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19話
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噂への対処と、二人の距離
朝の食堂。
いつものように長いテーブルを挟んで向かい合い、わたしとレオンは使用人たちの給仕で静かに食事をしていた。
ふだんの朝食なら、それほど会話は多くない。レオンは黙々とナイフとフォークを扱い、わたしはそれに合わせて必要最低限の言葉を交わすだけ。
だけど、今日はわたしのほうから切り出した。どうしても話しておきたいことがあったからだ。
「……レオン様、少しよろしいでしょうか。噂の件について、わたしなりに対処をしたいと思うのですが」
わたしがそう言うと、レオンはナイフを置いて顔を上げた。金色の瞳がやや真剣味を帯びる。
「噂、か……“君が冷遇されている”という話だな。すでに執事からも耳に入っている」
「はい。いくらわたしたちが気にしていないと言っても、これ以上放置すると公爵家の信用にも関わるかもしれません。――そこで考えたのですが」
わたしはかねてより案を練っていた対処法を、少し緊張しながら口にする。
「近々、公爵邸で茶会を開こうと思います。わたし主催の、いわゆる“夫人のサロン”ですわ。社交界では常套手段ですが、噂を流している貴婦人たちを招いて実際のわたしたちの様子を見せることで、誤解を解こうと」
「茶会……そうか。君が主催するなら、自由にして構わない」
レオンの返事は淡々としていた。わたしは少しだけ安堵する。
多くの貴族令嬢や夫人は、“自宅サロン”を通じて一定の情報を発信し、または人間関係を調整する。いわば、ちょっとした権力の見せ所でもある。
グランツ家の正妻が正式にサロンを開くともなれば、それなりの注目を集めるだろう。そこでわたしが堂々と「冷遇などされていません」と示すことができれば、噂も多少は沈静化するはずだ。
「ありがとう、レオン様。……それで、もし可能なら、当日だけは少し顔を出していただきたいのです。やはり、“公爵様と夫人は良好な関係にある”と見せたほうがいいですから」
白い結婚なのだから、本来ならわたしひとりでも問題ない。だけど、この噂を解消するためには、わたしたちが“夫婦らしく振る舞う”様子を見せるのが手っ取り早い。
レオンは少し考え込んだあと、軽く頷いた。
「わかった。あまり長い時間は取れないかもしれないが、挨拶くらいならできるだろう」
「助かります。……ありがとうございます」
そうして話がまとまったところで、再び食事が淡々と進んでいく。
ただ、わたしの胸には落ち着かないものが渦巻いていた。もともとわたしは“他人に自分たちの関係をアピール”などする気はさらさらなかったはずなのに、どうしてこんなにも噂を気にするようになったのか。
――答えは分かっている。レオンが見せる微妙な優しさが、わたしの心を揺さぶるからだ。このまま“夫婦らしくない関係”と決めつけられるのが、なぜか悔しい。
しかし、レオン自身はどう思っているのだろう。わたしの要望には素直に応えてくれるが、彼の心の内までは読めない。
ちぐはぐな距離感が、わたしたちをすこしずつ苦しめているようで、わたしはそっと唇を噛む。
朝の食堂。
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ふだんの朝食なら、それほど会話は多くない。レオンは黙々とナイフとフォークを扱い、わたしはそれに合わせて必要最低限の言葉を交わすだけ。
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わたしがそう言うと、レオンはナイフを置いて顔を上げた。金色の瞳がやや真剣味を帯びる。
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「近々、公爵邸で茶会を開こうと思います。わたし主催の、いわゆる“夫人のサロン”ですわ。社交界では常套手段ですが、噂を流している貴婦人たちを招いて実際のわたしたちの様子を見せることで、誤解を解こうと」
「茶会……そうか。君が主催するなら、自由にして構わない」
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白い結婚なのだから、本来ならわたしひとりでも問題ない。だけど、この噂を解消するためには、わたしたちが“夫婦らしく振る舞う”様子を見せるのが手っ取り早い。
レオンは少し考え込んだあと、軽く頷いた。
「わかった。あまり長い時間は取れないかもしれないが、挨拶くらいならできるだろう」
「助かります。……ありがとうございます」
そうして話がまとまったところで、再び食事が淡々と進んでいく。
ただ、わたしの胸には落ち着かないものが渦巻いていた。もともとわたしは“他人に自分たちの関係をアピール”などする気はさらさらなかったはずなのに、どうしてこんなにも噂を気にするようになったのか。
――答えは分かっている。レオンが見せる微妙な優しさが、わたしの心を揺さぶるからだ。このまま“夫婦らしくない関係”と決めつけられるのが、なぜか悔しい。
しかし、レオン自身はどう思っているのだろう。わたしの要望には素直に応えてくれるが、彼の心の内までは読めない。
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