婚約者として差し出された化け物公爵様、実は最強の美形でした ~孤児の私が溺愛されるまで~

鍛高譚

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第4章 呪いと愛の行方、そしてざまぁへの道

4-5

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――エドラー家の馬車が門を出るのを確認すると、公爵は周囲の使用人に「後処理を頼む」と告げ、私を連れて奥へ向かった。人目につかない静かな回廊を抜け、しばらく歩いていると、公爵は突然足を止める。
 「ノイン……お前、大丈夫か?」
 低い声が、廊下にこだまする。私はあまりに多くの出来事が一度に起きて、未だ頭の整理がついていなかった。――けれど、公爵が私の顔を覗き込み、心配そうにしているのだけははっきりとわかる。
 「……はい……その、ありがとうございます。公爵閣下が守ってくださったから、わたし……」
 言葉に詰まって俯くと、公爵はそっと手を伸ばして私の肩を支えた。爬虫類のような鱗があるその手のひらは、最初こそ違和感があったが、今はもう慣れてきた。むしろ、不思議と安心感を覚える。
 「……わたしは、ただ当然のことをしたまでだ。お前が追い詰められる必要などない。」
 短く言いながら、公爵は目を伏せる。まるで、自分の外見への軽蔑が聞こえてくるのを恐れているような仕草に感じられた。だが、私は強く首を振る。
 「公爵閣下……わたし、怖くありません。あなたの手……少し冷たいけれど、それでも……あたたかいと思います。」
 その言葉に、公爵の瞳が僅かに揺れた。彼はなぜか少しだけ苦しそうな表情を浮かべ、口を引き結ぶ。
 「……変わっているな、お前は。そんなことを言われたのは初めてだ……。」
 「いえ、わたしも……初めてなんです。こうやって、誰かにちゃんと守られているのを感じるの……。」
 孤児院でも、エドラー伯爵家でも、“守られている”と感じたことはなかった。むしろいつも、私がいない方がいいのではないか、と思うことばかり。けれど今は、ほんの少しだけ、「ここにいてもいい」と思える気がする。


公爵は視線をそらしながら、それでも私の肩から手を離さないまま、一つ溜息をつく。
 「……わたしは、この醜い姿のせいで、幼い頃から周囲に忌み嫌われてきた。誰も近づこうとしないし、正面から対話しようともしない。呪いだとか、魔物の血だとか、好き勝手に噂されて……それでも、領地を守るためには公爵位を捨てられなかった。孤独の中で生きるしかなかったんだ。」
 初めて聞く、公爵の本音のような言葉。その声には、言い知れぬ寂寥が滲んでいる。私の胸がぎゅっと痛んだ。
 「……公爵閣下……」
 「だが、最近、妙に心が落ち着かない。お前がここにいると……こうして話していると……少しだけ、孤独が紛れるような気がする。それが呪いの影響なのか、お前の力なのか……よくわからんがな。」
 公爵が小さく嘲笑めいた微笑を浮かべる。まるで、自分でも自分の心が読めないと言わんばかりに。
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