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あの日。
蒼乃ちゃんは、何が怖いの? と。
優吾くんが聞いてくれた。
その言葉を何度も反芻し、考えた。
不感症となじった彼?
優吾くん以外の男?
分かり合えない両親?
容姿で私の価値を決める職場の人たち?
……愛おしいあなたの寝顔を目前にしている今だから言える。
私はね、優吾くん。
あなたのことが、いちばん怖い。
「……ん……」
四肢の全てが蕩けそうにだるくて、下腹にずくりと違和感がある。
足の付け根が痛いのは、開脚のせいだなって……そこまで思い出したら、じわじわと体温が上昇した。
好きな人と繋がる行為が、あんなにも恥ずかしい体制で、気持ち良いものだなんて……。
心がいつまでもふわふわとしている。
隣で眠る優吾くんは……。
「ふふ……可愛い……」
健やかな寝顔って、こういうことを言うのかな……。
大人しく私に撫でられたまま、安心しきっているところ、愛おしくて仕方がない。
優吾くんは、いつも私に可愛いって言ってくれる。
伝えてくれる愛情はわかりやすくて……きっと、自分の方が好きの重さが大きいって、思っているんだろうな。
優吾くん。
あのね。
私が、あの家を離れようと思ったのは、あなたと距離を置くためだった。
あなたに依存してしまうことが、なによりも怖かったから。
両親から愛してもらえない私を、いつだっていちばんに求めてくれたのは、8つも歳下のあなただけ。
「蒼乃ちゃん!」って、元気いっぱいに笑顔を向けてくれるあなたが、愛おしくて仕方がなかったの。
離れなきゃって、思ったのはね。
あなたへの想いが、愛情じゃなくて、依存だったから。
私を無条件に慕う優吾くんを、意のままにできてしまう瞬間は何度もあった。
表情一つで言うことを聞いてしまう優吾くん。
愛玩動物のように可愛がられたがる優吾くん。
……私がやっていることは、うちの庭を覗き込む男たちとなんら変わりないのではと……怖くなった。
決定打は母だ。
『あなたのことを、いちばんに思えなくて、ごめんね』
クリスマスプレゼントを貰ったあの日。
母の贖罪は、私への戒めになる。
ーーやっぱり、私、あなたのいちばんには、なれなかったんだね。
飲み込んだ言葉の成れの果ては、ずっとずっと、私の中で澱となり、蝕んで、……誰かと親密になる度に、私をいちばんにしてくれる男の子と比較した。
優吾くん。
私は、もう二度と、あなたに会いたくなかった。
だって、私
会えない時間も、あなたの未来が美しいものであるよう祈ってた。
私のような女になど捕まらず、どうか、身も心も健やかな女性と……私の知らないところで、幸せになってほしいと。
それくらい、あなたの存在は、ずっとずっと大きいものだったの。
もう一度、会ってしまったら、その時は、もう他の誰にもあなたを譲れない。そんな気さえしていた。
……曲がりなりにも、慕っていた年上の幼馴染が、こんなことを考えていたら……怖いでしょう?
でも、結局は……
「……思った通りだったね」
私は、もう、他の誰にもあなたを譲れない。
他の誰かに、あなたが触られるのを許せない。
ふと、見上げた空は快晴だった。
優吾くん。
ずっと私を好きでいてね。
私はあなたを、両親のように閉じ込めたりしたくないの。
だって、優吾くんには、向日葵を連想させる夏の青空がよく似合うから。
さて、せっかくの休日だ。
この愛おしい恋人を起こすべきか。
それとも……もう一度、この逞しい腕に、強く抱きしめられるのも良いかもしれない。
「ねぇ、起きているでしょう?」
「……ちゅーしてくれたら起きるかも」
「あは! 仕方がないなぁ」
……愛してるよ。
年下で純情で、ちょっとえっちなあなたのことを。
蒼乃ちゃんは、何が怖いの? と。
優吾くんが聞いてくれた。
その言葉を何度も反芻し、考えた。
不感症となじった彼?
優吾くん以外の男?
分かり合えない両親?
容姿で私の価値を決める職場の人たち?
……愛おしいあなたの寝顔を目前にしている今だから言える。
私はね、優吾くん。
あなたのことが、いちばん怖い。
「……ん……」
四肢の全てが蕩けそうにだるくて、下腹にずくりと違和感がある。
足の付け根が痛いのは、開脚のせいだなって……そこまで思い出したら、じわじわと体温が上昇した。
好きな人と繋がる行為が、あんなにも恥ずかしい体制で、気持ち良いものだなんて……。
心がいつまでもふわふわとしている。
隣で眠る優吾くんは……。
「ふふ……可愛い……」
健やかな寝顔って、こういうことを言うのかな……。
大人しく私に撫でられたまま、安心しきっているところ、愛おしくて仕方がない。
優吾くんは、いつも私に可愛いって言ってくれる。
伝えてくれる愛情はわかりやすくて……きっと、自分の方が好きの重さが大きいって、思っているんだろうな。
優吾くん。
あのね。
私が、あの家を離れようと思ったのは、あなたと距離を置くためだった。
あなたに依存してしまうことが、なによりも怖かったから。
両親から愛してもらえない私を、いつだっていちばんに求めてくれたのは、8つも歳下のあなただけ。
「蒼乃ちゃん!」って、元気いっぱいに笑顔を向けてくれるあなたが、愛おしくて仕方がなかったの。
離れなきゃって、思ったのはね。
あなたへの想いが、愛情じゃなくて、依存だったから。
私を無条件に慕う優吾くんを、意のままにできてしまう瞬間は何度もあった。
表情一つで言うことを聞いてしまう優吾くん。
愛玩動物のように可愛がられたがる優吾くん。
……私がやっていることは、うちの庭を覗き込む男たちとなんら変わりないのではと……怖くなった。
決定打は母だ。
『あなたのことを、いちばんに思えなくて、ごめんね』
クリスマスプレゼントを貰ったあの日。
母の贖罪は、私への戒めになる。
ーーやっぱり、私、あなたのいちばんには、なれなかったんだね。
飲み込んだ言葉の成れの果ては、ずっとずっと、私の中で澱となり、蝕んで、……誰かと親密になる度に、私をいちばんにしてくれる男の子と比較した。
優吾くん。
私は、もう二度と、あなたに会いたくなかった。
だって、私
会えない時間も、あなたの未来が美しいものであるよう祈ってた。
私のような女になど捕まらず、どうか、身も心も健やかな女性と……私の知らないところで、幸せになってほしいと。
それくらい、あなたの存在は、ずっとずっと大きいものだったの。
もう一度、会ってしまったら、その時は、もう他の誰にもあなたを譲れない。そんな気さえしていた。
……曲がりなりにも、慕っていた年上の幼馴染が、こんなことを考えていたら……怖いでしょう?
でも、結局は……
「……思った通りだったね」
私は、もう、他の誰にもあなたを譲れない。
他の誰かに、あなたが触られるのを許せない。
ふと、見上げた空は快晴だった。
優吾くん。
ずっと私を好きでいてね。
私はあなたを、両親のように閉じ込めたりしたくないの。
だって、優吾くんには、向日葵を連想させる夏の青空がよく似合うから。
さて、せっかくの休日だ。
この愛おしい恋人を起こすべきか。
それとも……もう一度、この逞しい腕に、強く抱きしめられるのも良いかもしれない。
「ねぇ、起きているでしょう?」
「……ちゅーしてくれたら起きるかも」
「あは! 仕方がないなぁ」
……愛してるよ。
年下で純情で、ちょっとえっちなあなたのことを。
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