三十路の私に年下夫が出来ました

Ruhuna

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「さっさと金を払ってここから出すんだ」

「あなた…」

今年45歳になる夫のマシューは結婚当初の偉丈夫さはなくなり中年男性特有の体型になっていた
久方ぶりにみたマシューは昨日あったジョアンナと同様にみすぼらしい麻の服を着ていた

犯罪を犯したとはいえ曲がりなりにも貴族であるマシューもそれなりの待遇はされているのか普段とは変わらない横暴さで椅子にふんぞり返って座っていた


そして先ほどの言葉を投げかけられた

「平民の娘に少しちょっかいをだしただけなのに何故逮捕されなければならないんだ!」

「あなた、話を聞いたでしょ?今は法が改正されたのよ…それに法以前の問題よ。しっかりと罪は償うべきよ」

「舐めた口をききやがって!黙れ!誰のおかげで今まで生活できたと思ってんだ?!」

私が諭すような言葉を投げかけると図星だったのかマシューは逆ギレしてきた
正直この流れはもう何年も経験している為特別驚くことでもない
それよりもこうやって妻とはいえ女性に暴言を吐くところをしっかりと立ち会い人の騎士が記録しているのが気になる

「落ち着いてあなた。ちゃんと反省すれば5年でここを出られると聞いてるから」

「5年?!嘘だろ?!……金だ、金を持ってこい!釈放金を払えば出られるだろ?!」

頭に血が上っているマシューに私の声は届かない
幾度となく釈放金で解決できないこと、しっかり罪を償う必要があると言い聞かせるも、壊れた人形のように「ここから出せ、金を持ってこい」と言い続けた


「……お金を、取ってくるけど男爵領からまたここに来るには2週間かかるわ。それでも良いの?」

「当たり前だ!5年が2週間になるなら我慢してやるよ!」

私の言葉にやっと落ち着いたのか声を荒げなくなったマシューを見て心の中でため息を吐く
そして、私は後ろを見向きもせずそそくさと面会室を後にした



「男爵殿は如何でしたか?」

「…人間というものはそう簡単には変わらないものですね」


昨日とは違い、今日は門のところに侯爵家の馬車が私の帰りを待っていた
馬車に乗りこみ侯爵家へと帰路についた


そしてディナーの時間になり、昨日の様に準備をして食堂で待っていると彼がやってきた

食前酒で乾杯をして一口それを口に含む
「変わらない」と答えた私は、マシューと入籍した16年前を思い出す
あの頃はまだ裕福だったシェロン男爵家に資金援助の担保として私は嫁ぐことが決まった
15歳も年上だったが偉丈夫溢れるマシューに心惹かれなかったといえば嘘になる
結婚した当初は幸せな時間だった
いつも気遣ってくれる優しい夫に十分な使用人の数
実家では身の回りのことを自分でしていたこともあり、こんな生活を送れることに幸せを感じていた


それが崩れてしまったのはジョアンナが生まれてからだ
男児を渇望していたマシューは生まれたのが女児だと知ると私への態度が一変した
その頃からマシューは家に帰ってくることが少なくなった
たまに帰ってきても酒臭く、そして漂う他の女の臭い
全てを悟った私は全てを諦めてジョアンナの子育てに専念しようと心に決めた
その頃には男爵家の資産はマシューの散財によってそこをつきはじめていた



マシューにとって望まれなかったジョアンナだったが、大きくなるに連れ、その容姿は目を見張るほど可愛らしいものになった
髪と瞳の色こそ私に似れど、ここまで愛らしい遺伝子は一体どこからきたのかと疑問になる程の容姿を持っていた
そんな彼女をみてマシューも少しずつジョアンナを可愛がり出した
また昔のように仲睦まじい家族が作れるのではないか、そんな一抹の望みがあったが、マシューはジョアンナを甘やかすだけで相変わらず家に帰ってくることはなかった




そして起きてしまった今回の事件


マシューはともかく、ジョアンナが人が変わったように恐ろしい性格になっていたのが私の中で一番驚いたことだった


「はぁ…」

考え事をしているといつのまにかディナーは終わっており、アルフレッド様にエスコートされながら私はあてがわれている部屋へと戻ってきた
そして月が空高く登った深夜
中々寝付けなかった私は静かにバルコニーにでて空を眺めながた
無意識に出たため息が思いの外大きかった

(「2人には嘘をついてしまったわ。釈放なんて出来ないのに…」)

星空が煌めく空を眺めながらも考えることは今後どうするか、ということ
マシューとは離婚するとして、問題はジョアンナだった


コンコン


うーん、と頭を悩ませていると部屋の扉がノックされる
こんな時間に誰かしら?と思いながらドア越しにどなた?と声をかける

「私です。明かりが見えたもので…一杯、如何ですか?」


ドア越しに聞こえた声にホッとして扉を開くとそこにはワインとワイングラス2つを持ったアルフレッド様が立っていた
彼が持っているワインのラベルを見ると50年以上熟成されたオールドヴィンテージワインだ

「では、一杯だけ」

そう言いながら私は彼を部屋に招き入れた
バルコニーに備え付けられている椅子とテーブルの上にワインを置いた私たちは向かい合わせるように座った
乾杯、と小さな声でワイングラスを掲げてその香りを楽しむ
滅多にお目にかかれないワインを目の前に私はぐいぐいと手が進んだ







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