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亜空間「箱庭」異譚
転移実行
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皆と話していたのは実は時間が掛かって居たみたいだ。
校舎に入る時には予鈴が終わっていた。
急いで教室に入る。ヤバ・・・先生がもう来ている、そう思った。
その瞬間。
俺の足元に光る線と曲線が沸き上がる。
クラス中に騒めきと息をのむ気配が満ちる、更に体の動きが甚だしく阻害される。
「転移・・・いや召喚の方か」
何気に口にしたが、確信を持っている。
何故なら、見覚えがあるからだ。
正確には自分が作ったから。
「懐かしさが感じられる・・・しかし、頂けない。これは改悪だ」
本来の用途を無視している。
傷ついた魂を誘う紋章が、無秩序に拉致するだけの機能にさせられている。
「何という愚かな」
気が付くと、物言いが変わってきていた。
〈管理者と接触を確認しました。機能を維持したまま権限を移行、および履歴と検索を行います〉
何かが頭の中で囁く。
知っている。これは自動遂行器官のはずだ。
教室の風景に別の何かが映し出される。
神殿を思わせる造りの室内、に神官らしき姿といかにも魔法使いっぽいローブ姿の数人と・・・厳つい恰好の近衛兵だろう者たち。
そして、豪華な出で立ちの一団と一際鋭い眼つきをした一人。
声が響いてくる。
『召喚門を立ち起こせ!』
スゴイ風圧を感じて咄嗟に腕を顔の前にあげる。が、髪の毛は風で酷く乱れ目が開けていられない。
次の瞬間には、床の感覚が消えていた。
落とし穴に落とされる、そんなイメージを持ったが落下感は無くて。
浮遊感や無重力感でも無い。
むしろ感覚の消失だ。
光も音も閉ざされた状態。風も吹いていたはずなのに・・・すでに無くなっている。
「ああ、転移機能は働いているな。この辺りは正常稼動か」
自分が薄くなった気がする。考えも・・・声も・・・強灰真技と言う存在も。
替わりに出てくるのは誰なんだろうか?
自分だ・・・と、理解する。 いやまて。 自分・・・って此処にいるのは自分のはずだろう。
「同調を開始しろ、何が起きた?」
〈コマンドを実行。開始します〉
目の前に幻影が浮かび次々と流れていく。途中で幻影が増えたり或いは大きくなったりとしながら、ここ数年・・・いや十年以上の経歴が早送りで映し出されていき・・・終わった。
「全く。少し俺は甘かったな、此処の管理を誰かに移譲するのを本気で検討すべきか」
実体化する、つまり転移が終わるまでわずかな時間が残された。
その先に居る、災いを持ち込んで禄でも無い事に「箱庭」を染めた罪を贖わせる者どもの情報を掲示する。
「強灰真技の人格は、まだなくさない方が良いか・・・。取り敢えず強制逆召喚だな」
それにまだ懸念が残る。それは術式の発動と改変には「竜の騎士の証」が不可欠。
なら、あの男・・・ネイッザ・ニルサム・・・が入手し、行使でき得る力量を得ている筈。
「面白い。責任は取らせるが、やり方が選べるな」
ふと傍らに気配が経つ。
「イレギュラーが起きた。・・・しかし巧く生かそう。少し予定と違えるが宜しく頼む」
了承の雰囲気が伝わる、親愛と慕情を多分に込めて。
「それにしても変化の規模が大きい。ある程度の成熟が得られたと考えて然るべきか・・・」
それは次のステップに進む丁度良い機会。
「ふむ、良い運動を兼ねて少し冒険者の真似事と洒落込むとするか。貶めた連中は責任を取らせるついでに、ステップを進める触媒に具合が良いだろう」
その間は自分の本分が強灰真技のボディを使う事になる。
経験を高めるには、安全マージンの得られる箱庭だと言うのは恵まれた環境だろう。
やがて、合一化する時に役に立つだろうから・・・。
「そろそろか・・・。ふむ。少し人格を出していた方が混乱させずに移行し易いだろう」
記憶の譲渡。人格の統合は注意が足りないと、最悪やり直しだ。
稀に進展するケースも無いわけではないが。
手順を踏んだ方が乗っ取りにならず、存分に力を振るえる。
これまでも・・・何回も行ってきたのだ。
余りに特殊な己の特性を抑える為に構築したシステム・・・リ・インカーネート・システム。
呪われた聖具、又は聖なる呪具を核とした人体・人格再構築機構・・・聖徴・・・ホーリーサイン。
魔術魔法、陰陽道、予定調和、それらを自己流に完結、拡張した・・・いや変革したおどろおどろしい技だ。
さて、時間が迫って来た。
今のこの場所は管理者権限を行使する為だけの暫定異相空間。情報を得る為に始めたが時間を止めた訳では無く異なる時間の流れる場所である。
転移そのものは一瞬だが、僅かに時間が掛かる。
その一瞬の時間軸からシフトして用を済ませてから元る、その座標となるポイントは時間経過を異相内にも伝えて来るのだ。
実に親切な御都合的設定だろう。
しかも転移に入った時点で発動したのだから。
夜が明ける様に。
闇色の黒から白じんで来る。
目に飛び込んできた風景は・・・。
教室で見かけた、あの風景だった。
いや、続きだった。
「箱庭」と言われる四角い大陸に在る三か所の主要都市、その一つが王家を中心とした魔法主都グレートエルフ。
かつて繁栄を極めていたが。
王家は衰退の一歩を辿っており、辺境に生まれた英雄・・・勇者とも謂われる若者を取り込み辛うじて都市運営を賄っている。
宰相としてその腕を振るってはいるが、権力の魅了に冒され、すでに生まれた村への愛着は失われてしまっていた。
そこにいるのは、豪華さよりも力を求めた亡者だ。
しかし、その見境の無さが主都グレートエルフを持ち堪えさせていた。
最盛期に至らないまでも維持されていたが、それが増長をさらに加速させ、娶った妻を政治の取引道具に貶めて・・・外世界からの拉致という振る舞いを行うまでになっていた。
主都神殿の最新の施設、召喚儀式殿。
現代世界なら軍の最重要施設に相当する巨大で異様な雰囲気を纏った建屋だ。
つまり、神殿風の外見では無くて、平屋でパイプの張り巡らされた工場の風貌。
警備に惜し気も無く人員と魔術を投入しており、宛も近代セキュリティの如し。
その中央部で集められた召喚を行う神官と魔術師、警備に携わる兵、王族からの見届け人と執行権を持つ宰相ネイッザ・ニルサム。
儀式が決行して順調に推移、実体化を待つだけとなってニルサムは内心ほくそ笑む。
今回は多人数の償還に挑戦し、見事にここまで辿り着いたのだから。
儀式の要、召喚紋の解明と再構築が叶った。そして、手に入れる事が出来た「竜の騎士の証」。
「箱庭」の制禦を司る鍵の一つを二つも入手出来たからなのだ。
「これで我が権力は更に高みに及ぶだろう」
口の中だけで呟く。
床に描かれた巨大魔法陣は最終段階を迎え、輝く粒子が集まり人の形を成していく。
それも20を超えているのだ。
使える物が半分あればかなりの物だ。それがどれほどの出来かはこれから付与される「魂の剛」で決まるだろう。
つまり、ステータスが与えられて各人の解析が行われてスキルやレベルが固定される。
戦闘系か製造系か技術系か、或いは開発、解析か。
齢若い者を選んだのだから期待が高まるというものだ。
「実態化終了まで10エス!」
神官が壇上のネイッザへと告げる。
「ふむ、10秒か」
ネイッザはこの大陸でも数少ない記憶継承者の一人だ。
現代日本で生きた記憶をある程度残っている状態で転生している。
完全な記憶では無く、イメージやクセの様なモノとして捉えられており、割とありふれた事の為に皆気にしていないが、実はここに暮らす人々は凡そ全てが転生者だ。
特に前世で辛い思いをして、魂が疲弊し傷ついた者達。
「箱庭」の存在意義でもある。
残念ながら以前の人生は残滓なので、夢か妄想とされて気にも留められてはいないが。
その為、微妙に残った記憶から時間の単位が英語のセカンドの頭文字の「エス」で、ネイッザはそれを「秒」と無意識に変換している。たまに声に漏らすが。
実体化していく人影。
それはやはりまだ若い男女。むしろまだ幼さが残りことから青年より前、少年の世代だと知れた。
目の前の景色が形を成していく。
人の姿をした、しかし、瞳の色や髪の色が染めたにしては不可思議な感じの者達が油断なく多数いる。
そして。
何より一番の違和感は自分自身だろう。
強灰真技のはず、間違いなく。
しかし違う。今の自分はこの世界の創成者で在り、数の限られた運営を司る存在「旧支配者」だと納得している。
この大陸の支配者、則ち、主人公たるはここで暮らす人々なのだ。
その由来元が現生の地球で、苦労をした人物だけが迷う前にここに召喚されて居る事を理解している。
いや、設定したのだ。
ただ、ひとりの、たましいの、ひごのために。・・・たいせつな・・・そんざい・・・だから。
其れを汚す存在など、消滅より厳しい処罰を与えなければ、ならない。
そう。
許されるべきでは無い!
・・・・・・
「何だこの重圧感は」
ネイッザは即座に警戒を戦闘状況に変化させた。
「敵」が居る!?
「何故」?!
それを感じる事が無く神官長は口を開く。
「良く参られた。説明とお詫びをしたい、どうか、お聞き届けを願う」
間髪を入れずに俺は叫ぶ!
「断る!悉く拒否する!」
この声に沈黙を持って驚愕するのは神官達のみならず、召喚され実体化したばかりのクラスメイト達。
「ほう。良い素材のようだ・・・神官長、私に任されよ」
「はは!」
威圧も受け、事態の変化に戸惑う神官長は渡りに船とばかりに身を引く。
「何故否定される?決して悪い様にはしない。強制的な召喚を行った我らの非がある以上、高待遇を宰相たる私が・・・そしてこの我が国を上げて保証する」
クラスメイト達はどよめくが。
「その対価は戦いであり、人の殺し、自身の命を懸けた戦いと言う名のただの犠牲だ。従うべき借りなんぞ無い!借りこそ有るがな」
「仲間を思う気持ちはよく解る。私も同法の事を思うが故に、君達に縋るのだから」
「偽善はよせ。大義名分は要らん!国家間の諍いなんぞ起きてはいないし、そもそも禁止されている!!」
「妙に詳しいねキミは?それにこの気配は・・・」
「落ち着かれよ!我々は敵ではない!・・・確かに戦ってもらうが我々ではかなわぬ相手だからこそ、守護神様より我らに無いステータスとスキルを授けられて」
クラスメイト達の眼前にホログラムディスプレイが浮かび上がる。
すかさず叫ぶ。
「逆送移紋の書き換えを確認!強要付与されたステータス・スキル・レベルを代償に実行!!」
認識させたらこの世界への定着が始まる。そうなると手間が増える・・・何故か、そう認識する俺。
「ええ、なんでだ?」
「スゲエ!おれはTUEEEEなんだぁ」
「まって!強灰君。何が起きてるの?」
「よせぇ俺は残る!ここに残るぞぉ!ケモミミがあああ!」
「知った事か。お前たちがここに来るのは早すぎるんだ、何より苦労して傷付く生き方すんじゃねぇ」
「何!!」
最も荒ぶるネイッザ。壇上に居たはずがすでに俺の前に居る。
校舎に入る時には予鈴が終わっていた。
急いで教室に入る。ヤバ・・・先生がもう来ている、そう思った。
その瞬間。
俺の足元に光る線と曲線が沸き上がる。
クラス中に騒めきと息をのむ気配が満ちる、更に体の動きが甚だしく阻害される。
「転移・・・いや召喚の方か」
何気に口にしたが、確信を持っている。
何故なら、見覚えがあるからだ。
正確には自分が作ったから。
「懐かしさが感じられる・・・しかし、頂けない。これは改悪だ」
本来の用途を無視している。
傷ついた魂を誘う紋章が、無秩序に拉致するだけの機能にさせられている。
「何という愚かな」
気が付くと、物言いが変わってきていた。
〈管理者と接触を確認しました。機能を維持したまま権限を移行、および履歴と検索を行います〉
何かが頭の中で囁く。
知っている。これは自動遂行器官のはずだ。
教室の風景に別の何かが映し出される。
神殿を思わせる造りの室内、に神官らしき姿といかにも魔法使いっぽいローブ姿の数人と・・・厳つい恰好の近衛兵だろう者たち。
そして、豪華な出で立ちの一団と一際鋭い眼つきをした一人。
声が響いてくる。
『召喚門を立ち起こせ!』
スゴイ風圧を感じて咄嗟に腕を顔の前にあげる。が、髪の毛は風で酷く乱れ目が開けていられない。
次の瞬間には、床の感覚が消えていた。
落とし穴に落とされる、そんなイメージを持ったが落下感は無くて。
浮遊感や無重力感でも無い。
むしろ感覚の消失だ。
光も音も閉ざされた状態。風も吹いていたはずなのに・・・すでに無くなっている。
「ああ、転移機能は働いているな。この辺りは正常稼動か」
自分が薄くなった気がする。考えも・・・声も・・・強灰真技と言う存在も。
替わりに出てくるのは誰なんだろうか?
自分だ・・・と、理解する。 いやまて。 自分・・・って此処にいるのは自分のはずだろう。
「同調を開始しろ、何が起きた?」
〈コマンドを実行。開始します〉
目の前に幻影が浮かび次々と流れていく。途中で幻影が増えたり或いは大きくなったりとしながら、ここ数年・・・いや十年以上の経歴が早送りで映し出されていき・・・終わった。
「全く。少し俺は甘かったな、此処の管理を誰かに移譲するのを本気で検討すべきか」
実体化する、つまり転移が終わるまでわずかな時間が残された。
その先に居る、災いを持ち込んで禄でも無い事に「箱庭」を染めた罪を贖わせる者どもの情報を掲示する。
「強灰真技の人格は、まだなくさない方が良いか・・・。取り敢えず強制逆召喚だな」
それにまだ懸念が残る。それは術式の発動と改変には「竜の騎士の証」が不可欠。
なら、あの男・・・ネイッザ・ニルサム・・・が入手し、行使でき得る力量を得ている筈。
「面白い。責任は取らせるが、やり方が選べるな」
ふと傍らに気配が経つ。
「イレギュラーが起きた。・・・しかし巧く生かそう。少し予定と違えるが宜しく頼む」
了承の雰囲気が伝わる、親愛と慕情を多分に込めて。
「それにしても変化の規模が大きい。ある程度の成熟が得られたと考えて然るべきか・・・」
それは次のステップに進む丁度良い機会。
「ふむ、良い運動を兼ねて少し冒険者の真似事と洒落込むとするか。貶めた連中は責任を取らせるついでに、ステップを進める触媒に具合が良いだろう」
その間は自分の本分が強灰真技のボディを使う事になる。
経験を高めるには、安全マージンの得られる箱庭だと言うのは恵まれた環境だろう。
やがて、合一化する時に役に立つだろうから・・・。
「そろそろか・・・。ふむ。少し人格を出していた方が混乱させずに移行し易いだろう」
記憶の譲渡。人格の統合は注意が足りないと、最悪やり直しだ。
稀に進展するケースも無いわけではないが。
手順を踏んだ方が乗っ取りにならず、存分に力を振るえる。
これまでも・・・何回も行ってきたのだ。
余りに特殊な己の特性を抑える為に構築したシステム・・・リ・インカーネート・システム。
呪われた聖具、又は聖なる呪具を核とした人体・人格再構築機構・・・聖徴・・・ホーリーサイン。
魔術魔法、陰陽道、予定調和、それらを自己流に完結、拡張した・・・いや変革したおどろおどろしい技だ。
さて、時間が迫って来た。
今のこの場所は管理者権限を行使する為だけの暫定異相空間。情報を得る為に始めたが時間を止めた訳では無く異なる時間の流れる場所である。
転移そのものは一瞬だが、僅かに時間が掛かる。
その一瞬の時間軸からシフトして用を済ませてから元る、その座標となるポイントは時間経過を異相内にも伝えて来るのだ。
実に親切な御都合的設定だろう。
しかも転移に入った時点で発動したのだから。
夜が明ける様に。
闇色の黒から白じんで来る。
目に飛び込んできた風景は・・・。
教室で見かけた、あの風景だった。
いや、続きだった。
「箱庭」と言われる四角い大陸に在る三か所の主要都市、その一つが王家を中心とした魔法主都グレートエルフ。
かつて繁栄を極めていたが。
王家は衰退の一歩を辿っており、辺境に生まれた英雄・・・勇者とも謂われる若者を取り込み辛うじて都市運営を賄っている。
宰相としてその腕を振るってはいるが、権力の魅了に冒され、すでに生まれた村への愛着は失われてしまっていた。
そこにいるのは、豪華さよりも力を求めた亡者だ。
しかし、その見境の無さが主都グレートエルフを持ち堪えさせていた。
最盛期に至らないまでも維持されていたが、それが増長をさらに加速させ、娶った妻を政治の取引道具に貶めて・・・外世界からの拉致という振る舞いを行うまでになっていた。
主都神殿の最新の施設、召喚儀式殿。
現代世界なら軍の最重要施設に相当する巨大で異様な雰囲気を纏った建屋だ。
つまり、神殿風の外見では無くて、平屋でパイプの張り巡らされた工場の風貌。
警備に惜し気も無く人員と魔術を投入しており、宛も近代セキュリティの如し。
その中央部で集められた召喚を行う神官と魔術師、警備に携わる兵、王族からの見届け人と執行権を持つ宰相ネイッザ・ニルサム。
儀式が決行して順調に推移、実体化を待つだけとなってニルサムは内心ほくそ笑む。
今回は多人数の償還に挑戦し、見事にここまで辿り着いたのだから。
儀式の要、召喚紋の解明と再構築が叶った。そして、手に入れる事が出来た「竜の騎士の証」。
「箱庭」の制禦を司る鍵の一つを二つも入手出来たからなのだ。
「これで我が権力は更に高みに及ぶだろう」
口の中だけで呟く。
床に描かれた巨大魔法陣は最終段階を迎え、輝く粒子が集まり人の形を成していく。
それも20を超えているのだ。
使える物が半分あればかなりの物だ。それがどれほどの出来かはこれから付与される「魂の剛」で決まるだろう。
つまり、ステータスが与えられて各人の解析が行われてスキルやレベルが固定される。
戦闘系か製造系か技術系か、或いは開発、解析か。
齢若い者を選んだのだから期待が高まるというものだ。
「実態化終了まで10エス!」
神官が壇上のネイッザへと告げる。
「ふむ、10秒か」
ネイッザはこの大陸でも数少ない記憶継承者の一人だ。
現代日本で生きた記憶をある程度残っている状態で転生している。
完全な記憶では無く、イメージやクセの様なモノとして捉えられており、割とありふれた事の為に皆気にしていないが、実はここに暮らす人々は凡そ全てが転生者だ。
特に前世で辛い思いをして、魂が疲弊し傷ついた者達。
「箱庭」の存在意義でもある。
残念ながら以前の人生は残滓なので、夢か妄想とされて気にも留められてはいないが。
その為、微妙に残った記憶から時間の単位が英語のセカンドの頭文字の「エス」で、ネイッザはそれを「秒」と無意識に変換している。たまに声に漏らすが。
実体化していく人影。
それはやはりまだ若い男女。むしろまだ幼さが残りことから青年より前、少年の世代だと知れた。
目の前の景色が形を成していく。
人の姿をした、しかし、瞳の色や髪の色が染めたにしては不可思議な感じの者達が油断なく多数いる。
そして。
何より一番の違和感は自分自身だろう。
強灰真技のはず、間違いなく。
しかし違う。今の自分はこの世界の創成者で在り、数の限られた運営を司る存在「旧支配者」だと納得している。
この大陸の支配者、則ち、主人公たるはここで暮らす人々なのだ。
その由来元が現生の地球で、苦労をした人物だけが迷う前にここに召喚されて居る事を理解している。
いや、設定したのだ。
ただ、ひとりの、たましいの、ひごのために。・・・たいせつな・・・そんざい・・・だから。
其れを汚す存在など、消滅より厳しい処罰を与えなければ、ならない。
そう。
許されるべきでは無い!
・・・・・・
「何だこの重圧感は」
ネイッザは即座に警戒を戦闘状況に変化させた。
「敵」が居る!?
「何故」?!
それを感じる事が無く神官長は口を開く。
「良く参られた。説明とお詫びをしたい、どうか、お聞き届けを願う」
間髪を入れずに俺は叫ぶ!
「断る!悉く拒否する!」
この声に沈黙を持って驚愕するのは神官達のみならず、召喚され実体化したばかりのクラスメイト達。
「ほう。良い素材のようだ・・・神官長、私に任されよ」
「はは!」
威圧も受け、事態の変化に戸惑う神官長は渡りに船とばかりに身を引く。
「何故否定される?決して悪い様にはしない。強制的な召喚を行った我らの非がある以上、高待遇を宰相たる私が・・・そしてこの我が国を上げて保証する」
クラスメイト達はどよめくが。
「その対価は戦いであり、人の殺し、自身の命を懸けた戦いと言う名のただの犠牲だ。従うべき借りなんぞ無い!借りこそ有るがな」
「仲間を思う気持ちはよく解る。私も同法の事を思うが故に、君達に縋るのだから」
「偽善はよせ。大義名分は要らん!国家間の諍いなんぞ起きてはいないし、そもそも禁止されている!!」
「妙に詳しいねキミは?それにこの気配は・・・」
「落ち着かれよ!我々は敵ではない!・・・確かに戦ってもらうが我々ではかなわぬ相手だからこそ、守護神様より我らに無いステータスとスキルを授けられて」
クラスメイト達の眼前にホログラムディスプレイが浮かび上がる。
すかさず叫ぶ。
「逆送移紋の書き換えを確認!強要付与されたステータス・スキル・レベルを代償に実行!!」
認識させたらこの世界への定着が始まる。そうなると手間が増える・・・何故か、そう認識する俺。
「ええ、なんでだ?」
「スゲエ!おれはTUEEEEなんだぁ」
「まって!強灰君。何が起きてるの?」
「よせぇ俺は残る!ここに残るぞぉ!ケモミミがあああ!」
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