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ハンバーガーを食べ終わり、店を出てしばらく歩いてから足を止める。
(さて、今度はどこに行こう……)
パンフレットとにらめっこをしながら首をひねる。
(殺し屋さんはブティックは興味ないよな……。クレープ屋に行くにはまだお腹がすいてないし……)
そう考えてマップに目を走らせると、今いるところの近くにゲームセンターがあるのに気づいた。
(殺し屋さんだとあまりゲームセンターで遊んだこともないよね……?)
「良かったら、ゲームセンターに寄っていきませんか?」
そう言うとお店を眺めていた殺し屋さんがこちらを見て、「いいよ」と頷いた。
「あ、あれ……」
ゲームセンター内に入ってさっそく目についたのはFPS視点のシューティングゲーム。ゲーム用の銃が機械に取り付けられているのが見える。
「あれ、やってみてくれませんか?」
そう言うと殺し屋さんがちらりとゲーム機の方を見た。
「……あれを?」
少しだけ彼の声が低くなった気がして、私は冷や汗をかく。
(……やっぱりまずいかな?仕事に直結する内容のゲームだもんなあ)
殺し屋さんはしばらく何かを考えるように見つめていたが
「分かった。やってみるよ」と頷いた。
ゲーム機に近づくと銃を手に取る。そして、モニターの方に向かって構えた。
(さっきまでと目つきが違う!)
今の彼は早朝に私を殺しに来たときと同じ顔つきをしていた。
ゲームが始まると素早い動きでどんどん敵を一掃していく殺し屋さんに、私は怯えを通り越して爽快感をもち始めていた。
(私もあんな動きが出来たらいいなあ)
そう思いながら次々と倒されていく敵を見て、自分が殺し屋さんになったような気分を味わっていた。
殺し屋さんのスコアは今日ゲームをやった人全員を差し置いて堂々の一位にランクインしていた。
(さすが殺し屋さん……)
「すごいです!」と拍手を送ると彼が恥ずかしそうな顔をした。今の殺し屋さんは素のモードに戻っていた。
「君もやってみたら?」
そう言って銃を手渡される。
「で、できますかね?」
そうドキドキしながら言うと、「教えてあげるよ」と殺し屋さんが微笑んだ。そして私の後ろに立つ。
「銃は両手で持つんだ。そして両足を肩幅程度に開いて、照準を合わせる」
そう言いながら彼の手が私の手の上をすべる。私と違ってゴツゴツとした指に思わずどきどきする。
(み、耳元で声が……)
顔が真っ赤になるのを感じつつ、私は彼のレクチャーを取りこぼさないよう必死で聞いていた。
殺し屋さんほどではないが、そこそこのスコアを出した私に殺し屋さんが拍手を送る。
「ふうん。なかなかうまいね」
その目は何かを品定めする目だ。
(まずい、仕事モードに入っちゃってるよ……)
お礼を言いつつ冷や汗をかく。しかし、私がシューティングゲームが得意だとは思わなかった。意外な特技が死ぬ日に見つかったものだ。
それからもシューティングゲーム以外の色々なゲームをし、少し小腹がすいてから同じ階にあるクレープ屋に向かった。店に近づくだけで甘い匂いが漂ってきた。
「ここのクレープ、美味しいって評判なんですよ!」
少し前に見たテレビ番組を思い出してそう言うと「へえ」と殺し屋さんが相槌をうった。
いちごがたっぷりのったクレープを注文する。殺し屋さんはチョコバナナを頼んでいた。
「チョコレートが好きなんですか?」
そう尋ねると「別にそういう訳でもないんだけど」と彼が困ったように笑った。
「クレープを食べるのは初めてでね。無難にチョコレートにしておこうと思って」
それを聞いて思わず驚く。
「クレープを初めて食べるんですか?」
「うん。そんなもの食べさせてもらえなかったし……」
そう言って気まずそうに彼が頬をかいた。太るから駄目だと殺し屋社会の上の人に言われていたのだろうか。
「じゃあ、今は初めてのクレープにワクワクしてるって感じなんですね!ここのは本当に美味しいみたいですから、楽しみにしていてくださいね!」
そう言って笑うと「わかった」と彼が微笑んだ。
お店の人から受け取ったクレープを殺し屋さんとベンチに並んで座って食べる。
初めて食べる割には殺し屋さんは上手にクレープを食べていた。よっぽど私のほうが下手なくらいだ。
「クレープ食べるの上手ですね……」
「そうかな?別に普通だと思うけど……」 そう言ってから何かに気づいたように、彼が私の頬に手を伸ばした。何をされるかと体をこわばらせると、頬についていたクリームをすくい上げられた。
そして、それをぺろりと舐め取られる。
「ふふ、顔についてたよ」
そう言って笑う殺し屋さんを見て、顔が真っ赤になった。
(こんなことをさらっと出来るなんて……)
色男とは恐ろしいものだ。
気をそらすようにもくもくとクレープを食べる私を楽しそうに見ながら彼が再び口を開く。
「……そうだ。一口僕のをあげようか?」
「え!?」
思わず素っ頓狂な声を出す。殺し屋さんが手に持っていたクレープを私の方に差し出す。
(え?あげるって?そ、それって、いわゆる間接キスというものになるんじゃ……)
いろいろな考えが次々と頭に浮かんでパニックになる。殺し屋さんはそんな私の様子を口元を手で隠しながら見ていた。彼がこっそり笑みを浮かべているのに気づいて顔がかっと熱くなる。
(絶対からかわれてる!)
そう思うとさらに顔が赤くなってしまい、それを隠すために私はそっぽをむいた。
それからクレープをなんとか完食したが、殺し屋さんの行動にすっかりどきどきしてしまって味を感じる余裕など全くなかった。
(さて、今度はどこに行こう……)
パンフレットとにらめっこをしながら首をひねる。
(殺し屋さんはブティックは興味ないよな……。クレープ屋に行くにはまだお腹がすいてないし……)
そう考えてマップに目を走らせると、今いるところの近くにゲームセンターがあるのに気づいた。
(殺し屋さんだとあまりゲームセンターで遊んだこともないよね……?)
「良かったら、ゲームセンターに寄っていきませんか?」
そう言うとお店を眺めていた殺し屋さんがこちらを見て、「いいよ」と頷いた。
「あ、あれ……」
ゲームセンター内に入ってさっそく目についたのはFPS視点のシューティングゲーム。ゲーム用の銃が機械に取り付けられているのが見える。
「あれ、やってみてくれませんか?」
そう言うと殺し屋さんがちらりとゲーム機の方を見た。
「……あれを?」
少しだけ彼の声が低くなった気がして、私は冷や汗をかく。
(……やっぱりまずいかな?仕事に直結する内容のゲームだもんなあ)
殺し屋さんはしばらく何かを考えるように見つめていたが
「分かった。やってみるよ」と頷いた。
ゲーム機に近づくと銃を手に取る。そして、モニターの方に向かって構えた。
(さっきまでと目つきが違う!)
今の彼は早朝に私を殺しに来たときと同じ顔つきをしていた。
ゲームが始まると素早い動きでどんどん敵を一掃していく殺し屋さんに、私は怯えを通り越して爽快感をもち始めていた。
(私もあんな動きが出来たらいいなあ)
そう思いながら次々と倒されていく敵を見て、自分が殺し屋さんになったような気分を味わっていた。
殺し屋さんのスコアは今日ゲームをやった人全員を差し置いて堂々の一位にランクインしていた。
(さすが殺し屋さん……)
「すごいです!」と拍手を送ると彼が恥ずかしそうな顔をした。今の殺し屋さんは素のモードに戻っていた。
「君もやってみたら?」
そう言って銃を手渡される。
「で、できますかね?」
そうドキドキしながら言うと、「教えてあげるよ」と殺し屋さんが微笑んだ。そして私の後ろに立つ。
「銃は両手で持つんだ。そして両足を肩幅程度に開いて、照準を合わせる」
そう言いながら彼の手が私の手の上をすべる。私と違ってゴツゴツとした指に思わずどきどきする。
(み、耳元で声が……)
顔が真っ赤になるのを感じつつ、私は彼のレクチャーを取りこぼさないよう必死で聞いていた。
殺し屋さんほどではないが、そこそこのスコアを出した私に殺し屋さんが拍手を送る。
「ふうん。なかなかうまいね」
その目は何かを品定めする目だ。
(まずい、仕事モードに入っちゃってるよ……)
お礼を言いつつ冷や汗をかく。しかし、私がシューティングゲームが得意だとは思わなかった。意外な特技が死ぬ日に見つかったものだ。
それからもシューティングゲーム以外の色々なゲームをし、少し小腹がすいてから同じ階にあるクレープ屋に向かった。店に近づくだけで甘い匂いが漂ってきた。
「ここのクレープ、美味しいって評判なんですよ!」
少し前に見たテレビ番組を思い出してそう言うと「へえ」と殺し屋さんが相槌をうった。
いちごがたっぷりのったクレープを注文する。殺し屋さんはチョコバナナを頼んでいた。
「チョコレートが好きなんですか?」
そう尋ねると「別にそういう訳でもないんだけど」と彼が困ったように笑った。
「クレープを食べるのは初めてでね。無難にチョコレートにしておこうと思って」
それを聞いて思わず驚く。
「クレープを初めて食べるんですか?」
「うん。そんなもの食べさせてもらえなかったし……」
そう言って気まずそうに彼が頬をかいた。太るから駄目だと殺し屋社会の上の人に言われていたのだろうか。
「じゃあ、今は初めてのクレープにワクワクしてるって感じなんですね!ここのは本当に美味しいみたいですから、楽しみにしていてくださいね!」
そう言って笑うと「わかった」と彼が微笑んだ。
お店の人から受け取ったクレープを殺し屋さんとベンチに並んで座って食べる。
初めて食べる割には殺し屋さんは上手にクレープを食べていた。よっぽど私のほうが下手なくらいだ。
「クレープ食べるの上手ですね……」
「そうかな?別に普通だと思うけど……」 そう言ってから何かに気づいたように、彼が私の頬に手を伸ばした。何をされるかと体をこわばらせると、頬についていたクリームをすくい上げられた。
そして、それをぺろりと舐め取られる。
「ふふ、顔についてたよ」
そう言って笑う殺し屋さんを見て、顔が真っ赤になった。
(こんなことをさらっと出来るなんて……)
色男とは恐ろしいものだ。
気をそらすようにもくもくとクレープを食べる私を楽しそうに見ながら彼が再び口を開く。
「……そうだ。一口僕のをあげようか?」
「え!?」
思わず素っ頓狂な声を出す。殺し屋さんが手に持っていたクレープを私の方に差し出す。
(え?あげるって?そ、それって、いわゆる間接キスというものになるんじゃ……)
いろいろな考えが次々と頭に浮かんでパニックになる。殺し屋さんはそんな私の様子を口元を手で隠しながら見ていた。彼がこっそり笑みを浮かべているのに気づいて顔がかっと熱くなる。
(絶対からかわれてる!)
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