政略結婚のはずが、冷徹公爵の溺愛が想定外です

鍛高譚

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第1章 :政略結婚の幕開け ~冷たい風の中に潜む微かな温もり~

1-3庭園でのひとときと、胸中の囁き

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1-3庭園でのひとときと、胸中の囁き 

 広間を出ると、館の奥に広がる広大な庭園が目に入った。春の柔らかな日差しが、緑豊かな草木に優しく降り注ぎ、花々が色とりどりに咲き誇る様は、まるで新たな命の息吹を感じさせた。庭園の小道を歩きながら、私はふと、昨夜の孤独な気持ちと、今朝のレオンのふとした優しさが交錯する瞬間を思い返した。

 庭の片隅にある噴水の前に立つと、ふと背後から、柔らかな足音が近づいてくるのが聞こえた。振り返ると、そこには普段は決して私に近寄ることのないレオンが、少しだけ距離を縮め、慎重な眼差しでこちらを見つめていた。

 「ミレーヌ、君の顔色が少し青ざめているようだが、大丈夫か?」
 その問いかけは、冷たい口調ではなく、むしろ心からの案じる声のように感じられた。
 私は一瞬、戸惑いながらも答えた。「ええ、少し朝の冷えが厳しいだけだと思います。…でも、あなたの心遣いに、少し救われる気がします。」
 レオンはその言葉に、ふと微笑みながらも、どこか照れ隠しをするかのように目を逸らした。
 「……そっか。ならば、今日はもっと暖かい服装に変えるよう、家老に伝えておこう。」
 その言葉を聞いた瞬間、私の心は温かいもので満たされた。普段は厳格で感情を見せない彼が、まるで本当に私の健康を案じるかのような一言を放つ――。

 庭園を散策しながら、私たちはしばらく無言のまま歩いた。しかし、その沈黙の中には、互いに感じ合う温かな想いが確かに流れていた。風に揺れる花びらや、陽光にキラリと光る水面の輝きが、まるで私たちの新たな未来を暗示するかのように見えた。

 ふと、レオンが立ち止まり、私の顔をじっと見つめた。
 「ミレーヌ、君は……こんなに美しい。今日、君がここにいる姿は、何よりも尊い。」
 その言葉は、これまで聞いたことのない温かさと誠意に満ちており、私の心は一瞬にしてときめきを覚えた。
 「……レオン様」
 口に出す前に、私は自分の感情を整理しようと努めた。政略結婚の形式上、私たちは互いに距離を置くべき存在であるはずだ。しかし、今、この瞬間、彼の言葉は、まるで冷たい壁を打ち破るように私の心に突き刺さった。

 「……あなたのその眼差しは、ただの義務感だけではないのだろうな?」
 私の問いかけに、レオンはしばらく黙った後、低い声で答えた。
 「……お前を守りたいという気持ちは、決して形式的なものではない。君を見ていると、どうしても心が痛むのだ。あの日、君が寂しそうな顔をしていたのを、俺は忘れられない。」
 その言葉は、冷徹な印象を与えていた彼の常識を覆すものであり、私の心に熱いものが込み上げた。私は、胸の高鳴りを抑えきれず、思わず涙ぐみそうになるのを感じた。

 「レオン様……」
 ただ一言、震える声で口にするだけで、これまでの固い壁が崩れ落ちるかのような錯覚に囚われた。
 彼はゆっくりと近づき、私の額に優しく手を当てた。その温もりは、昨夜の冷たさとは全く違う、真摯で深い溺愛を感じさせるものだった。
 「君がどんなに辛い思いをしてきたか、俺には分からないかもしれない。しかし、これからは俺が全て背負う。君はただ、俺の側で微笑んでいてほしい。」
 レオンのその言葉は、あたかも固く閉ざされた扉を開ける鍵のように、私の心の奥底に眠る希望を呼び覚ました。
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