婚約破棄された伯爵令嬢ですが、国の経済を掌握しました

鍛高譚

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第3章 暴かれる影の才覚――伯爵令嬢は動き出す

26話

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噂の拡散――伯爵令嬢は“影の実力者”?

 舞踏会の翌週、王都の貴族社会では「レティシア伯爵家の娘は、何やら途方もない資金を動かしているらしい」という噂が急速に広まりつつあった。
 その発端はもちろん、あの公爵令息ガイ・アルノーの“婚約破棄宣言”と、それを叱りつけた公爵の言葉だ。内容が内容だけに、貴族や有力商会の耳に届くのも早い。
 「ただの伯爵令嬢が、どうしてそんな莫大な資産を……?」
 「公爵のセリフが誇張じゃなければ、相当の商才があるのでは?」
 「まさか貴族の娘が両替や投資を? 下品だという声もあるが……」

 様々な憶測が飛び交う中、真相を探ろうと伯爵邸に使者を送る貴族や、直接“噂の当人”サラに面会を求める商会も現れ始めた。もちろん、サラは面会をほとんど断っている。――理由は簡単、いきなり押しかけられても信用できるわけがないし、下手をすれば情報を盗み取られる危険すらあるからだ。

 しかし、サラもすべてを無視しているわけではない。王都や各領地に散らばる情報網――自分が密かに使っている商人仲間のツテを通じて、噂を集めつつ、誰がどう動いているかを把握しようとしていた。

 「公爵家はいま、息子の不祥事を収めるのに必死みたい。実質的にわたしとの関係修復は望んでいないようだけど、公爵自身はどう考えているのかしら……」
 サラは自室の机でメモを取りながら、そう呟く。公爵があの場で息子を叱ったのは事実だが、だからといってサラへの興味を失ったわけではないはず。むしろ、周囲に悟られないように水面下で接近してくるかもしれない。

 「王族の方はどうかしら。王太子や王弟も何らかの動きを見せているかもしれないわね。」
 自分の名を高めるために“影の実力者”を取り込みたい王太子が動き出しても不思議ではない。もしサラが王家と直接取引をするようなことになれば、莫大な利益だけでなく、王族という絶対的な後ろ盾を得られる可能性もある。が、それは同時に、サラ自身の自由を大きく縛るリスクを伴う。

 「……少なくとも、今は慎重に動くしかないわね。わたしが本当はそこまで巨大な資産を持っていないと知れたら、興味を失う人間も多いでしょう。逆に、“いずれ稼ぎ出せる”と確信されれば、執拗に迫られるかもしれない。」

 サラは“噂”というものの恐ろしさをよく知っている。前世でも、投資家や金融トレーダーの噂が一人歩きし、実態以上に崇拝されたり、逆にバッシングを受けたりしていた。――ここでも同じだ。何をするにも、まずは情報戦が大切。
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