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義姉の思い
しおりを挟む義姉視点
「フィオナ、貴女今幸せ?」
「はい!とっても!」
そう朗らかに笑う義妹のフィオナの顔を見てほっとする反面、冷や汗をかいてしまう私がいる
フィオナ・テンパートン
彼女は結婚する約1年前までは私の義妹として多く交流していた
子爵家から嫁いできた私を実の姉のように慕う彼女に心を奪われたのは懐かしい思い出だ
それだけ彼女は人の心を掴んで離さない真面目でそして、心優しい性格の持ち主だ
(「ごめんなさい。本当にごめんねフィオナ…」)
幸せそうに我が息子とレベッカを見つめるフィオナを見て心の中で謝罪を繰り返す
私がフィオナへの負い目を感じた出来事はフィオナが15歳の時まで遡る
フィオナは我が子爵家が順風満帆な貴族家だと思っている
確かに周りから見れば我が家は時代の波に乗れた貴族だと認識されているだろう
だが実際は投資に失敗し、負債を多く抱えていたのが実情だ
もちろんフィオナの兄で、そして私の夫でもある彼はそのことを知っている
伯爵家の家族に心配させまいと黙っていてくれたのだ
フィオナのデビュタントを手助けしたのも、美しく聡明な彼女なら玉の輿を狙えるんじゃないかと、打算的な部分もあった
その思惑通り彼女は無意識のうちに私たちの願いを叶えてくれた
フィオナに心を堕とされたのはテンパートン商会の会長アレックス・テンパートンだった
最初そのことを知った時は心臓が口から飛び出るぐらいに驚いたのを覚えている
正統な貴族ではないが、テンパートン家といえば今や、その名前を知らぬものはいないほどの富豪だ
そして私たちはテンパートン卿に接触することになった
「私が望むのはただ一つ。フィオナと添い遂げることです」
誰もが見惚れる美貌を持つその男の瞳は獣を狩る狩人のように鋭く、そして恐ろしいものだった
資金援助と経営援助
その二つを行う代わりに私たち夫婦は義妹の、フィオナの情報とそして彼女が就活、婚活がうまく行かないように裏から手を回すことになった
自分達の利益のためにフィオナを売る形になってしまったことを私は深く後悔している
まさかあの男が執念深くて、こんなに粘着質な男だとわかっていたら絶対に手を出していなかったからだ
……そんなことを今言っても遅い事は、重々承知している
結果的に見ればフィオナもあの男のことを好いていて良好な夫婦関係を築いている
それに彼女は今が幸せだという。
(「知らぬが仏。嘘も方便。…我ながらなんて浅ましい」)
彼女の良心に漬け込んだこんな薄汚い私たちのことを彼女は知らなくてもいい
そして、彼女に恋焦がれ手を出そうとした他の男たちの末路だって知らなくても良いことだ
私は、アレックス・テンパートンが怖い
だが彼の力がなければ子爵家も、伯爵家も今頃潰れていただろう
フィオナの犠牲のもとに成り立っているこの脆弱な足元がいつ壊れるか不安でたまらない
少なくともあの男が大事なのはフィオナだけだ
私たちがフィオナを裏切ればその刃は私たちに向く
「お義姉様。このお菓子とっても美味しいですね」
「フィオナが好きだと思って買ってきたのよ」
「嬉しい!ありがとうございます」
ニコリと笑う彼女は何も知らない
いや、何も知られてはいけない
心優しい彼女はきっと私たちを咎めたりはしないだろう
1年前に初めてこの邸宅に呼ばれたあの日
帰り際にあの男から言われた言葉
「余計なことは口走るな」
その言葉を胸に刻んで、私はフィオナへと笑いかけた
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