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第8話 王太子の祝宴
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第8話 王太子の祝宴
その夜。
王宮の大広間では、再び宴が開かれていた。
楽団の演奏が響き、ワインが運ばれ、貴族たちが笑っている。
中央にいるのは――
王太子ユリウス・ヴァルディエール。
彼は上機嫌だった。
「いやあ、やっと静かな王宮になる」
グラスを掲げる。
周囲の若い貴族たちが笑う。
「宰相閣下は厳しい方でしたからな」
「本当に」
「書類ばかりで息が詰まる」
ユリウスは満足そうに言った。
「そうだ」
「王宮とはもっと自由な場所であるべきだ」
隣には、最近お気に入りの女性。
例の舞踏会で腕を組んでいた女性だった。
彼女は甘えた声で言う。
「殿下、本当に良かったのですか?」
ユリウスは笑う。
「何がだ?」
「宰相を解任して」
女性は不安そうな顔をする。
「皆さん少し驚いていたようですが……」
ユリウスは肩をすくめた。
「大げさだ」
「書類係が一人いなくなるだけだ」
貴族たちが笑う。
「確かに」
「宰相といっても所詮は文官です」
ユリウスはワインを飲みながら言う。
「政治は王族の仕事だ」
「細かいことは下の者に任せればいい」
その言葉を聞いて、少し離れた場所にいた年配の貴族が眉をひそめた。
だが、何も言わない。
王太子だからだ。
ユリウスは続ける。
「それに」
「レティシアは細かすぎる」
「宴の予算だの」
「王宮の会計だの」
「そんなことばかり言う」
貴族の一人が言う。
「殿下は寛大ですからな」
ユリウスは笑った。
「王族とはそういうものだ」
そしてグラスを掲げた。
「さあ!」
「今夜は祝宴だ!」
「宰相のいない、自由な王宮の始まりだ!」
歓声が上がる。
楽団の演奏が強くなる。
侍従たちが料理を運ぶ。
ワインが次々と注がれる。
だがその時。
一人の騎士が広間の入口に立っていた。
宰相府の通達を手に。
宰相辞任。
宰相府官僚、一斉辞職。
騎士はその文書を見て、顔を曇らせた。
王太子はまだ知らない。
この決定が何を意味するのかを。
その頃。
王宮の別の場所。
国王の執務室。
ヴァルディエール王国国王。
オズヴァルト三世は、静かにその通達を読んでいた。
長い沈黙。
側近が恐る恐る言う。
「陛下……」
国王はゆっくりと目を閉じた。
そして呟く。
「……愚かなことを」
側近が聞き返す。
「陛下?」
国王は窓の外を見た。
夜の王宮。
遠くから宴の音楽が聞こえる。
国王は低い声で言った。
「王宮は」
少し間を置く。
「止まるぞ」
その言葉を。
この時、誰も理解していなかった。
祝宴はまだ続いている。
笑い声が響く。
だがその裏で。
王宮の実務を担っていた者たちは――
静かに王宮を去り始めていた。
その夜。
王宮の大広間では、再び宴が開かれていた。
楽団の演奏が響き、ワインが運ばれ、貴族たちが笑っている。
中央にいるのは――
王太子ユリウス・ヴァルディエール。
彼は上機嫌だった。
「いやあ、やっと静かな王宮になる」
グラスを掲げる。
周囲の若い貴族たちが笑う。
「宰相閣下は厳しい方でしたからな」
「本当に」
「書類ばかりで息が詰まる」
ユリウスは満足そうに言った。
「そうだ」
「王宮とはもっと自由な場所であるべきだ」
隣には、最近お気に入りの女性。
例の舞踏会で腕を組んでいた女性だった。
彼女は甘えた声で言う。
「殿下、本当に良かったのですか?」
ユリウスは笑う。
「何がだ?」
「宰相を解任して」
女性は不安そうな顔をする。
「皆さん少し驚いていたようですが……」
ユリウスは肩をすくめた。
「大げさだ」
「書類係が一人いなくなるだけだ」
貴族たちが笑う。
「確かに」
「宰相といっても所詮は文官です」
ユリウスはワインを飲みながら言う。
「政治は王族の仕事だ」
「細かいことは下の者に任せればいい」
その言葉を聞いて、少し離れた場所にいた年配の貴族が眉をひそめた。
だが、何も言わない。
王太子だからだ。
ユリウスは続ける。
「それに」
「レティシアは細かすぎる」
「宴の予算だの」
「王宮の会計だの」
「そんなことばかり言う」
貴族の一人が言う。
「殿下は寛大ですからな」
ユリウスは笑った。
「王族とはそういうものだ」
そしてグラスを掲げた。
「さあ!」
「今夜は祝宴だ!」
「宰相のいない、自由な王宮の始まりだ!」
歓声が上がる。
楽団の演奏が強くなる。
侍従たちが料理を運ぶ。
ワインが次々と注がれる。
だがその時。
一人の騎士が広間の入口に立っていた。
宰相府の通達を手に。
宰相辞任。
宰相府官僚、一斉辞職。
騎士はその文書を見て、顔を曇らせた。
王太子はまだ知らない。
この決定が何を意味するのかを。
その頃。
王宮の別の場所。
国王の執務室。
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オズヴァルト三世は、静かにその通達を読んでいた。
長い沈黙。
側近が恐る恐る言う。
「陛下……」
国王はゆっくりと目を閉じた。
そして呟く。
「……愚かなことを」
側近が聞き返す。
「陛下?」
国王は窓の外を見た。
夜の王宮。
遠くから宴の音楽が聞こえる。
国王は低い声で言った。
「王宮は」
少し間を置く。
「止まるぞ」
その言葉を。
この時、誰も理解していなかった。
祝宴はまだ続いている。
笑い声が響く。
だがその裏で。
王宮の実務を担っていた者たちは――
静かに王宮を去り始めていた。
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