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2話
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それから数日後、コーラルがようやく少し気持ちを落ち着けたころ、戦況がさらに動いた。王都から「前線への増援を速やかに送るべし」という通達が各地に届けられ、アリオンを含む貴族の子息たちも次々と隊列を組んで出発していった。表向き、アリオンもまた最前線へと赴く一員だと噂されたが、コーラルはその真偽までは確かめるすべがない。自分との婚約を破棄してまで、命懸けで戦う道を選んだのだろう。そう思うと、やるせない気持ちと共に、どこか尊敬の念さえ浮かんできてしまう。
けれど、コーラルはやはり胸が苦しくなるのだった。アリオンと結ばれるはずだった未来は、冷酷なまでに断ち切られた。そこには誓いの言葉も指輪の輝きも存在せず、あるのは空っぽの寂しさだけだ。
日々が過ぎていく。コーラルに向けられる周囲の視線も気になるようになった。街の人々は噂好きで、コーラルが婚約破棄されたという話はあっという間に広まった。しかも、その理由は「アリオン様が戦場へ行き、命の危険に晒されるのを恐れて婚約を解消したらしい」やら「実はコーラル様に落ち度があったのではないか」など、事実とは異なる憶測がどんどん広まっている。コーラルは見知らぬ者から好奇の目を向けられる度に痛々しい思いを抱き、胸の内で小さく身を縮めていた。
そんなコーラルを支えてくれたのが、父であるコーラル伯爵と、母、そして家臣たちだった。特に母は、コーラルが生まれた時からの優しい微笑で彼女を包み込み、少しでも心の傷を和らげようと奔走する。伯爵自身も娘のために、必要があれば正式にアリオン伯爵家へ問いただしてもいい、と申し出てくれた。だがコーラルはそれを断った。「婚約破棄は私が納得して受けたものです。どうか放っておいてください」と。
――本当は、納得など到底できてはいない。だが、あのときアリオンの瞳に宿っていた苦しげな思いを知っているからこそ、強く責めることはしなかった。彼の言葉に偽りはなかったと、コーラルは信じている。勝手な言い分だと思う。でも、傷ついているのはアリオンも同じだろう。そう思わなければ、やり切れない。
「アリオン様……あなたは今、どこにいらっしゃるの?」
部屋の窓辺から空を見上げて、コーラルは静かに呟いた。それは誰にも届かない、宙に消える言葉。いつか彼が戻ってきたとき、自分はどうなっているのだろう。それはわからない。けれど、婚約者という形ではなくなっても、コーラルは待つと決めたのだ。彼の幸せを願い、彼が生きて帰ることを祈りながら。
けれど、コーラルはやはり胸が苦しくなるのだった。アリオンと結ばれるはずだった未来は、冷酷なまでに断ち切られた。そこには誓いの言葉も指輪の輝きも存在せず、あるのは空っぽの寂しさだけだ。
日々が過ぎていく。コーラルに向けられる周囲の視線も気になるようになった。街の人々は噂好きで、コーラルが婚約破棄されたという話はあっという間に広まった。しかも、その理由は「アリオン様が戦場へ行き、命の危険に晒されるのを恐れて婚約を解消したらしい」やら「実はコーラル様に落ち度があったのではないか」など、事実とは異なる憶測がどんどん広まっている。コーラルは見知らぬ者から好奇の目を向けられる度に痛々しい思いを抱き、胸の内で小さく身を縮めていた。
そんなコーラルを支えてくれたのが、父であるコーラル伯爵と、母、そして家臣たちだった。特に母は、コーラルが生まれた時からの優しい微笑で彼女を包み込み、少しでも心の傷を和らげようと奔走する。伯爵自身も娘のために、必要があれば正式にアリオン伯爵家へ問いただしてもいい、と申し出てくれた。だがコーラルはそれを断った。「婚約破棄は私が納得して受けたものです。どうか放っておいてください」と。
――本当は、納得など到底できてはいない。だが、あのときアリオンの瞳に宿っていた苦しげな思いを知っているからこそ、強く責めることはしなかった。彼の言葉に偽りはなかったと、コーラルは信じている。勝手な言い分だと思う。でも、傷ついているのはアリオンも同じだろう。そう思わなければ、やり切れない。
「アリオン様……あなたは今、どこにいらっしゃるの?」
部屋の窓辺から空を見上げて、コーラルは静かに呟いた。それは誰にも届かない、宙に消える言葉。いつか彼が戻ってきたとき、自分はどうなっているのだろう。それはわからない。けれど、婚約者という形ではなくなっても、コーラルは待つと決めたのだ。彼の幸せを願い、彼が生きて帰ることを祈りながら。
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