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第5話 王宮の権力構造
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第5話 王宮の権力構造
王宮には二つの世界がある。
一つは――
華やかな世界。
舞踏会。
宴。
社交。
王族と貴族の華やかな交流。
そしてもう一つは――
実務の世界。
王国の財政を計算する者。
軍の補給を管理する者。
外交文書を作る者。
税を管理する者。
そのすべてを統括する場所。
宰相府。
王宮の一角にある、巨大な官僚機構である。
朝の宰相府は忙しかった。
書類が運ばれる。
官僚が走る。
秘書官が指示を飛ばす。
「南部貴族の報告書はこちら!」
「財務会議の資料が揃いました!」
「外交文書、至急確認を!」
その中心にいるのが――
レティシア・アルヴェーン。
王国宰相。
レティシアは机の前に座り、書類を確認していた。
秘書官が報告する。
「西部の税収報告です」
「北部軍の補給申請」
「南部貴族の紛争調停」
レティシアは淡々と署名していく。
その様子を見て、若い官僚が隣の上官に小声で聞いた。
「……宰相閣下は」
「いつ休まれているのですか」
上官は苦笑した。
「休んでいるのを見たことはないな」
「だが」
少し声を潜める。
「この王国は」
「宰相府で回っている」
若い官僚は驚いた。
「そんなにですか」
上官は頷く。
「財務」
「外交」
「軍」
「地方統治」
「すべてだ」
そして続けた。
「王宮の実務官僚の大半は」
「アルヴェーン公爵家の人脈だからな」
若い官僚は目を見開いた。
アルヴェーン公爵家。
王国最大級の貴族。
そして――
王家に極めて近い血族。
その歴史は古い。
建国の時代まで遡る。
王国成立時。
王家と共に国を築いたのが、アルヴェーン家だった。
それ以来。
王が統治し
アルヴェーン家が支える。
そういう構造が続いてきた。
そしてその象徴が――
宰相。
代々、アルヴェーン家が務めてきた。
現在も同じだ。
レティシアは若いが、その能力は誰もが認めている。
財務改革。
軍補給制度の整備。
外交交渉。
そのすべてで成果を出してきた。
若い官僚が言う。
「つまり」
「王宮の官僚は」
上官が頷く。
「ほとんど公爵派だ」
若い官僚は思わず言った。
「では王太子殿下は……」
上官は小さく笑った。
「知らない」
若い官僚は驚く。
「知らないのですか?」
上官は肩をすくめた。
「王太子殿下は」
「政治に興味がないからな」
その頃。
王太子ユリウスは王宮の庭園にいた。
隣には、例の女性。
最近お気に入りの愛人だ。
ユリウスはワインを飲みながら言う。
「レティシアは本当に」
「書類ばかりだ」
女性が笑う。
「堅い方なのですね」
ユリウスは肩をすくめた。
「そうだ」
「宰相といっても」
「結局は書類係だ」
女性は無邪気に言う。
「でも皆、宰相閣下と呼んでいますよ?」
ユリウスは笑った。
「形式だ」
「実際の政治は王族の仕事だ」
その言葉を聞いていた騎士が、少しだけ顔をしかめた。
だが何も言わない。
王太子だからだ。
ユリウスは笑いながら言った。
「まあいい」
「面倒な仕事は全部レティシアに任せておけばいい」
そして言った。
「便利な女だ」
その頃。
宰相府では会議が始まっていた。
財務官。
軍務官。
外交官。
王宮の実務を担う者たちが集まる。
レティシアが言った。
「来週の財務会議ですが」
「王宮の支出が増えています」
官僚たちは頷く。
誰もが原因を知っている。
王太子の宴。
王太子の女性問題。
王太子の浪費。
レティシアは静かに言った。
「王宮の予算は有限です」
官僚たちは黙っていた。
その言葉は、数日前に王太子にも言った言葉だ。
だが王太子は笑っただけだった。
レティシアは書類を閉じた。
そして小さく言う。
「まあ」
「いずれ理解されるでしょう」
その言葉の意味を。
この時、誰も理解していなかった。
だが――
数日後。
王太子ユリウスは
王宮の権力構造を思い知ることになる。
王宮には二つの世界がある。
一つは――
華やかな世界。
舞踏会。
宴。
社交。
王族と貴族の華やかな交流。
そしてもう一つは――
実務の世界。
王国の財政を計算する者。
軍の補給を管理する者。
外交文書を作る者。
税を管理する者。
そのすべてを統括する場所。
宰相府。
王宮の一角にある、巨大な官僚機構である。
朝の宰相府は忙しかった。
書類が運ばれる。
官僚が走る。
秘書官が指示を飛ばす。
「南部貴族の報告書はこちら!」
「財務会議の資料が揃いました!」
「外交文書、至急確認を!」
その中心にいるのが――
レティシア・アルヴェーン。
王国宰相。
レティシアは机の前に座り、書類を確認していた。
秘書官が報告する。
「西部の税収報告です」
「北部軍の補給申請」
「南部貴族の紛争調停」
レティシアは淡々と署名していく。
その様子を見て、若い官僚が隣の上官に小声で聞いた。
「……宰相閣下は」
「いつ休まれているのですか」
上官は苦笑した。
「休んでいるのを見たことはないな」
「だが」
少し声を潜める。
「この王国は」
「宰相府で回っている」
若い官僚は驚いた。
「そんなにですか」
上官は頷く。
「財務」
「外交」
「軍」
「地方統治」
「すべてだ」
そして続けた。
「王宮の実務官僚の大半は」
「アルヴェーン公爵家の人脈だからな」
若い官僚は目を見開いた。
アルヴェーン公爵家。
王国最大級の貴族。
そして――
王家に極めて近い血族。
その歴史は古い。
建国の時代まで遡る。
王国成立時。
王家と共に国を築いたのが、アルヴェーン家だった。
それ以来。
王が統治し
アルヴェーン家が支える。
そういう構造が続いてきた。
そしてその象徴が――
宰相。
代々、アルヴェーン家が務めてきた。
現在も同じだ。
レティシアは若いが、その能力は誰もが認めている。
財務改革。
軍補給制度の整備。
外交交渉。
そのすべてで成果を出してきた。
若い官僚が言う。
「つまり」
「王宮の官僚は」
上官が頷く。
「ほとんど公爵派だ」
若い官僚は思わず言った。
「では王太子殿下は……」
上官は小さく笑った。
「知らない」
若い官僚は驚く。
「知らないのですか?」
上官は肩をすくめた。
「王太子殿下は」
「政治に興味がないからな」
その頃。
王太子ユリウスは王宮の庭園にいた。
隣には、例の女性。
最近お気に入りの愛人だ。
ユリウスはワインを飲みながら言う。
「レティシアは本当に」
「書類ばかりだ」
女性が笑う。
「堅い方なのですね」
ユリウスは肩をすくめた。
「そうだ」
「宰相といっても」
「結局は書類係だ」
女性は無邪気に言う。
「でも皆、宰相閣下と呼んでいますよ?」
ユリウスは笑った。
「形式だ」
「実際の政治は王族の仕事だ」
その言葉を聞いていた騎士が、少しだけ顔をしかめた。
だが何も言わない。
王太子だからだ。
ユリウスは笑いながら言った。
「まあいい」
「面倒な仕事は全部レティシアに任せておけばいい」
そして言った。
「便利な女だ」
その頃。
宰相府では会議が始まっていた。
財務官。
軍務官。
外交官。
王宮の実務を担う者たちが集まる。
レティシアが言った。
「来週の財務会議ですが」
「王宮の支出が増えています」
官僚たちは頷く。
誰もが原因を知っている。
王太子の宴。
王太子の女性問題。
王太子の浪費。
レティシアは静かに言った。
「王宮の予算は有限です」
官僚たちは黙っていた。
その言葉は、数日前に王太子にも言った言葉だ。
だが王太子は笑っただけだった。
レティシアは書類を閉じた。
そして小さく言う。
「まあ」
「いずれ理解されるでしょう」
その言葉の意味を。
この時、誰も理解していなかった。
だが――
数日後。
王太子ユリウスは
王宮の権力構造を思い知ることになる。
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