婚約破棄された伯爵令嬢は、冷酷公爵に一瞬で囲われました

鍛高譚

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---第二章:仮縁談の行方と冷酷公爵の甘い囁き

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帰路の馬車にて

 伯爵家へ戻るために用意された馬車に乗り込み、ソフィアは緊張が解けたのか、思わず深い息をついてしまう。アレクシスは隣に腰を下ろし、静かに彼女を見やる。
「先ほどは失礼でした。私が急に割り込む形になりましたから……」
「いいえ……むしろ助かりました。王子の言葉を聞いていると、どうにも気持ちが乱されてしまって……。自分でも困ってしまうんです」
 ソフィアは正直な胸の内を吐露する。エドワードに対する想いは、もう完全に吹っ切れたはずなのに、いざ向こうから話しかけられると、やはり感情がぐちゃぐちゃに乱される。
「それは当たり前でしょう。あの男は、貴女の心を踏みにじった張本人だ。思い出すだけで辛いのに、当人を前にして平気でいられるはずがない。……しばらくは、彼との距離を取るほうがいいですね」
「はい……そう思います。幸い、わたしはもう王子の婚約者ではありませんし、あの人に振り回される必要もないのですから」
 ソフィアの言葉に、アレクシスはどこか安堵したような眼差しを向けた。
「……ソフィア嬢、今日のところは本当にお疲れでしょうが、改めて礼を言いたい。貴女があの場ではっきりと私との婚約を肯定してくれたことを、私は嬉しく思っています」
 その言葉に、ソフィアは静かに目を伏せる。
「わたしは、公爵様に救われました。王子から捨てられたと思って落ち込んでいたとき……公爵様が“自分の意思で迎える”とおっしゃってくださったこと。それがどれほど心強かったか……」
 そう話しながら、自然と頬が熱くなるのを感じる。アレクシスはどんな表情をしているだろうかと、ちらりと横目でうかがうと、ほんの少しだけ微笑んでくれていた。
 ――こんな穏やかな時間が、これから先もずっと続けばいい。ソフィアはそう願わずにはいられない。
(婚約発表の宴が終わったら、もっとバタバタするのかしら……。だけど、公爵様と一緒なら、乗り越えられる気がする)
 王家の都合で早めに進められる結婚準備。そこに待ち受ける波乱を予感しながらも、ソフィアの心は確かな希望を育みはじめていた――。
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