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第6話 公開婚約破棄
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第6話 公開婚約破棄
王立学園の卒業舞踏会。
王宮大広間は、今夜いつも以上の華やかさに包まれていた。
巨大なシャンデリアが輝き、床に反射した光が揺れる。
楽団の演奏が優雅に響き、貴族たちは笑顔で談笑していた。
王国の未来を担う若き貴族たちの門出。
それが、この舞踏会の名目だった。
しかし、今夜の主役は一人しかいない。
王太子ユリウス・ヴァルディエール。
そしてその婚約者――
レティシア・アルヴェーン。
王家に最も近い公爵家の令嬢。
そしてヴァルディエール王国の宰相。
多くの貴族が彼女の姿を見て、自然に道を開けた。
「宰相閣下」
「本日はお美しい」
レティシアは優雅に微笑む。
「ありがとうございます」
しかしその時。
楽団の演奏が突然止まった。
ざわめき。
会場中央に立った人物がいた。
王太子ユリウス。
そしてその隣には――
一人の女性。
見覚えのない女性だった。
貴族たちが顔を見合わせる。
「誰だ?」
「王太子殿下の新しい……?」
ユリウスはグラスを掲げた。
「諸君!」
会場が静まり返る。
ユリウスは満足そうに笑った。
「今日、皆に伝えることがある!」
その声は広間に響き渡る。
そして彼は、ゆっくりとレティシアを指差した。
「レティシア・アルヴェーン!」
視線が一斉に集まる。
レティシアは静かに歩み出た。
ユリウスは高らかに宣言した。
「貴様との婚約を破棄する!」
一瞬の沈黙。
次の瞬間。
会場が騒然となった。
「婚約破棄?」
「王太子が?」
「この場で?」
ユリウスは構わず続ける。
「俺はこの女性を愛している!」
隣の女性が嬉しそうに腕を組む。
ユリウスは吐き捨てた。
「お前のような堅苦しい女とは結婚できん!」
貴族たちはざわめいた。
だが、ユリウスの宣言はまだ終わらない。
彼はレティシアを睨みつける。
「それだけではない!」
「宰相も首だ!」
今度こそ。
会場の空気が凍った。
「……今、なんと?」
「宰相を?」
貴族たちは顔を見合わせる。
しかしユリウスは満足そうだった。
「どうだ」
「これで王宮も少しは静かになる」
レティシアは一瞬だけ目を閉じた。
そして優雅に一礼した。
「かしこまりました」
その落ち着いた声に、再びざわめきが起こる。
ユリウスは鼻で笑った。
「やっと素直になったか」
レティシアは静かに言った。
「本日をもって」
「婚約破棄、承知いたしました」
一呼吸。
「また」
「宰相職も辞任いたします」
広間の空気が揺れる。
ユリウスは肩をすくめた。
「当然だ」
だがレティシアは続けた。
「それに伴い」
「宰相府の官僚も引き上げさせていただきます」
数人の貴族が顔を上げた。
意味を理解した者たちだった。
だがユリウスは笑った。
「好きにしろ」
「どうせ書類係だ」
レティシアはそれ以上何も言わない。
ただ一礼し、会場を後にした。
背後ではすぐに音楽が再開する。
王太子の祝宴が始まった。
笑い声が響く。
誰もが、この夜が何を意味するのか理解していなかった。
ただ一人を除いて。
――レティシアだけは。
その夜。
アルヴェーン公爵邸。
自室。
ドレスを脱ぎ、椅子に座ったレティシアは、机の上の書類を見つめていた。
慰謝料契約。
謝罪文。
口止め契約。
養育費。
すべて。
王太子ユリウスの女性問題の後始末。
レティシアは一枚めくる。
そして呟いた。
「……婚約者の不始末の後始末」
また一枚。
また同じ書類。
レティシアは額を押さえた。
そして本音が漏れる。
「正直」
深く息を吐く。
「本当にやってられませんわ!」
静かな部屋に声が響いた。
レティシアは椅子にもたれた。
「婚約者も!」
書類を軽く叩く。
「宰相も!」
沈黙。
しばらくして、レティシアはゆっくり笑った。
疲れきった笑みだった。
「……でも」
窓の外を見る。
月が静かに庭園を照らしている。
レティシアは呟いた。
「終わりましたわ」
婚約も。
宰相も。
すべて。
だがその数日後。
王太子ユリウスは気づくことになる。
自分が何を失ったのかを。
そして――
王宮が。
完全に止まることを。
王立学園の卒業舞踏会。
王宮大広間は、今夜いつも以上の華やかさに包まれていた。
巨大なシャンデリアが輝き、床に反射した光が揺れる。
楽団の演奏が優雅に響き、貴族たちは笑顔で談笑していた。
王国の未来を担う若き貴族たちの門出。
それが、この舞踏会の名目だった。
しかし、今夜の主役は一人しかいない。
王太子ユリウス・ヴァルディエール。
そしてその婚約者――
レティシア・アルヴェーン。
王家に最も近い公爵家の令嬢。
そしてヴァルディエール王国の宰相。
多くの貴族が彼女の姿を見て、自然に道を開けた。
「宰相閣下」
「本日はお美しい」
レティシアは優雅に微笑む。
「ありがとうございます」
しかしその時。
楽団の演奏が突然止まった。
ざわめき。
会場中央に立った人物がいた。
王太子ユリウス。
そしてその隣には――
一人の女性。
見覚えのない女性だった。
貴族たちが顔を見合わせる。
「誰だ?」
「王太子殿下の新しい……?」
ユリウスはグラスを掲げた。
「諸君!」
会場が静まり返る。
ユリウスは満足そうに笑った。
「今日、皆に伝えることがある!」
その声は広間に響き渡る。
そして彼は、ゆっくりとレティシアを指差した。
「レティシア・アルヴェーン!」
視線が一斉に集まる。
レティシアは静かに歩み出た。
ユリウスは高らかに宣言した。
「貴様との婚約を破棄する!」
一瞬の沈黙。
次の瞬間。
会場が騒然となった。
「婚約破棄?」
「王太子が?」
「この場で?」
ユリウスは構わず続ける。
「俺はこの女性を愛している!」
隣の女性が嬉しそうに腕を組む。
ユリウスは吐き捨てた。
「お前のような堅苦しい女とは結婚できん!」
貴族たちはざわめいた。
だが、ユリウスの宣言はまだ終わらない。
彼はレティシアを睨みつける。
「それだけではない!」
「宰相も首だ!」
今度こそ。
会場の空気が凍った。
「……今、なんと?」
「宰相を?」
貴族たちは顔を見合わせる。
しかしユリウスは満足そうだった。
「どうだ」
「これで王宮も少しは静かになる」
レティシアは一瞬だけ目を閉じた。
そして優雅に一礼した。
「かしこまりました」
その落ち着いた声に、再びざわめきが起こる。
ユリウスは鼻で笑った。
「やっと素直になったか」
レティシアは静かに言った。
「本日をもって」
「婚約破棄、承知いたしました」
一呼吸。
「また」
「宰相職も辞任いたします」
広間の空気が揺れる。
ユリウスは肩をすくめた。
「当然だ」
だがレティシアは続けた。
「それに伴い」
「宰相府の官僚も引き上げさせていただきます」
数人の貴族が顔を上げた。
意味を理解した者たちだった。
だがユリウスは笑った。
「好きにしろ」
「どうせ書類係だ」
レティシアはそれ以上何も言わない。
ただ一礼し、会場を後にした。
背後ではすぐに音楽が再開する。
王太子の祝宴が始まった。
笑い声が響く。
誰もが、この夜が何を意味するのか理解していなかった。
ただ一人を除いて。
――レティシアだけは。
その夜。
アルヴェーン公爵邸。
自室。
ドレスを脱ぎ、椅子に座ったレティシアは、机の上の書類を見つめていた。
慰謝料契約。
謝罪文。
口止め契約。
養育費。
すべて。
王太子ユリウスの女性問題の後始末。
レティシアは一枚めくる。
そして呟いた。
「……婚約者の不始末の後始末」
また一枚。
また同じ書類。
レティシアは額を押さえた。
そして本音が漏れる。
「正直」
深く息を吐く。
「本当にやってられませんわ!」
静かな部屋に声が響いた。
レティシアは椅子にもたれた。
「婚約者も!」
書類を軽く叩く。
「宰相も!」
沈黙。
しばらくして、レティシアはゆっくり笑った。
疲れきった笑みだった。
「……でも」
窓の外を見る。
月が静かに庭園を照らしている。
レティシアは呟いた。
「終わりましたわ」
婚約も。
宰相も。
すべて。
だがその数日後。
王太子ユリウスは気づくことになる。
自分が何を失ったのかを。
そして――
王宮が。
完全に止まることを。
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