日替わりメイド・ミリア 〜追い出されたけれど両家から引っ張りだこ! 最後に選ぶのは“恋”ですか?“居場所”ですか?〜

鍛高譚

文字の大きさ
21 / 43

第19話『アーロン様、メイド仕事を覚える(覚えない)』

しおりを挟む
第19話『アーロン様、メイド仕事を覚える(覚えない)』

翌朝。

ミリアがアーロン邸でのメイド仕事に向かおうとすると――

玄関先で既にアーロンが待っていた。

「……おはよう、ミリア。今日は早いな」

「殿下こそ、なぜここに?」

「昨日の反省だ。今日は**“仕事の邪魔をしない方法”**を研究してみようと思ってな」

(いや、その研究いります?)

ミリアは苦笑しつつも、アーロンを連れて屋敷へ向かった。



●家事開始

まずは洗濯物の仕分け。

ミリアは手際よくぱっぱっと分類していく。

「では、アーロン様は……こちらの色物を籠に入れてください」

「わかった」

アーロンは真剣に見つめて――

(ミリアの横顔、神々しいな……)

籠に入れる手が完全に止まった。

「アーロン様?」

「……ミリアの手元を観察していた」

「いえ、作業してください!!」

 



次、掃き掃除。

ミリアはスイスイと箒を動かす。

「では殿下、あちら側をお願いします」

アーロンは箒を構え、ミリアの動きを真似ようとする。

が。

ザッ ザッ ガッシャアアアアアア!!!

箒が柱に激突。花瓶が落ちた。

「ぎゃっ!?!?!?!?」

ミリアの悲鳴。

アーロンは無表情で言った。

「……柱が急に動いた」

「動きません!!絶対に動きません!!」

「花瓶がひとりでに飛んだ気がしたのだが」

「殿下の手が当たったんですよ!!その証拠に割れて……」

……割れていなかった。

落ちただけで無事だった。

「良かった……」

ミリアが胸を撫で下ろすと、アーロンは小声で呟く。

「……花瓶よりミリアの悲鳴のほうが心臓に悪い」

「え?何かおっしゃいました?」

「何でもない」

顔がほんのり赤い。



次、料理の下準備。

ミリアが野菜を切っていると、アーロンが隣に立つ。

「危ない。指を切るかもしれん。代わろう」

「いえ、私は慣れてま──」

アーロンは包丁を手に取る。

ミリアは固まった。

(いやな予感がする……)

案の定。

アーロンは野菜に包丁を置いた瞬間、野菜がぴょんと逃げた。(※ただの滑り)

アーロンは真顔。

「……今、野菜が自分で動いた」

「違います!!殿下が変な力を入れたからです!!」

ミリアは慌てて包丁を奪い返し、アーロンはしょんぼり座った。

「……ミリアはすごいな。こんな危険な道具を平然と扱えるなんて」

「料理を危険物扱いしないでください!!」

 



そして昼食。

アーロンは静かに言った。

「……やはり、俺は掃除も洗濯も料理も向いていないようだ」

「はい、向いていません」

「言い切るんだな」

「殿下は殿下のお仕事を頑張っていただければ……私は私の仕事をいたします」

するとアーロンは、少しだけ寂しそうに目を伏せた。

「だが……ミリアのそばにいたくてな」

「えっ……」

ミリアは手を止める。

アーロンは続ける。

「昨日、お前がいなくなったとき……心臓が止まるかと思った」

「アーロン様……」

「だから……邪魔になっても……一緒にいたい」

(ずるい……そんな顔で言われたら……)

ミリアの耳がじわっと熱を持つ。

が、次の瞬間。

「……ただし、これからは最低限の訓練をする。ミリアの仕事を邪魔しないための」

「えっ?」

アーロンは突然立ち上がり、拳を握りしめた。

「掃除訓練、洗濯訓練、料理訓練! 全部やる!」

「えっ、それはちょっと……」

「まずは箒の素振りからだな」

「剣の素振りみたいに言わないでください!!」

アーロンは本気でやる気らしい。

ミリアは盛大にため息をついた。

(……でも、なんだろ)

(ちょっとだけ、胸が熱い)

 



その日の夕方。

アーロンは屋敷の庭で、箒を剣のごとく振り回していた。

「フッ……!」

「アーロン様!!!
 箒を折るのだけは!! 箒だけはやめてーーーー!!」

叫ぶミリアの声が、夕暮れにこだました。


---
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】男運ゼロの転生モブ令嬢、たまたま指輪を拾ったらヒロインを押しのけて花嫁に選ばれてしまいました

Rohdea
恋愛
──たまたま落ちていた指輪を拾っただけなのに! かつて婚約破棄された過去やその後の縁談もことごとく上手くいかない事などから、 男運が無い伯爵令嬢のアイリーン。 痺れを切らした父親に自力で婚約者を見つけろと言われるも、なかなか上手くいかない日々を送っていた。 そんなある日、特殊な方法で嫡男の花嫁選びをするというアディルティス侯爵家のパーティーに参加したアイリーンは、そのパーティーで落ちていた指輪を拾う。 「見つけた! 僕の花嫁!」 「僕の運命の人はあなただ!」 ──その指輪こそがアディルティス侯爵家の嫡男、ヴィンセントの花嫁を選ぶ指輪だった。 こうして、落ちていた指輪を拾っただけなのに運命の人……花嫁に選ばれてしまったアイリーン。 すっかりアイリーンの生活は一変する。 しかし、運命は複雑。 ある日、アイリーンは自身の前世の記憶を思い出してしまう。 ここは小説の世界。自分は名も無きモブ。 そして、本来この指輪を拾いヴィンセントの“運命の人”になる相手…… 本当の花嫁となるべき小説の世界のヒロインが別にいる事を─── ※2021.12.18 小説のヒロインが出てきたのでタグ追加しました(念の為)

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

嫌われ令嬢ですが、最終的に溺愛される予定です

由香
恋愛
貴族令嬢エマは、自分が周囲から嫌われていると信じて疑わなかった。 婚約者である侯爵令息レオンからも距離を取られ、冷たい視線を向けられている――そう思っていたのに。 ある日、思いがけず聞いてしまった彼の本音。 「君を嫌ったことなど、一度もない」 それは誤解とすれ違いが重なっただけの、両片思いだった。 勘違いから始まる、甘くて優しい溺愛恋物語。

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

華やかな異世界公爵令嬢?――と思ったら地味で前世と変わらないブラックでした。 ~忠誠より確かな契約で異世界働き方改革ですわ~』

ふわふわ
恋愛
華やかなドレス。きらびやかな舞踏会。 公爵令嬢として転生した私は、ようやく優雅な人生を手に入れた―― ……はずでしたのに。 実態は、書類の山、曖昧な命令、責任の押し付け合い。 忠誠の名のもとに搾取される領地運営。 前世のブラック企業と、何も変わりませんでしたわ。 ならば。 忠誠ではなく契約を。 曖昧な命令ではなく明文化を。 感情論ではなく、再評価条項を。 「お父様、お手伝いするにあたり契約を結びましょう」 公爵家との契約から始まった小さな改革は、やがて王家を巻き込み、地方貴族を動かし、王国全体の制度を揺るがしていく――。 透明化。共有化。成果の可視化。 忠誠より確かな契約で、異世界働き方改革ですわ。 これは、玉座を奪う物語ではありません。 国家を“回る構造”に変える、公爵令嬢の改革譚。 そして最後に選ばれるのは――契約ではなく、覚悟。 ---

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

国外追放ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私は、セイラ・アズナブル。聖女候補として全寮制の聖女学園に通っています。1番成績が優秀なので、第1王子の婚約者です。けれど、突然婚約を破棄され学園を追い出され国外追放になりました。やった〜っ!!これで好きな事が出来るわ〜っ!! 隣国で夢だったオムライス屋はじめますっ!!そしたら何故か騎士達が常連になって!?精霊も現れ!? 何故かとっても幸せな日々になっちゃいます。

だってわたくし、悪女ですもの

さくたろう
恋愛
 妹に毒を盛ったとして王子との婚約を破棄された令嬢メイベルは、あっさりとその罪を認め、罰として城を追放、おまけにこれ以上罪を犯さないように叔父の使用人である平民ウィリアムと結婚させられてしまった。  しかしメイベルは少しも落ち込んでいなかった。敵対視してくる妹も、婚約破棄後の傷心に言い寄ってくる男も華麗に躱しながら、のびやかに幸せを掴み取っていく。 小説家になろう様にも投稿しています。

処理中です...