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「アマリリス様。どこか具合でも悪いんですか?」


「え、いえ。決してそう言うわけでは…」


あの騒動から1週間後


私の心は晴れないまま、エクルストン大公家のアイリス妃殿下とのお茶会がやってきてしまった


この日を楽しみにしていたと言うのにぼんやりとあの日エルムに言われた言葉が私の頭の中でずっと鳴り響いていた


目の前でブロンズピンクをハーフアップにし、1年前よりもふっくらとした頬と血色の良い肌は彼女をより魅力的に魅せていた


すらりとした長い指でカップとソーサーを持つ仕草はさながら女神のように美しかった


「心ここに在らず、といった感じですわね」


「申し訳ございません!妃殿下の前で…!」


「気にしないでください。何かお悩みでも?」

3つ年下の彼女との出会いは1年前の婚約者内定の夜会だった


今でこそ光り輝くほどの容姿と、地位、才能を持っている彼女であったが、実は実の姉に呪われていたという経歴がある


彼女の姉が問題を起こすであろうと捉えた王族が先手必勝で場を収めることができたのがつい最近のように思い出せるほど私の中でも強烈な思い出となっている


そんな彼女をあの場で横で支えていたことは私の中で誇れる記憶だった


そんな経緯から妃殿下とはこの1年間定期的にお茶会をして仲を深めてきた


ゆくゆくは同じ王族として公務などを行なっていく立場なので仲良くしておくことは大事なことであった



にこり、と笑いながら私に悩みを話すように促す彼女の視線から目を逸らせずに私はぽつりぽつりと1週間前に起きた出来事を話していた







「たしかに、以前よりは男女の垣根が低くなったと、ポット伯爵夫人が仰っていました」

「ポット伯爵夫人が…」


私の話を一通り聞いた妃殿下は顎に手を置き、考える仕草を見せた後そう言葉を紡いだ


ポット伯爵夫人は礼儀作法のマナー講師として有名な人だ

彼女の手にかかればどんな暴れ馬な令嬢でも淑女になれると評判高い夫人だった


そんな彼女が「男女の垣根が低くなった」と言うことはエルムの言うことは間違いではなかったのだと理解した


「はぁ…」

「……アマリリス様は何にお怒りなのですか?」

「え?」


エルムが一枚上手だったと言う事実に悔しさを覚え、ため息をつく

そんな私に対して妃殿下がぽつりと疑問を口にした


「お話を聞く限り、ロータス小侯爵と義妹のロベリア様の間に問題はないようですし、ロベリア様も改心なされたのですよね?アマリリス様が懸念することはないのでは?」

「そう、でございますね…」


妃殿下の正論を聞き言葉に詰まる
私自身も頭ではそれが分かっていた
だが、なぜか心がついてこないのだ


「あぁ!そう言うことですね!」

ポンと手を叩き、蔓延の笑を浮かべて妃殿下がずいっと顔を寄せる


「アマリリス様は仲間外れにされて寂しく感じたのでは??」

「仲間外れ…?!」

「自分だけが取り残されて、周りが変化していくのは寂しいことですわ。今まで王妃教育でお忙しくしていましたから、ひと段落した今、気になって仕方がないのですね!」


アマリリス様ったら可愛らしいですわ!とニコニコ笑う妃殿下を見て
私の思考は停止した




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