魔伝士ネイラーラ・ゾフィープ

随想アルファ

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亜空間「箱庭」異譚

転移直前

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夢を見た。

生々しい嫌な夢。臭いまで漂っていて、しかも鮮明に記憶している。

「サバイバルスクールの当日に見る夢かよ・・・いや、らしいちゃっぁ・・・らしいのか?」
大きくため息をして、雑念だと振り切る。

身支度を整えて、軽く食事をとって、持参する荷物の確認。
「なぜ。こんなもの持ち込んだんだろう」
多分無意識に突っ込んだであろうおかしな物体が。

カルテットが意味なく悪戯をすることは無いからな・・・。
「呼んだか?」
「うあお!・・・いきなり耳元で囁くな!、あと急に実体化すんなっ寿命が縮むわ」
「心配するな。もしそれで死んだら、儂が責任を持ってもう一度お主を産もう」
「・・・?え・・・いま、なんつった」
「責任を持って儂がもう一度お主を産むと言ったが」
「うん、わかった。心配?させて悪かった。・・・驚いた俺が気合が足りなかったんだな」

「会話を途切れさせたいのか?・・・じゃ、そうしておこう」

「ああ、ありがとう」
「棒読みじゃな」
とケラケラと笑う。
もともと美少女、もとい美幼女だから結構ドキリとする。
取り合えず、リュックを背負う。

「さて、今日は重々気をつけよ。良いな?」
「何改まって」
「今日は星辰が揃っておる」
「・・・星辰って占いなんかでよく言うやつだっけ」
「今少し興味を持て。自覚は無かろうが、それなりの能力をすでに持っておるのだぞ」
「そういわれても・・・」
「ま。少し離れたいという希望を取り入れての今世じゃからの、暫くは見守るだけよのぅ」
「・・・ああ、れいをいうよ」
「棒読みはせんでいい」

「今世か」色々在るって事だよな・・・。

「そろそろ時間じゃ」
「ああ、行ってくる」
「行ってらっしゃい。繰り返すが気をつけよ」
「ああ、解った、でもこんなふうに出かける時の返事が来るっていいよな」
「そうじゃな」
「今度こそ行ってくる」
そう言って玄関に向かい、良く知った気配が近づいて来るのを感じた。

扉を開けると丁度通りかかったのを装ったの隣の美少女を視界に入れた。
「おはよう、エイリちゃん」
「おはようございます、マーにいちゃん」
ボヒュッと抱き着く。
何というか身長差が有るので臍の辺りに顔が来るのだが、いつもの通り深呼吸を始める。本人曰く香りを満喫しているそうな。
「エイリ、それさ、くすぐったいから」
「んん~~ぐりぐりぐり」
だから、くすぐったいんだってば・・・。
アタマに手を置きなで回す。相変わらずサラサラとしていてクセになる手触りだ。
エイリはお隣に住む、金髪碧眼の見事な帰国子女で大変可愛らしい。
両親が日本人とのハーフ同士で、余計にコーカソイドの外見が出たようだ、その割に身長や体格が日本人に寄っている。
背中から腰に届く長い金髪は手入れが大変だろうな。
親の愛を一身に受けているのだろう。
その割にたまにしか会えないが。

俺の事はマー兄ちゃんかマー兄と呼んで慕ってくる。
イメージとしては猫かな。一度言ったら猫の真似されてかなり絡んできたっけ。
子供の頃飼っていた雌猫と被る。シャムネコにトラネコのミックス?
・・・懐く相手を選んでとことん猫を主張する。
甘えるのがうまいというか。
構ってくれないと寂しい。けど、しつこく弄られるのは嫌。


暫くして満足したらしく離れてくれた。

「マー兄ちゃん、今日は気を付けてね。星が揃うから」
カルテットも言ってたから気になってくるな。流されやすいかな俺?

「女の子らしいな~エイリも占いが好きか」
「好きっていうか、前はマー兄の方が良く当たったよ?」
「そうか」
そうだっけ?まあいいか。
「うん、分かった。気を付けるよ。これから校外学習なんで特に注意するから」
「うん!気を付けていってらっしゃい」
「おう。行って来ます」

俺が通っているのは市立の農業高校。
動物が好きなので飼育の世界に進みたい。友人も数人目指しているので、良い仲間だ。
「マー君、おっはー!」
ドンっと背中に背中衝撃を受ける。
やめい・・・リュックが痛むし。

リッ  ィイッ イッ ---ィィィ―ンンンーーー

耳では聞こえない鈴の音色が響く。
カルテットが持たせたのだろう、ティアドロップ・クリスタル・・・いや、半分陶器の様な粘土の様な、不思議な質感の水滴の形の物体からだろう。
また、ピンポイントに手が当たったもんだ。いや、狙ってか?・・・まさかね・・・。
聞こえたと思われる人間はわずかだ、しかも、距離に関係が無いと見える。
鳴らした当人は涼しい顔だ。聞こえているのか判断がしにくいぞ。

それはそうと俺の身の回りの子女は、なぜ、問答無用でタックルをしてくるんだ。
「おはよう、あと、マー君止めてって言ったろ。彌栄」
「いいじゃ~ん」
聞く気、全く無しですか無し・・・そうですか。まったく。

幼馴染の央輪多彌栄、褐色の肌にすらっとした肢体が眩しい。サイズ的には普通だそうだが細身のお陰でか胸部装甲が厚い。明るい性格で皆から好かれている。

けど・・・。

この娘は、幼い頃から苦労をしてきた。
両親は離婚し、叔母に預けられたが、生まれた頃から心臓に障害を持ち、手術こそしなくて居たが決して自由な幼年期を過ごして来た訳では無い。
時間を問わずいきなりの発作で、病院に叔母が担ぎ込んだのも少なくは無かった。その為、叔母は病院の傍に引っ越しをしたほどだ。

彼女の褐色も、もしかしたら自身の防衛本能なのかもしれない。
見た目はスポーツ少女だが・・・運動音痴だ、残念レベルで。まあ、満足に体を動かす事が出来なかったし、止められていたのだから、仕方が無いが。
それでも、今はかなり改善されて激しい運動を避ければ普通に生活を送れるようになった。

「おはよう、真技。いつも仲睦まじくて良い事だ」
「ああ、おはよう一。あと、からかうのはやめてくれ調子にのるから」
「もっと言ってやっていいよ。林原君、分かってるねっ」
「後で大変になりそうだから、勘弁な一」
「ざ~んね~んだね~」
「ふふ、何時もの通りだね、央輪多さん」
「浩生も・・・おはよう」
「おはよう。強灰」

林原一と洋学浩生はクラスメイトの中では俺と馬が合う。
二人とも親友同士で一はスーツアクターを目指している、その為今は修行中って事だ。頑張っている。
浩生はオタク気質が強いが、特撮やアニメの知識・・・雑学の方か、結構のモンらしい。
インドア派の所為も有るが、少し体が弱い。鍛えれば治るとは一の弁だ。

二人と話していると後ろからやけに鼻にかけた声が掛かる。
「ま~たく朝から仲いいね~~」
「農・・・、まじめに出て来たんか」「めずらしいねー」「何か起きるんぢゃないか」

散々な言われようだが実際言われるべき背景がある。簡単に言えば彼は不真面目な生徒の一人だ。
農太輔、クラスメイトの一人。それほど仲の良い相手ではない・・・むしろ悪い。

「わりーなー、出て来てヨ~」
「そーよねー。ちゃ~んとガッコに来たんだし」
「ノリちゃん・・・きたの」
「おっは~。相変わらず仲いいね!ミーエっち」

不機嫌そうに口を閉じる彌栄。昔は確か仲が良かったが、彼女も非行に走ってウリをしていると聞いた。
クラスメイトの女子の一人、大岡典江。見た目はのんびり風味だが失恋を機に人が変わった様に性的に乱れた。
誰が意中だったか、いまだに聞く事が出来ない。何回か聞いたよ。その度に凄い笑顔で目が笑っていないで「言わない」とか「内緒だよ」とか言われるんだよ・・・さすがに折れましたよ、俺のチキンハートは。

「呼び方だけは昔のまんまだな」
「そ~よ~。今でもアタシはマギっちを狙っているのよ~」
「はいはい」
「そろそろ急ごう、いったん教室に入らないと」
「そうだな。急ごう」
ナイスだ林原、早々とこの場から離れよう。

俺、強灰真技が通う某市立農業高等学校は盆地の地形に有る少し田舎の学校だ。
主な特産は良質の石灰石が取れる事、その為に私鉄が敷かれたほどだ。
後は山の方に比較的大きな神社と街の真ん中にも神社がある。結構有名なお祭りで太鼓囃子と大きな山車が出る。
洋学が言うには、以前に市が全面バックアップした作品と聖地巡礼で賑やかだったそう、札所巡礼も有るのに全年齢をゲットしたかったみたいだ。
まあ、俺がこの地に来るだいぶ前の話だけど。
ここにきて高校二年になるので十年以上になるのか。あれ?エイリって赤ん坊の頃見てたっけ?まあいいか。

国の政策で始めた各学校の災害対策。サバイバルスクールの実施が今後の出来事の切っ掛けになるとは。
しかも、それにみんなを巻き込んだのは俺だったなんて考えられなかった。
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