勇者アレクはリザ姫がお好き ~わたくし、姫は姫でもトロルの姫でございますのに~

ハマハマ

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53「勇者認定を」

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 私は姿を隠し、六人は夜通し進んでもうじきアイトーロルです。
 皆んな少しお疲れの様ですけれど、レミちゃんとカコナだけはなんだか元気モリモリですね。

「レミ嬢。やけに元気じゃありませんか」

「そう。お肌もツヤツヤぷりぷり」

「どれ」

 ロンはレミちゃんの顎に手をそっと置き、ほっぺ辺り、唇の端のところを親指の先でフニっと押さえました。

「本当だ。吸い付くように綺麗な肌だ」

「ロン……様……」

 瞳をハートにしたレミちゃんが、うっとりと目を閉じて、ロンに求めます。


「「ちっ!」」

 先頭を行くロン・レミに続く真ん中の二人、ニコラ・カコナの所から、大きな聞かせる為の舌打ちが二つ響きましたよ。

「ちょっとレミ! 見せつけてないで早く行ってよ! ワタシの隣、トロルじーさんでうんざりなんだから!」

「生意気な小娘が! 儂かてお主の様な貧弱バルク娘いらんわ!」


 ぎゃーこらぎゃーこら騒いでいますけど、あれで結構なスピードで歩いているんですよ。
 カコナとレミちゃんに、リザのバフがまだ残っていますからね。

 逆に最後尾を行くアレク・リザ、こちらがちょっと遅れがち。

「大丈夫?」

「え、ええ。アレクも手を引いてくれていますし、なんとか」

 明らかにリザの動きに精彩がありません。ですからアレクは一晩中、リザの手を引き歩いています。

「リザ、いつでもぶるからね」

「……あ、ありがとうございます」

 二人は今、『お付き合いを始めた恋人同士』という訳ではありません。

 すごく微妙なんですけれど、『お付き合いを前提としたお友達』というなんとも煮え切らない状態です。

 ――元に戻るか戻らないか、戻らないリザも愛せるかどうか、それがはっきりしないと進展のしようもない――

 というのが二人の結論ですから、それでも随分と二人の仲は進んだんじゃないでしょうか。




 そしてアイトーロルの王城、王の寝室です。

 メンバーは先ほどの六人に加え、

 リザの祖母だと名乗った私、つまりアイトーロル王の亡くなった妻をかたる不届きな小さい透け透けトロルに対し、アイトーロル王は色々と察したらしく鷹揚に頷き「久しいな」と微笑んで見せました。

 さらに、私の入れ知恵でリザが変身を行なった事を説明しても、アイトーロル王は驚きながらもリザが今の姿に満足している事を悟って「良かったな、リザ」と頭を撫でたのです。

 ニコラには無い器の大きさですよ。

 想像以上の器の大きさに、今はそんな時ではないと分かっていながら、私の老いた心が久しぶりにトキメキそうになったのはここだけの秘密ですよ。
 

「なに……、新しい魔王ジフラルトは、すでに魔王の力を蓄えただと……」

「はい、お爺様。フル・コルトと名乗る魔族は確かにそう仰いました」

 少し変な間が流れます。

「……うむ。ならばアレク殿はどうされる?」

「準備が整い次第、ロステライドへ攻め込むよ」

 アレクはキリッと引き締まった良い顔でそう言ってみせ、直後、レミちゃんはロンの胸に飛び込んで、ジッとロンの目を見つめながら「待ってて」とそう囁きました。

 結構グイグイ行きますねレミちゃん。

 ロンもジッとレミちゃんの目を見つめ返してこう返事します。

「俺も一緒に行こう」

「ダメ」

「なぜ!?」

 少し言いにくそうに黙ったレミちゃんでしたが、そこへアレクが口を挟みます。

ロンじゃ弱いからだよ」

 実際にそうなんですよね。魔王デルモベルトと比べて数十分の一ほどになったロンの力では、アレクたち勇者パーティの足を引っ張る事しか出来ないでしょうね。

 ちなみに、この間のフル・コルトとの戦いでレミちゃんが苦戦を強いられましたけど、『鼻粘膜の常時強化魔術』に意識と魔力をいていた為もあるようです。
 初めての強化しながらのバトルでしたからね。


 そしてアレクはリザへと向き直って言います。

「リザ……、僕のこと、待っててくれる?」

「…………待ちません……」



 ………………え。

「リ、リザ? え、ウソ、ま、待っててくれないの……!?」

 アレクが好きと言われた直後ですもの、さすがに動揺するアレク。そりゃそうですよ。ここにいる全ての者の時間が止まりましたもの。


「お爺さま、お婆さま」

 ベッドに横たわり半身を起こした祖父・アイトーロル王と、その枕頭に侍るその妻をかたる私に対してリザが言います。

「わたくしに下さいませ」

 ハッ、と王と私が視線を合わせて驚いた顔。

「その上でわたくしは、アレクと共にロステライドへ行って参ります」
 
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