上に働きかけてみたい。もちろん、あなたや伯爵家に迷惑はかけませんよ。」
わたしはその提案に胸が高鳴り、けれど戸惑いもありました。
王太子の弟である第二王子から直接協力を申し出られるなど、予想外すぎる出来事です。だけど、彼はわたしの嘘や偽りのない姿を見て、純粋に力になりたいと思ってくれているのだと感じました。
わたしは深く頭を下げます。
「ありがとうございます。殿下がそうおっしゃってくださるなら、ぜひお力添えをお願いしたいです。わたしも、父と母に改めて相談してみます……。」
そう言いながら、わたしの胸には不思議な温かさが広がっていきました。
かつては王太子に捨てられ、すべてを失ったかのように感じたわたし。けれど、今はこうして別の形で王族と関わる機会を得ている。人生というのは、本当に何が起こるかわからないものです。
アルベルト殿下は村で数日を過ごし、わたしたちが取り組んできた川の工事や土壌改良の現場を見学しました。村の人々も最初は緊張していましたが、殿下の柔らかな態度に次第に打ち解け、いろいろなことを話せるようになっていきます。
そんな中、殿下はわたしとも何度かゆっくりと会話をする機会を作ってくれました。大した貴族風の儀礼ではなく、素朴な木のテーブルを囲み、村のおばあさんが淹れてくれたお茶を飲みながら話す、というものです。
「あなたがここで頑張っている姿を見て、わたしは改めて思いました。人の上に立つ者として大切なのは“国民の声に耳を傾けること”だと。兄上はそのあたりをどうしても軽視してしまう。でもあなたは、たとえ伯爵家の娘という立場でも、こうして村の人たちと一緒に汗をかき、心を通わせている。」
そう語る殿下の目は、どこか温かい光を帯びています。
わたしは思わず恥ずかしくなり、「わたしはまだまだ未熟です。みんなに助けられているばかりで、自分がどこまで役に立てているのかもわかりません……」と答えました。
「いいえ、そんなことはありませんよ。あなたの働きかけが、確実に村の希望を取り戻していると感じます。王太子妃になるだけが貴族の道ではない。あなたはそれを身をもって示してくれたのではありませんか?」
アルベルト殿下の言葉に、胸がじわりと熱くなるのを感じました。
婚約破棄のとき、わたしは本当に惨めでした。王太子であるエドワード殿下に堂々と捨てられ、大勢の前で恥をかかされ、自分の価値すら否定されたように思い込んでいました。
でも、今はこうして自分の力で歩いている。周りの支えがあるにせよ、決して無力な存在ではないと思えるようになったのです。
「……ありがとう、殿下。わたしはもう、王太子妃という肩書きを失った身ですけど、こうして第二王子殿下にお会いできて光栄です。今は、この村の改善のために全力を注ぎたい。それが伯爵家の娘として、そして一人の人間としての責務だと思っています。」
わたしがそう言うと、殿下は静かに笑みを浮かべました。
その笑顔には、かつて感じていた“王族特有の威圧感”がまったくありません。やがて殿下は、すっと手を差し伸べるような仕草を見せました。
「もし、あなたがよろしければ、わたしにも協力させてください。わたしも王族の一員として、こうした領地の問題を他人事とは思えません。王都に戻ったら、できる限りの支援を検討しますし、資金や人材の面でも協力が可能かどうか、上に働きかけてみたい。もちろん、あなたや伯爵家に迷惑はかけませんよ。」
わたしはその提案に胸が高鳴り、けれど戸惑いもありました。
王太子の弟である第二王子から直接協力を申し出られるなど、予想外すぎる出来事です。だけど、彼はわたしの嘘や偽りのない姿を見て、純粋に力になりたいと思ってくれているのだと感じました。
わたしは深く頭を下げます。
「ありがとうございます。殿下がそうおっしゃってくださるなら、ぜひお力添えをお願いしたいです。わたしも、父と母に改めて相談してみます……。」
そう言いながら、わたしの胸には不思議な温かさが広がっていきました。
かつては王太子に捨てられ、すべてを失ったかのように感じたわたし。けれど、今はこうして別の形で王族と関わる機会を得ている。人生というのは、本当に何が起こるかわからないものです。
2
あなたにおすすめの小説
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
不実なあなたに感謝を
黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。
※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。
※曖昧設定。
※一旦完結。
※性描写は匂わせ程度。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。
報われない恋の行方〜いつかあなたは私だけを見てくれますか〜
矢野りと
恋愛
『少しだけ私に時間をくれないだろうか……』
彼はいつだって誠実な婚約者だった。
嘘はつかず私に自分の気持ちを打ち明け、学園にいる間だけ想い人のこともその目に映したいと告げた。
『想いを告げることはしない。ただ見ていたいんだ。どうか、許して欲しい』
『……分かりました、ロイド様』
私は彼に恋をしていた。だから、嫌われたくなくて……それを許した。
結婚後、彼は約束通りその瞳に私だけを映してくれ嬉しかった。彼は誠実な夫となり、私は幸せな妻になれた。
なのに、ある日――彼の瞳に映るのはまた二人になっていた……。
※この作品の設定は架空のものです。
※お話の内容があわないは時はそっと閉じてくださいませ。
【完】お望み通り婚約解消してあげたわ
さち姫
恋愛
婚約者から婚約解消を求められた。
愛する女性と出会ったから、だと言う。
そう、それなら喜んで婚約解消してあげるわ。
ゆるゆる設定です。3話完結で書き終わっています。
婚約者の私を見捨てたあなた、もう二度と関わらないので安心して下さい
神崎 ルナ
恋愛
第三王女ロクサーヌには婚約者がいた。騎士団でも有望株のナイシス・ガラット侯爵令息。その美貌もあって人気がある彼との婚約が決められたのは幼いとき。彼には他に優先する幼なじみがいたが、政略結婚だからある程度は仕方ない、と思っていた。だが、王宮が魔導師に襲われ、魔術により天井の一部がロクサーヌへ落ちてきたとき、彼が真っ先に助けに行ったのは幼馴染だという女性だった。その後もロクサーヌのことは見えていないのか、完全にスルーして彼女を抱きかかえて去って行くナイシス。
嘘でしょう。
その後ロクサーヌは一月、目が覚めなかった。
そして目覚めたとき、おとなしやかと言われていたロクサーヌの姿はどこにもなかった。
「ガラット侯爵令息とは婚約破棄? 当然でしょう。それとね私、力が欲しいの」
もう誰かが護ってくれるなんて思わない。
ロクサーヌは力をつけてひとりで生きていこうと誓った。
だがそこへクスコ辺境伯がロクサーヌへ求婚する。
「ぜひ辺境へ来て欲しい」
※時代考証がゆるゆるですm(__)m ご注意くださいm(__)m
総合・恋愛ランキング1位(2025.8.4)hotランキング1位(2025.8.5)になりましたΣ(・ω・ノ)ノ ありがとうございます<(_ _)>
【完結】今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる