婚約破棄?結構ですわ。公爵令嬢は今日も優雅に生きております

鍛高譚

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第4章 ――貴族令嬢と王室の来訪――

14話

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アーデルハイド公爵家の屋敷に、朝日がゆっくりと差し込み始める。光が射す窓辺で、侍女のマーガレットがカーテンを開けながら私に声をかけた。

「お嬢様、昨晩はよくお休みになれましたか? 本日は早めにご用意いただいたほうがよろしいかと……。国王陛下の使者が、午前中にこちらへいらっしゃる予定だそうです」

「ええ、わかってるわ。昨日のうちに執事から話を聞いたから」

 私はベッドから起き上がり、ひとつ伸びをする。柔らかな寝衣の裾がふわりと揺れ、朝の空気が肌をくすぐる。まだ眠気は多少残っているが、これから今日は大切な“来訪”があるのだ。なぜなら王室からの使者が、この屋敷へ直々にやって来る――その用件はもちろん、“ワイン”のことである。

 前にぶどう園を訪れたとき、ポーランドたちから聞いた話によれば、今年のぶどうの出来は素晴らしく、最高のワインが作れそうだという。さらに私が“領内の秘蔵ビンテージワインを王室に特別献上してはどうか”と提案した経緯もあって、国王陛下は大変興味を示したらしい。結果、「話を聞きたい」と使者が派遣される運びとなったのだ。
 もっとも、私自身はそんな大げさなことになるとは思っていなかった。公爵家の長である父(アーデルハイド公爵)が正式に動き出したことで、まさか王宮から使者が来るほどの話へ発展するとは……。だが、転生してすでに把握していたとおり、この国にとってアーデルハイド家のワインは特別な意味を持っている。そう、国の外交や貴族社会のステータスを左右し得るほどの高い評価を得ているのだ。

「婚約破棄されて落ち込んでる暇なんか、最初からなかったわね」

 軽く苦笑いしながら、私は朝の身支度を始める。マーガレットは早速用意しておいたドレスを見せてくれた。それは淡いミントグリーンを基調とした上品なもので、やや襟元が高めのデザイン。私が先日市場で購入したリボンをさりげなくあしらい、袖口とウエスト部分が華やかに演出されている。

「お嬢様がお買いになったレースやリボンを、仕立て担当に相談して少しだけ加工してもらいました。いかがでしょう? 王室の使者をお迎えするのに、失礼のないようにとのことで……」

「あら、とても素敵じゃない。ファビアンさんも言ってたとおり、ちょっとだけ深い色味を差し込むと映えるわね。ありがとう、マーガレット」

 私はドレスを鏡の前で合わせ、にっこりと微笑む。まるで自分が小さなパーティへ出る前のような気分だ。もっとも、実際には公式の大舞踏会などではなく、あくまで“屋敷で王室の使者と面談する”のが今日の予定。だが、公爵令嬢として迎え入れる以上、それなりの装いは大切だろう。
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