異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

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127「アギー達の目的」

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「あ! ロップスさんが一人やっつけたっす!」

 さすがはロップス殿、安心して任せておけますね。

「あれ俺が名前つけた技っすよ!」

 アギーさんの後方十歩のところにイギーさん、さらにその向こうに見えるファネル様の屋敷までもう三十歩。
 二人の隙を突いてタロウを先に向かわせるべきでしょうか。

「速いと強いを兼ね備えたものと言えば雷! いやホント我ながら良い名前つけたもんすよ~」

 しかしそう簡単には通らせてくれないでしょうね。

「ねぇ、ちょっとヴァンさん、聞いてるんす――ぐはぁ」

 振り向いて問答無用で手刀です。

「その話は後で聞きます。今は集中して下さい」
「……分かったっす。すんまへん」


「……喋っても良いか?」
「どうぞ」

「ウギーから聞いているんだろう? ボクらの目的を」
「大筋では」

 どうぞ、と返事をしたものの、アギーさんとお話している場合ではありません。
 お話しされているところ申し訳ありませんが――

「土の要塞!」

 アギーさんの周囲の土を隆起させ、そのまま頭上まで覆います。
 今はとにかく、イギーさんの魔術の完成を阻止するのが優先です。
 アギーさんを土で封じ込め、全力でイギーさん目掛けて駆け大剣を振るいます。


「まだボクが話してるだろう。最後まで聞け」


 確かに不意をついた筈です。
 間違いなく土の要塞が閉じる寸前までは先程のところに居たはずですが、僕の大剣を受け止めたのは、あろうことかアギーさんでした。

 これはちょっと想定外です。

 目で追うことすら出来ない速さ、さらに魔力を纏わせてもいない掌で僕の大剣を難なく受け止めた事、ちょっとどころの想定外ではありませんね。


「アギーに敵うわけないんだぞ。大人しく待ってろ」

 イギーさんの仰る通り、アギーさんを抜いてイギーさんに剣を届かせるのは難しいです。出来る気がしません。

「喰らうっすよ!」

 タロウの指先から放たれた光の矢、アギーさん達が使う魔術の矢に良く似ていますね、イギーさんの頭を目掛けて直進しますが――

「ぐぁぁ!」

 アギーさんが大剣を掴んだまま手首を返すと、それに併せて僕の体も半転、タロウの矢は僕の左肩に命中しました。

「やぁっちまったっす! 平気すか!?」

 痛いです。


「……面倒だな」

 僕を大剣ごとタロウの方へと放り投げ、イギーさんへと掌を向け、あっという間に魔術陣を構成し結界を張ってしまいました。

「もう少しかかるんだろう?」
「ああ、助かるんだぞ」



 左肩から回復の煙を立ち上らせながら、僕を受け止めてくれたタロウへ耳打ちします。

「速さも力強さも、魔術陣の構成速度も僕とは桁違いです。はっきり言って勝てる気がしません」
『だから僕が言ったじゃん』

「どうするんすか?」
「大丈夫、僕がアギーさんに勝つ必要はありません」
「ないんすか?」
「タロウをファネル様の下へ届ければ僕の勝ちですから」

『だから、それをどうやってやるんだ、って話だろ?』
「…………これから考えます」
「これからっすか~」

 実際問題、どうしましょう?
 隙を突くのも、実力で押し通るのも難しそうです。それ程の力量差を感じてしまいました。

 何か、そうですね、裏をかく、とか盲点を突く、そう言った何かがないとおそらく難しいです。

「さて、続きを話しても良いか?」

 ちょっと時間が欲しい所ですからね、ここは頷いておきましょう。

「どうぞ。伺います」

「ありがとう。ボクらの目的の大筋は聞いてるって事だったが、なら何故ボクらに協力しない?」

「この世界を復元するというお話ですね」
「そうだ。お前たちにも悪い話ではないだろう?」

 そう、確かに悪い話では無いように聞こえるんです。
 そこだけを聞いたなら、ね。

「しかし僕らの様な、この世界に住む生き物は死ぬと伺いました。それでは協力のしようがないでしょう」
「確かに死ぬ。しかしそれはこの世界が元の丸い形に戻るころだ」
「……元の、丸い形に……」

 本当にそんな事が可能なんでしょうか。

「早くて数百年後、恐らくは千年ほどは先だろう。その頃にはどうせ今この世界に生きる者共のほとんどは既に死んでいると思うぞ」

「その後はどうなるんですか?」

「この世界は太古の姿に戻る。大地は赤熱し、大気にはお前達にとって有害なガスが充満する。しかしまた小さな生命が生まれ、進化し、いつかは新たな世界として生まれ変わるだろう」

 ……なんだか凄い事を言っている気がします。
 はっきり言ってイメージが湧きませんがどうなんでしょう。

「世界を一から作り直すんすね」
「そうだ」

 赤熱する大地や進化する生命、僕には何のことかイマイチよく分かりませんが、タロウにはイメージが湧いているんですね。

「そんなトコでアギー達は生きられるんすか?」
「ふ、ボクらの心配はいらない。壊れかけとは言え、ボクらは元々が星の一部だからな」

 タロウが腕を組んで顎に手をやり何かを考えているようですが、ここはタロウに任せるしかありませんね。
 ロボやプックルに目をやっても、僕と同じでちっともピンと来ていない様ですから。


「…………何となく分かってきたっす。アギー達の目的は、『この世界を手に入れる』じゃなくて、『この世界になる』だったんすね?」


 この世界になる? それこそそんな事が可能なんでしょうか?
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