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【α嫌いのΩ】4.生活能力=0
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「…ごほっ!」
御堂は、咳込む如月の背中を軽く叩いてやり、咳が治まるとそっと髪を撫でた。
すり、手のひらに頬を擦り寄せてくる如月にやや驚いた表情を見せたものの、そのまま御堂が頭を撫でてやると、気持ちが良さそうに如月は目を閉じていた。
「おでこ、冷たいの貼っとくか」
「貼る…ごほ」
いつになく素直な如月に御堂は思わず唇を緩めた。
こんな如月は、見たことがない。
額に持ってきた冷却剤を張ってやり、点滴を入れ始めて30分もすると、如月の咳も止まり、穏やかな寝息を立て始めた。
御堂は洗濯機の中身を洗濯して干してしまい、台所に残っていた僅かなグラスを洗ってしまうと、ぐるりと部屋の中を見回した。
部屋の作りは3LDK。一部屋は書斎、一部屋は寝室、一部屋はものも置かれていなく、全く使われていない。20畳程度のリビングはこざっぱりとモノトーンでまとめられていて、テレビとソファ、ローテーブルとこたつ程度しか置かれていない。キッチンはほとんど使われた形跡がない。IHのクッキンヒーターも組み込み式の食器洗浄機も使われた形跡がない。家電製品といえば、冷蔵庫と電子レンジのみ。電子レンジは多少使っている様子はあるが、食器は北欧ブランドの皿が数枚と、マグカップが一つある程度で、必要最低限どころか、茶碗や汁椀もない。申し訳程度にフライパンと鍋が置いてはあったが、これも使われた痕跡は見当たらなかった。
「…どうやって生活してんだ、お前…」
納戸には掃除機とフロアモップが置いてあるだけだ。
点滴が落ちきって1時間もすると、如月がふと目を開いた。
水音がするキッチンの方向に視線をやり、銀髪を認めて起き上がった如月に気づいた御堂が顔を上げた。
「起きた?何か食える?」
「?」
寝ぼけているのか、御堂を認めて目を丸くした。
近づいてきた御堂に一瞬身構え、そっと差し出された盆を見て、御堂を見上げた。
一人用の小さな土鍋に、塩昆布、梅干し、ほぐした焼き鮭の三種類の小皿。
「え…」
「警戒すんな。遥に頼まれてここ教えられて、さっき来ただろ。点滴したの覚えてないか?これは、ついでに持ってきた」
御堂が土鍋の蓋を開けると、ふわりと柔らかな出汁の香りが広がった。
そっと木製のスプーンを渡され、如月がふと御堂を見た。
「レンゲじゃないの…」
「レンゲ、熱くなるから俺が嫌いなの」
「あ…、そっか…」
こくりと頷き、如月はひと口雑炊を口に入れ、ふわりと微笑んだ。
塩昆布でひと匙、梅干しでひと匙、焼き鮭でひと匙。ゆっくりと食べ進めたものの、3分の1ほどを食べると、如月はことり、とスプーンを置いた。
「もう終わりか」
「…お腹いっぱい」
盆を受け取り、嫌な予感がして御堂が如月の顔を覗き込んだ。
「お前、いつからまともに食ってない?」
ごそ、と布団に潜り込みながら、
「…正月の3日くらい?」
一瞬、目を丸くした御堂は、何かを言いかけて唇を閉じた。
年末にも同じような会話をした記憶がある。
(またかよ…。そりゃ、抵抗力付かねーわな…)
溜息。
「りんごとシナモンのソルベがあるけど」
もぞ、と目出し帽のように、布団の隙間から如月の目が現れた。
「食べる」
やはり、スイーツならば入るわけだ。後で、le brouillardへ何か買いに行くか。
どうやってビタミンを摂らせるか…。
頭の中であれこれ考えつつ小さなグラスにソルベを盛ると、小さなスプーンと一緒に起き上がった如月に手渡してやる。
「残りは、冷凍庫入れとくとから。あと、葉月のパウンドケーキと、紅茶はここな」
出来るだけ手の届くところに一式を置き、
「うん。ありがとう」
点滴の道具などを一通りバッグへ放り込むと、如月の掛け布団を直してやった。
「しばらくは薬が効くけど、辛くなったら夜中でも電話しろよ?遥には、様子連絡しとくから」
「…うん。…あの」
「ん」
ドアを開けた御堂が振り返り、
「…帰る?」
思わぬ如月からの一言に、無表情のまま目を丸くした。
「…どうした?」
じ、と如月を見つめ、一瞬無言になった。
一瞬であれこれを頭の中で考え、
「勘違いすんなよ。心配なのは事実だけど、俺は、お前が弱ってるところにつけ込むつもりは全くねーからな」
うん、と如月はスプーン をくわえたまま頷いた。
「…分かってるよ。…今、俺、おかしいから。…多分」
御堂が如月の隣に戻り、額に手を当てた。
「お前、大丈夫?」
「だ、から!」
「あー…、分かった。夕方、また来る」
まだ熱い首筋に掌で触れれば、ぎゅっと目を閉じた如月の肩がびくりと跳ねる。
「あ、…悪い」
やや俯いて詫びつつ。
「弱ってる時は、人恋しくなるもんだけど。いてもいいなら、いようか?」
冗談めかして言ってみれば、如月が上目遣いに御堂を見た。
暫くそのまま見ていたが、こくり、と頷く。
「…いいの」
驚いたのは、御堂の方で。
「いて」
今度は、御堂がこくりと頷いていた。
「…あ、…うん」
「ごちそうさま」
如月が差し出したグラスを受け取ると、
「…ここ」
如月が、御堂の手を引いた。
「ここに、いて」
自分の隣に座らせると、如月はそのまま、すう、と眠ってしまった。
一瞬で眠りに落ちてしまったそのあどけない寝顔を見て、どく、と御堂の心臓が踊る。
(なんつー、無防備な…)
なんだ、この状況は。
「キサ?」
とりあえず、呼んでみても、返事はない。
まだ平熱というには温かい指が、御堂の手首を掴んだままだ。
柄にもなく戸惑いを感じながら自分の手首を掴む細い指を人差し指でそっとなぞると、長いまつ毛は伏せられたまま、僅かに震えて御堂をどきりとさせた。
起こすわけにもいかず、御堂はそのままスマホを眺め始めた。
(勘弁しろよ…)
自分で言い出したにもかかわらず、自分の切羽詰まった状況を如月のせいにしつつ、2時間もすると、さすがの御堂もやや退屈になってきた。本は読み終え、ネット記事も飽きてしまった。相変わらず如月は御堂の手首を掴んだままだ。 如月を覗き込めば、ぐっすりと眠っているように見える。まだ、少し頬も赤い。
長いまつ毛に、薄く開いた紅い唇を見ていると、自然に御堂は顔を近づけていた。
触れそうなほどに唇が近づき、ぐ、と衝動を押し留めて顔を離す。
(こんなこと、しに来たんじゃない)
「………」
小さくため息をつき、そっと手首から如月の指を外そうと触れると、ふ、と焦茶の瞳が御堂を映した。
「帰る…?」
子どものような表情で見上げてくる如月に、御堂は苦笑した。
いつもの様子を考えると、正直なところこんなに懐かれるとは思っていなかったので、これだけ荷物は持ってきたのだが、この状態では容易に帰してもらえそうにないのではないかと、やや心配にもなっできた。
さすがに、自分のことは何も用意をしてきていない。
「一応、帰るけど。さすがに俺も腹減ったし」
如月はふ、と顔を逸らすともそもそと布団に潜り込み、
「…食事、ありがとう」
小さく言うと、布団の中で小さく丸まってしまった。
御堂は、咳込む如月の背中を軽く叩いてやり、咳が治まるとそっと髪を撫でた。
すり、手のひらに頬を擦り寄せてくる如月にやや驚いた表情を見せたものの、そのまま御堂が頭を撫でてやると、気持ちが良さそうに如月は目を閉じていた。
「おでこ、冷たいの貼っとくか」
「貼る…ごほ」
いつになく素直な如月に御堂は思わず唇を緩めた。
こんな如月は、見たことがない。
額に持ってきた冷却剤を張ってやり、点滴を入れ始めて30分もすると、如月の咳も止まり、穏やかな寝息を立て始めた。
御堂は洗濯機の中身を洗濯して干してしまい、台所に残っていた僅かなグラスを洗ってしまうと、ぐるりと部屋の中を見回した。
部屋の作りは3LDK。一部屋は書斎、一部屋は寝室、一部屋はものも置かれていなく、全く使われていない。20畳程度のリビングはこざっぱりとモノトーンでまとめられていて、テレビとソファ、ローテーブルとこたつ程度しか置かれていない。キッチンはほとんど使われた形跡がない。IHのクッキンヒーターも組み込み式の食器洗浄機も使われた形跡がない。家電製品といえば、冷蔵庫と電子レンジのみ。電子レンジは多少使っている様子はあるが、食器は北欧ブランドの皿が数枚と、マグカップが一つある程度で、必要最低限どころか、茶碗や汁椀もない。申し訳程度にフライパンと鍋が置いてはあったが、これも使われた痕跡は見当たらなかった。
「…どうやって生活してんだ、お前…」
納戸には掃除機とフロアモップが置いてあるだけだ。
点滴が落ちきって1時間もすると、如月がふと目を開いた。
水音がするキッチンの方向に視線をやり、銀髪を認めて起き上がった如月に気づいた御堂が顔を上げた。
「起きた?何か食える?」
「?」
寝ぼけているのか、御堂を認めて目を丸くした。
近づいてきた御堂に一瞬身構え、そっと差し出された盆を見て、御堂を見上げた。
一人用の小さな土鍋に、塩昆布、梅干し、ほぐした焼き鮭の三種類の小皿。
「え…」
「警戒すんな。遥に頼まれてここ教えられて、さっき来ただろ。点滴したの覚えてないか?これは、ついでに持ってきた」
御堂が土鍋の蓋を開けると、ふわりと柔らかな出汁の香りが広がった。
そっと木製のスプーンを渡され、如月がふと御堂を見た。
「レンゲじゃないの…」
「レンゲ、熱くなるから俺が嫌いなの」
「あ…、そっか…」
こくりと頷き、如月はひと口雑炊を口に入れ、ふわりと微笑んだ。
塩昆布でひと匙、梅干しでひと匙、焼き鮭でひと匙。ゆっくりと食べ進めたものの、3分の1ほどを食べると、如月はことり、とスプーンを置いた。
「もう終わりか」
「…お腹いっぱい」
盆を受け取り、嫌な予感がして御堂が如月の顔を覗き込んだ。
「お前、いつからまともに食ってない?」
ごそ、と布団に潜り込みながら、
「…正月の3日くらい?」
一瞬、目を丸くした御堂は、何かを言いかけて唇を閉じた。
年末にも同じような会話をした記憶がある。
(またかよ…。そりゃ、抵抗力付かねーわな…)
溜息。
「りんごとシナモンのソルベがあるけど」
もぞ、と目出し帽のように、布団の隙間から如月の目が現れた。
「食べる」
やはり、スイーツならば入るわけだ。後で、le brouillardへ何か買いに行くか。
どうやってビタミンを摂らせるか…。
頭の中であれこれ考えつつ小さなグラスにソルベを盛ると、小さなスプーンと一緒に起き上がった如月に手渡してやる。
「残りは、冷凍庫入れとくとから。あと、葉月のパウンドケーキと、紅茶はここな」
出来るだけ手の届くところに一式を置き、
「うん。ありがとう」
点滴の道具などを一通りバッグへ放り込むと、如月の掛け布団を直してやった。
「しばらくは薬が効くけど、辛くなったら夜中でも電話しろよ?遥には、様子連絡しとくから」
「…うん。…あの」
「ん」
ドアを開けた御堂が振り返り、
「…帰る?」
思わぬ如月からの一言に、無表情のまま目を丸くした。
「…どうした?」
じ、と如月を見つめ、一瞬無言になった。
一瞬であれこれを頭の中で考え、
「勘違いすんなよ。心配なのは事実だけど、俺は、お前が弱ってるところにつけ込むつもりは全くねーからな」
うん、と如月はスプーン をくわえたまま頷いた。
「…分かってるよ。…今、俺、おかしいから。…多分」
御堂が如月の隣に戻り、額に手を当てた。
「お前、大丈夫?」
「だ、から!」
「あー…、分かった。夕方、また来る」
まだ熱い首筋に掌で触れれば、ぎゅっと目を閉じた如月の肩がびくりと跳ねる。
「あ、…悪い」
やや俯いて詫びつつ。
「弱ってる時は、人恋しくなるもんだけど。いてもいいなら、いようか?」
冗談めかして言ってみれば、如月が上目遣いに御堂を見た。
暫くそのまま見ていたが、こくり、と頷く。
「…いいの」
驚いたのは、御堂の方で。
「いて」
今度は、御堂がこくりと頷いていた。
「…あ、…うん」
「ごちそうさま」
如月が差し出したグラスを受け取ると、
「…ここ」
如月が、御堂の手を引いた。
「ここに、いて」
自分の隣に座らせると、如月はそのまま、すう、と眠ってしまった。
一瞬で眠りに落ちてしまったそのあどけない寝顔を見て、どく、と御堂の心臓が踊る。
(なんつー、無防備な…)
なんだ、この状況は。
「キサ?」
とりあえず、呼んでみても、返事はない。
まだ平熱というには温かい指が、御堂の手首を掴んだままだ。
柄にもなく戸惑いを感じながら自分の手首を掴む細い指を人差し指でそっとなぞると、長いまつ毛は伏せられたまま、僅かに震えて御堂をどきりとさせた。
起こすわけにもいかず、御堂はそのままスマホを眺め始めた。
(勘弁しろよ…)
自分で言い出したにもかかわらず、自分の切羽詰まった状況を如月のせいにしつつ、2時間もすると、さすがの御堂もやや退屈になってきた。本は読み終え、ネット記事も飽きてしまった。相変わらず如月は御堂の手首を掴んだままだ。 如月を覗き込めば、ぐっすりと眠っているように見える。まだ、少し頬も赤い。
長いまつ毛に、薄く開いた紅い唇を見ていると、自然に御堂は顔を近づけていた。
触れそうなほどに唇が近づき、ぐ、と衝動を押し留めて顔を離す。
(こんなこと、しに来たんじゃない)
「………」
小さくため息をつき、そっと手首から如月の指を外そうと触れると、ふ、と焦茶の瞳が御堂を映した。
「帰る…?」
子どものような表情で見上げてくる如月に、御堂は苦笑した。
いつもの様子を考えると、正直なところこんなに懐かれるとは思っていなかったので、これだけ荷物は持ってきたのだが、この状態では容易に帰してもらえそうにないのではないかと、やや心配にもなっできた。
さすがに、自分のことは何も用意をしてきていない。
「一応、帰るけど。さすがに俺も腹減ったし」
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