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52「楽しそうな二人」
しおりを挟むはらはらと泣き続けるリザと、ぐすぐすと泣き止む様子のないアレク。
レミちゃんとカコナがリザの傍に陣取って背を摩り、ニコラはただオロオロと、そしてロンは顎に手をやり何事か思案中。
ここにニコラが居るので憚られましたが、このままではどうにもなりませんから、思い切って私、姿を現しました。
女は度胸!
『ごめんなさいねアレク。私が全て悪いのです』
「ひっ、ふぐっ――、お婆さん、誰? ぐすっ」
『リザの祖母にございます』
なぬっ!? とニコラが小さく呻きますが、キッと睨んでとりあえず黙らせました。これでも元アイトーロルの王女ですからね。威厳一発ですよ。
「リザのおばあちゃん――透けてるね」
『ええ、お化けですから』
とりあえずアレクが泣き止みましたので、もう一度最初から始めてみます。
『ごめんなさい。私が全て悪いのです』
私がリザに、古のトロルの術『変身』を教えた事を発端に、レミちゃんとカコナに協力して貰って森へ入った事、そして変身の最中に魔族フル・コルトの襲撃を受けて撃退し、そして今に至る事。
微に入り細に入り、特に隠すべきところもありませんから、どうせなら信用を勝ち取るためにも事細かく説明しました。
「そっか……本当に色々あったんだね」
「なぁアレク。一つ提案なんだが……」
おや? 何事か考え込んでいたロンですね、なにか良い案でも思い浮かんだんでしょうか?
「もし良ければ、俺がエリザベータ姫とも男女の仲に――」
「――ロン様、空気読む。黙れ」
何番さんでも良いとまで言ったレミちゃんでしたが、余りにもタイミングの悪いデリカシーの無い発言をしたロンをキツめに嗜めました。
頼もしいお嬢さんですねぇ。
対してロンは、この手の話題ではポンコツ過ぎて泣けてきますよ。
『私が事の発端であり、魔族の襲撃を考えもしなかった私の責任です』
「……うん、『変身』についてはお婆さんのせいでリザは悪くないって言いたいんだね。分かったよ」
『ですから私が責任を持って、もう一度『変身』を使える様に整えます。ですから、リザの先ほどの言葉を許してやって下さいな』
泣き止んだリザの方をチラリと見遣り、その泣き腫らした目を見たアレクはすまなそうにまた幼い泣き顔に顔を歪めます。
それを見たリザもまた、すまなそうに顔を地面へ向けて俯き、それを見たアレクもまた、地面に顔を伏せました。
アレクはリザの事を、リザはアレクの事を、この子たち、本当にそればっかり考えてるんでしょうね。
「もう怒ってないよ。けど……リザ戻らないって……」
『それは私は知りません。元に戻るのか、戻らないのか、あなた達二人で話し合って決めなさい』
ここだけは突き放します。私にはどうしようもありませんし、ここを乗り切れない二人にどうせ未来なんてありませんから。
少しの間、驚きに固まっていた二人でしたが、二人はゆっくりと顔を上げて向け合い、一歩二歩と近付いて、お互いに見つめあって歩を止めました。
「ごめん、リザの気持ち、分かってあげられなくて。今のリザももちろん可愛いよ。……でも」
「わたくしこそごめんなさい。アレクはずっと、わたくしの全てが、その、愛おしい、と仰ってくれていたのに。……けれど」
二人は相手の意見に擦り寄せる言葉を吐きつつも、それぞれが打ち消しの言葉で繋ぎます。
少しの沈黙のあと、どちらからともなく二人は両手を前に出し、円を作るようにそれぞれ手を繋ぎました。
「でも、やっぱり元のリザが一番好きだよ!」
「けれど、やっぱり元のわたくしは好きになれません!」
まぁ、そりゃそうでしょう。
誰かに言われたり、誰かを慮って翻すような事じゃありませんもの。
そんな簡単に翻せるような事ならば、お互いが泣くほど真剣に向き合う事もないでしょう?
「へへへ……」「うふふ……」
「……あははははははっ!」
「……うふふふふふふっ!」
唐突に二人は笑い出しました。
「ありがとうリザ! 自分の気持ち教えてくれて!」
「アレクこそありがとう! わたくしの全てを好きになってくれて!」
「じゃあさ! 元の姿に戻ってくれる?」
「わたくしの今の姿も好きになってくれますか?」
「前のリザの方が好き!」
「元の姿には戻りません!」
……分かっていましたけど、平行線ですね。
ま、良いんじゃないですか、それについては時間もありますし、二人が楽しそうだし。
『リザ、アレク。楽しそうで結構ですけれど、聞いてください。夜行軍になりますが、アイトーロルへ戻りましょう。魔王ジフラルトの報告をしなければならないでしょ?』
夜の方が魔物なんかは多く出ますが、勇者パーティ(ジンさん除く)にリザ、ロン、ニコラですからね。魔物なんぞ苦にもならないでしょう。
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