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第19話『アーロン様、メイド仕事を覚える(覚えない)』
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第19話『アーロン様、メイド仕事を覚える(覚えない)』
翌朝。
ミリアがアーロン邸でのメイド仕事に向かおうとすると――
玄関先で既にアーロンが待っていた。
「……おはよう、ミリア。今日は早いな」
「殿下こそ、なぜここに?」
「昨日の反省だ。今日は**“仕事の邪魔をしない方法”**を研究してみようと思ってな」
(いや、その研究いります?)
ミリアは苦笑しつつも、アーロンを連れて屋敷へ向かった。
◆
●家事開始
まずは洗濯物の仕分け。
ミリアは手際よくぱっぱっと分類していく。
「では、アーロン様は……こちらの色物を籠に入れてください」
「わかった」
アーロンは真剣に見つめて――
(ミリアの横顔、神々しいな……)
籠に入れる手が完全に止まった。
「アーロン様?」
「……ミリアの手元を観察していた」
「いえ、作業してください!!」
◆
次、掃き掃除。
ミリアはスイスイと箒を動かす。
「では殿下、あちら側をお願いします」
アーロンは箒を構え、ミリアの動きを真似ようとする。
が。
ザッ ザッ ガッシャアアアアアア!!!
箒が柱に激突。花瓶が落ちた。
「ぎゃっ!?!?!?!?」
ミリアの悲鳴。
アーロンは無表情で言った。
「……柱が急に動いた」
「動きません!!絶対に動きません!!」
「花瓶がひとりでに飛んだ気がしたのだが」
「殿下の手が当たったんですよ!!その証拠に割れて……」
……割れていなかった。
落ちただけで無事だった。
「良かった……」
ミリアが胸を撫で下ろすと、アーロンは小声で呟く。
「……花瓶よりミリアの悲鳴のほうが心臓に悪い」
「え?何かおっしゃいました?」
「何でもない」
顔がほんのり赤い。
◆
次、料理の下準備。
ミリアが野菜を切っていると、アーロンが隣に立つ。
「危ない。指を切るかもしれん。代わろう」
「いえ、私は慣れてま──」
アーロンは包丁を手に取る。
ミリアは固まった。
(いやな予感がする……)
案の定。
アーロンは野菜に包丁を置いた瞬間、野菜がぴょんと逃げた。(※ただの滑り)
アーロンは真顔。
「……今、野菜が自分で動いた」
「違います!!殿下が変な力を入れたからです!!」
ミリアは慌てて包丁を奪い返し、アーロンはしょんぼり座った。
「……ミリアはすごいな。こんな危険な道具を平然と扱えるなんて」
「料理を危険物扱いしないでください!!」
◆
そして昼食。
アーロンは静かに言った。
「……やはり、俺は掃除も洗濯も料理も向いていないようだ」
「はい、向いていません」
「言い切るんだな」
「殿下は殿下のお仕事を頑張っていただければ……私は私の仕事をいたします」
するとアーロンは、少しだけ寂しそうに目を伏せた。
「だが……ミリアのそばにいたくてな」
「えっ……」
ミリアは手を止める。
アーロンは続ける。
「昨日、お前がいなくなったとき……心臓が止まるかと思った」
「アーロン様……」
「だから……邪魔になっても……一緒にいたい」
(ずるい……そんな顔で言われたら……)
ミリアの耳がじわっと熱を持つ。
が、次の瞬間。
「……ただし、これからは最低限の訓練をする。ミリアの仕事を邪魔しないための」
「えっ?」
アーロンは突然立ち上がり、拳を握りしめた。
「掃除訓練、洗濯訓練、料理訓練! 全部やる!」
「えっ、それはちょっと……」
「まずは箒の素振りからだな」
「剣の素振りみたいに言わないでください!!」
アーロンは本気でやる気らしい。
ミリアは盛大にため息をついた。
(……でも、なんだろ)
(ちょっとだけ、胸が熱い)
◆
その日の夕方。
アーロンは屋敷の庭で、箒を剣のごとく振り回していた。
「フッ……!」
「アーロン様!!!
箒を折るのだけは!! 箒だけはやめてーーーー!!」
叫ぶミリアの声が、夕暮れにこだました。
---
翌朝。
ミリアがアーロン邸でのメイド仕事に向かおうとすると――
玄関先で既にアーロンが待っていた。
「……おはよう、ミリア。今日は早いな」
「殿下こそ、なぜここに?」
「昨日の反省だ。今日は**“仕事の邪魔をしない方法”**を研究してみようと思ってな」
(いや、その研究いります?)
ミリアは苦笑しつつも、アーロンを連れて屋敷へ向かった。
◆
●家事開始
まずは洗濯物の仕分け。
ミリアは手際よくぱっぱっと分類していく。
「では、アーロン様は……こちらの色物を籠に入れてください」
「わかった」
アーロンは真剣に見つめて――
(ミリアの横顔、神々しいな……)
籠に入れる手が完全に止まった。
「アーロン様?」
「……ミリアの手元を観察していた」
「いえ、作業してください!!」
◆
次、掃き掃除。
ミリアはスイスイと箒を動かす。
「では殿下、あちら側をお願いします」
アーロンは箒を構え、ミリアの動きを真似ようとする。
が。
ザッ ザッ ガッシャアアアアアア!!!
箒が柱に激突。花瓶が落ちた。
「ぎゃっ!?!?!?!?」
ミリアの悲鳴。
アーロンは無表情で言った。
「……柱が急に動いた」
「動きません!!絶対に動きません!!」
「花瓶がひとりでに飛んだ気がしたのだが」
「殿下の手が当たったんですよ!!その証拠に割れて……」
……割れていなかった。
落ちただけで無事だった。
「良かった……」
ミリアが胸を撫で下ろすと、アーロンは小声で呟く。
「……花瓶よりミリアの悲鳴のほうが心臓に悪い」
「え?何かおっしゃいました?」
「何でもない」
顔がほんのり赤い。
◆
次、料理の下準備。
ミリアが野菜を切っていると、アーロンが隣に立つ。
「危ない。指を切るかもしれん。代わろう」
「いえ、私は慣れてま──」
アーロンは包丁を手に取る。
ミリアは固まった。
(いやな予感がする……)
案の定。
アーロンは野菜に包丁を置いた瞬間、野菜がぴょんと逃げた。(※ただの滑り)
アーロンは真顔。
「……今、野菜が自分で動いた」
「違います!!殿下が変な力を入れたからです!!」
ミリアは慌てて包丁を奪い返し、アーロンはしょんぼり座った。
「……ミリアはすごいな。こんな危険な道具を平然と扱えるなんて」
「料理を危険物扱いしないでください!!」
◆
そして昼食。
アーロンは静かに言った。
「……やはり、俺は掃除も洗濯も料理も向いていないようだ」
「はい、向いていません」
「言い切るんだな」
「殿下は殿下のお仕事を頑張っていただければ……私は私の仕事をいたします」
するとアーロンは、少しだけ寂しそうに目を伏せた。
「だが……ミリアのそばにいたくてな」
「えっ……」
ミリアは手を止める。
アーロンは続ける。
「昨日、お前がいなくなったとき……心臓が止まるかと思った」
「アーロン様……」
「だから……邪魔になっても……一緒にいたい」
(ずるい……そんな顔で言われたら……)
ミリアの耳がじわっと熱を持つ。
が、次の瞬間。
「……ただし、これからは最低限の訓練をする。ミリアの仕事を邪魔しないための」
「えっ?」
アーロンは突然立ち上がり、拳を握りしめた。
「掃除訓練、洗濯訓練、料理訓練! 全部やる!」
「えっ、それはちょっと……」
「まずは箒の素振りからだな」
「剣の素振りみたいに言わないでください!!」
アーロンは本気でやる気らしい。
ミリアは盛大にため息をついた。
(……でも、なんだろ)
(ちょっとだけ、胸が熱い)
◆
その日の夕方。
アーロンは屋敷の庭で、箒を剣のごとく振り回していた。
「フッ……!」
「アーロン様!!!
箒を折るのだけは!! 箒だけはやめてーーーー!!」
叫ぶミリアの声が、夕暮れにこだました。
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