「平民との恋愛を選んだ王子、後悔するが遅すぎる」

鍛高譚

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第3章:動き出す野望と過去との対峙

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●ラウルの焦燥とリリアの苦悩

そんな中、リリアの心は疲弊の色を深めていた。
ラウルの宮廷居室に招かれてからというもの、彼女は貴婦人や女官、侍女などから遠巻きに冷視される日々を送っている。表立って悪口を言われるだけならともかく、噂話や陰口、時には嫌がらせじみた行為まで行われることがあり、彼女は怯えるばかりだった。
「平民の分際で王子を誘惑した」
「グランシェル侯爵家への侮辱をさせた原因」
「王族の義務から逃げた男を狂わせた女」
そんな陰湿な言葉がまことしやかに飛び交っているのを、リリアは何度も耳にしている。
ラウルは「絶対に守る」と言い張るが、実際には彼自身も王宮内での発言力を失いつつあり、“守る”といっても具体的にどうすればいいのか分かっていないのだ。徐々に孤立を深めるラウルとともに過ごすうち、リリアの心にも暗い影が差していく。

「あの……殿下、私……こんな形で皆さまに反対されるのは、やっぱり辛いです。グランシェル侯爵令嬢を傷つけてしまったことも……後悔しているんです」
ある夜、リリアはラウルにそう打ち明けた。
「後悔なんてするな。マイラには悪いことをしたが、もう過去のことだ。君が謝る必要なんてない」
ラウルは即座にそう言うが、そこにはどこかしら自分に言い聞かせているような硬さがにじむ。リリアは不安げに俯く。
「でも……私がもっと気を遣っていれば、あるいは殿下とグランシェル侯爵令嬢の婚約を乱すようなことにならなかったかも……」
「違う。僕はマイラとの婚約に息苦しさを感じていた。それは誰のせいでもない。僕が決断したんだ。……だけど、どうしてこうなってしまったんだろう」
ラウルは言葉を失う。守りたいと願ったリリアをかえって深く苦しめる結果になっている。しかも、頼みの綱だったグランシェル侯爵家に助けを乞うても、冷淡にはねつけられた。彼にはもはや、有力貴族が味方してくれる可能性も見込めない。

(――いったい、どうすればいい……)
ラウルの焦燥は高まるばかりだ。だが同時に、王宮や父王の意向に逆らい続けることのリスクも痛感し始めている。下手をすれば王家から完全に追放され、王子という立場すら失いかねない。リリアを連れて国外へ逃れたところで、生活できるだけの資金や受け入れ先があるわけではない。
“愛さえあれば大丈夫”――そんな若さゆえの幻想は、崩れかけていた。
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