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翌日、ココアは早朝から政務書類の確認に追われていた。ブレンディ家は歴史が長いだけでなく、幾つかの領地を有している。父である公爵や執事たちが管理しているとはいえ、次世代の当主候補として、ココアも将来的には領地経営に携わる立場だ。
結婚すれば、嫁ぎ先の家を支えるのが普通だったが、今回その縁談が消えた。ならば、ブレンディ家を彼女自身が継ぐ可能性も高い。
ココアは文字を読むのは嫌いではなかったし、貴族の義務として、最低限の経営知識は身につけているつもりだ。事務仕事に向かう姿勢は真剣そのもの。
だが、途中でふと手を止め、ペンを机に置く。
「……どうせなら、パステル商会の力を借りて何か新しい事業を起こすのも面白そうね」
そう呟くと、自分でも驚くほど胸が高鳴った。自分の領地の特産品を商会と組んで大きく流通させるとか、あるいは新しい市場を開拓するとか――考え始めればいくらでもアイデアは浮かんでくる。
だが、そのためにはパステル商会との“友好”が欠かせない。ブラック家のように裏で資金目当てと見透かされれば一巻の終わりだろう。
するとそこへ、コンコン、とドアをノックする音が響いた。声をかけると、今度はブレンディ家の執事が遠慮がちに顔を出す。
「ココア様、先日の婚約破棄の件でございますが……ブラック家から正式に書状が届いております」
「あら、早かったのね。手際がいいことだわ」
淡々と答え、執事から書類を受け取る。そこには「婚約解消の意志」「今後の責任について」などがきっちりと書き連ねられていた。
貴族の家同士の婚約破棄は、下手をすれば大きなスキャンダルとなる。まして公爵家同士ともなれば、政界にも波紋を広げかねない。ブラック家としても、騒動を最小限に抑えようと必死なのだろう。
だが、ココアからすると、淡々と処理を進められるのは逆に都合がいい。このまま綺麗に破談が成立すれば、自分の身は晴れて自由だ。
……とはいえ、それだけで終わらせるつもりもなかった。彼女の胸には、どこか“悪戯心”のようなものがうずまいている。
(カフェ・ブラックは果たして本気でクレオ・パステルに惚れているのか。パステル商会はどう反応するのか。興味が尽きないわね)
書類を机にそっと置き、ココアは窓の外の晴れやかな空を見上げた。
そんな彼女の横顔は、普段よりもどこか活気に満ちているように見える。
結婚すれば、嫁ぎ先の家を支えるのが普通だったが、今回その縁談が消えた。ならば、ブレンディ家を彼女自身が継ぐ可能性も高い。
ココアは文字を読むのは嫌いではなかったし、貴族の義務として、最低限の経営知識は身につけているつもりだ。事務仕事に向かう姿勢は真剣そのもの。
だが、途中でふと手を止め、ペンを机に置く。
「……どうせなら、パステル商会の力を借りて何か新しい事業を起こすのも面白そうね」
そう呟くと、自分でも驚くほど胸が高鳴った。自分の領地の特産品を商会と組んで大きく流通させるとか、あるいは新しい市場を開拓するとか――考え始めればいくらでもアイデアは浮かんでくる。
だが、そのためにはパステル商会との“友好”が欠かせない。ブラック家のように裏で資金目当てと見透かされれば一巻の終わりだろう。
するとそこへ、コンコン、とドアをノックする音が響いた。声をかけると、今度はブレンディ家の執事が遠慮がちに顔を出す。
「ココア様、先日の婚約破棄の件でございますが……ブラック家から正式に書状が届いております」
「あら、早かったのね。手際がいいことだわ」
淡々と答え、執事から書類を受け取る。そこには「婚約解消の意志」「今後の責任について」などがきっちりと書き連ねられていた。
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だが、ココアからすると、淡々と処理を進められるのは逆に都合がいい。このまま綺麗に破談が成立すれば、自分の身は晴れて自由だ。
……とはいえ、それだけで終わらせるつもりもなかった。彼女の胸には、どこか“悪戯心”のようなものがうずまいている。
(カフェ・ブラックは果たして本気でクレオ・パステルに惚れているのか。パステル商会はどう反応するのか。興味が尽きないわね)
書類を机にそっと置き、ココアは窓の外の晴れやかな空を見上げた。
そんな彼女の横顔は、普段よりもどこか活気に満ちているように見える。
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