魔法至上主義の学園、俺だけ物理で殴る

皐月

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【第三章】学院戦技祭編

第28話「決勝への道」

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ジーク・ファーレンハイトとの死闘が終わり、学院戦技祭は静かな興奮に包まれていた。
剣だけで学院最強を打ち破った“異端”の剣士――アレン・アーゼルハイン。
その名は、もはや誰も疑わぬ“本物の剣士”として語られ始めていた。

**

「……お前、本当にやりやがったな」
ロイドが控えの間で息を吐く。
その口調には呆れと笑み、そして心からの敬意が混じっていた。

「俺は……ただ、俺の剣を信じた。それだけだ」
アレンは短く答え、剣を膝の上に置く。
その手は震えていた。
戦いの興奮が去り、肉体は悲鳴を上げている。
それでも、剣を握る手だけは決して離さなかった。

「……お前は、剣に生きてるんだな」
アルフレッドが微笑む。
その穏やかな瞳に映るのは、どこまでもまっすぐなアレンの背中だった。

**

その夜、学院の塔の屋上。
アレンはひとり、月明かりの下で剣を構えていた。
剣を振るたび、全身に走る痛み。
それでも、身体は迷わず剣を振るう。

(ジークの剣……あれは“心”だった。……俺は、俺の心を剣に乗せるしかない)

**

足音が近づく。
振り返ると、シエラが静かに立っていた。
赤い瞳が、夜風に揺れる銀髪の間から覗く。

「君は……決勝の相手を意識しているのね」
「……ああ。決勝戦……それが、俺の剣の答えになる」

アレンは短く応じる。
決勝の相手は、学院でも特に名高い魔法剣士――王家直属の近衛を目指す少年、レオン・セレスフィア。
王家第三王子。学院の象徴とも言える存在だ。

「……君は怖くないの? レオン殿下は……学院だけじゃなく、この国の象徴そのものよ」
シエラの声にはわずかな震えがあった。
だがアレンはゆっくりと首を横に振る。

「……恐いさ。だけど……俺はもう、剣を止められない」

その言葉に、シエラは微笑む。
「君らしいわ……でも、私も負けない。君の剣を、私が信じる。最後まで」

**

翌朝。
学院の中庭には、戦技祭決勝戦の告知が掲示されていた。
アレンの名は、堂々とそこに刻まれている。

「アーゼルハインの三男……あの剣、レオン殿下に通じるか……」
「いや、殿下の剣は別格だ。……けど、アレンの剣も……」

ざわめきが広がる中、アレンはひとり剣を研ぎ澄ませていた。
視界の端に、レオンが歩いてくるのが見えた。
白銀の髪をなびかせ、整った顔立ちに微笑を浮かべている。

「……ついに決勝だな、アレン・アーゼルハイン」
その声は優雅で、だが鋭い威圧を帯びていた。

「……ああ。お前と決着をつける」

二人の視線が交わる。
灰の洞窟、戦技祭、数々の戦いを経て――今、全てが決勝戦に集約されていく。

**

学院の理事長室。
老魔導士は書簡を静かに机に置き、ロゼ・グランフォードに視線をやる。

「……決勝戦は、この学院の未来を映す鏡だ。アレン・アーゼルハイン……あの剣が何を示すか、見極めねばならない」

「……彼は、王国にとって光か、災いか。……決める時が来るのですね」
ロゼの瞳は冷たいが、その奥にわずかな興奮が宿る。

**

夜。
学院の塔の上、星空の下。
アレンは剣を握り、ひとり立つ。
足元には血のにじむ裂け目。肉体は限界を訴えている。
それでも――

(……俺は、俺の剣を信じる。誰にも、奪わせない)

月光に照らされたその横顔は、戦士の覚悟に満ちていた。
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