魔法至上主義の学園、俺だけ物理で殴る

皐月

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【第三章】学院戦技祭編

第29話「決戦の刻」

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決勝戦の朝。
学院は朝靄に包まれていたが、闘技場には早くも人々の熱気が満ちていた。
王家第三王子、レオン・セレスフィアと、異端の剣士、アレン・アーゼルハイン。
学院の誇りと未来を懸けた決戦。
誰もが息を潜め、その瞬間を待っていた。

**

「……いよいよだな、アレン」
ロイドが肩をすくめ、笑みを浮かべる。
「相手が誰であれ、お前はお前だ。……俺たちはそれを信じてる」

アルフレッドが優しく頷く。
「君は、君の剣で進めばいい。……どんな魔法よりも、その剣の意志が強いことを、僕は知ってる」

シエラは赤い瞳をまっすぐに向ける。
「……君は、誰にも負けない。君の剣は、私の心を揺らした。……最後まで、見せて」

アレンは小さく頷き、剣を握る手に力を込める。
(……俺は、俺の剣を証明する)

**

試合開始を告げる鐘の音が鳴り響く。
白い石畳の闘技場に、二人の姿が並び立つ。

レオン・セレスフィア。
学院の象徴、王家の血を引く者。
白銀の髪と蒼い瞳が、朝日に照らされて美しく輝く。

「……お前がここまで勝ち上がってきたこと、嬉しく思う。アレン・アーゼルハイン」
レオンの声は優雅で、だがその奥に潜むのは鋭い意志。

アレンは剣を構え、静かに答える。
「……俺は、ただ俺の剣で進む。お前がどんな王族だろうと関係ない」

レオンは僅かに笑みを浮かべ、剣を抜く。
「その気概、嫌いじゃない。……さあ、俺の全てを受け止めろ」

**

戦いの始まりは、静かだった。
互いに一歩も譲らず、視線を交わすだけ。
だが次の瞬間、空気が震える。

「はああああっ!」

アレンの剣が一閃、空気を切り裂く。
レオンは剣を軽やかに振り、正確に受け止める。
衝撃が石畳を震わせ、周囲から歓声が上がった。

(速い……! だけど……!)

アレンはさらに踏み込む。
体内の魔力が血流に溶け込み、筋肉を限界まで引き絞る。
剣の一撃に込めるのは、これまでの全ての戦い――誰のものでもない、自分自身の証明。

**

レオンはその剣を受け止めながら、低く呟いた。
「……強いな。だが、俺もまた――学院の、王国の象徴だ」

次の瞬間、レオンの剣が淡く蒼い光を帯びる。
魔剣術――王家に伝わる剣技の極み。
空気を切り裂き、鋭い魔力がアレンの頬をかすめる。

(これが……王家の力……!)

アレンは息を呑みながらも、一歩も退かない。
「……負けるわけにはいかない。お前の剣がどんな光でも――俺は俺だ!」

剣を構え直し、再び踏み込む。
剣と剣が激突し、火花を散らす。
観客席は歓声と驚嘆で沸き立ち、誰もが目を離せない。

**

学院の理事長室。
老魔導士は窓辺に立ち、静かに呟く。
「……この戦いは、学院の未来を映す鏡だ。……どちらが勝とうと――学院は変わる」

背後でロゼ・グランフォードが冷たく笑む。
「どんな未来が訪れようと……秩序を脅かす者には、相応の結末が待っているだけです」

**

戦場に戻る。
レオンの剣が淡い光を纏い、鋭く放たれる。
だがアレンは恐れない。
灰の洞窟の暗闇を、生き延びたあの日から――もう、誰の影にも怯えない。

「おおおおおっ……!」

体内の魔力が全身を満たす。
その力は決して外に放たれないが、確かにアレンの剣に宿る。
誰の魔法にも負けない“生き様”そのものが、剣に形を与える。

**

互いに譲らぬまま、剣と剣がぶつかり合う。
視線はぶつかり、呼吸が重なる。
そこにあるのは、恐怖も迷いもない。――ただ、決して折れない意思だけ。

(……俺の剣で、切り拓く!)

アレンの瞳が強く光り、剣が蒼い光に立ち向かう。
決戦の刻。
誰のためでもない――自分自身の剣を証明する瞬間が、そこにあった。
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