魔伝士ネイラーラ・ゾフィープ

随想アルファ

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亜空間「箱庭」異譚

箱庭行脚 第弐話

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目指す場所に同行する依頼を見付けた。

所謂警護任務。

ただ、俺は駆け出しの魔法使い。なので、雑用係。

昨晩は野宿。街を一望できる丘に簡易の宿泊可能な設備が有ったから。まあ、キャンプ場だけどね。
無駄にならなかったよ。
転移に巻き込まれたサバイバル・セットが。
食料を使いつつ、着替えとか確認。カルテットが入れた例のグッズが何の効果を齎すのだろうか?
売れるのかな・・・場合によっては売るしかないか。

それに、そこで陥没した王城の跡を眺めた。
う~ん。外から見てなかったから、さっぱりイメージできない。
城ってあんまり興味が無かったからそれ程に見たい気が無いけど、それでも何故かとても残念な感じになるな。

ネイッザはどうしているのか。
リンクが切れていて、全く分からない。
いままで、内側からしかこの世界を見ていなかったけど。
「結構、情報が伝わったけどなあ・・・」
何て言うのか・・・ゲーム画面的に説明が見える・・・的な。
視覚的な物ではないのだけど、バーチャルリアリティが近いだろう。
しかし。これからの自分の立ち振る舞いが色々と問題だな・・・守護者に会う・・・ゲームでも無いのにリアルでやるのか・・・。

金銭の確保。
旅の間の食料の問題。
もう一つ。
此処の食べ物って食べたら戻れなくなるとか無い・・・よな?
まあ俺は普通の人じゃないから大丈夫だろう。きっと。

雑用係のキャラバンの出発まで丸二日有るので、準備を進める為、街に行く。
取り敢えずジャージから、この世界に会う服装にしたい。

憧れも有るしね、冒険者。

ちらっと見た服を扱う店。なんと冒険者の服や旅の装備を扱っている。
ダメ元で入っていくと、ゴツイ風の店長らしき人と従業員らしき青年や女性の姿が。親子かな。
言葉が通じるのはいいよね。
通貨価値は基本何処でも共通。
ただ、特産品の都合や場所によって過酷だったりすると異なるみたい。

あと。物々交換の時。
等価交換を便利な魔道具が行う。

タグの銀行機能なんて魔道具とセットで使うなら自動で価値等換するそう。
セントラルいい仕事をしています。
これ完全に現代基準を先に行っていませんか?

店に入って。
古着も扱うのか聞いて。扱うって事なので値段とか冒険者の服の扱いが有るかも聞いて。
取り敢えずサイズの確認をって話になって。
持ち出して来てくれた。
こっちの持ち込んだ品物で換金と言うか、物々交換か、う~ん、売れればラッキー。だったんだ。

んで、結論から言うと・・・、逃げ出したんだ。
否・・・逃げ出さずにはいられない不測の事態が起きた。

まさかって事が我が身に起きた。何回目だって話だけど。

経緯はこうだった。
古着の幾つかを見繕って持って来てくれて。
やっぱり冒険者風の着物を触りながら硬さやデザインにサイズを吟味していた。
アウトドア用品店で見かける感じの服。或いは作業服専門店の品揃えに近い。

割と近代的で、違和感が無いのが違和感。

ただ、レザーアーマーとか軽金属の装甲とかが必要で、そちらは別料金。全身を覆うより部分的に使うのが主流だそうで。
なんでも逃げる為の仕掛け。そうだよな。命あっての・・・あれ?ここって死後の世界・・・だよな?あれ?
すぐ買えない話をしていると、オーダーメイドも受け付けていると話し出す店員さん。
買えんのは現金が無いせいです。日本円じゃ使えないっしょ。
でもこんなので冒険者か~いいかな~とか思っていた。

問題は、その衣類を確かめながら店員さんと話していた時。

『やだ!そんなの着せられないよ!!ダメ!絶対っダメ!』

大きな声が響いた。
俺だけに聞こえたのかと思ったらひどく驚いた店員さんと目が合った。
・・・ヤバい奴やん・・・コレ・・・。

他の人も聞いたって事は、音の振動が発生したって事で、物理現象か・・・。
声も幼いし、そんな年頃の姿は全く見えない店内。

腹話術なんて使う謂れは無いし。
俺は使えない。こんな事に使う事でも無い。
そもそも声の内容が店の品に対する全面否定だ、店員でも無いぞ。

声は更に響いた。
『だったら今からその形にすれば良いんだよね』
直後光り輝いた俺のジャージ。

・・・昨夜は寝間着で使ったジャージでしたが、輝きの収まったら見ていた冒険者風の服と瓜二つ・・・。
しかも微妙にデザインが違う。
サイズも俺に合わせているし。
新品同様では無く、洗っているけど使い回した感の有る一着になっていた。

「「うわわわあああっ!」」
店員さんと声が奇麗にハモッた。
取り敢えず居られないと判断。
「すみません!魔法の暴走か友人(?)友人の悪戯です!ので!失礼しますうう!!」

呆気に取られながらも「またいらっしゃいませ」と震えながら答えた店員さんグッジョブ!さすがです!

とにかく。
キャンプ場に引き返した俺。
恐らく強制介入なんだろうけどそんな懸案だったのか?
それにしても。
あの声は何だ?

何故か知っている声だと思うんだけど。
暫く悶々としたが、考えていても仕方が無い・・・一応、管理者権限有る感じだし、どうにかなるか。
と、思い直して簡易テントに入っていった。
「ジャージの方が寝やすいけど、これからの道中を考えると・・・そうも言って居られない・・・か」
独り言ちる。

どうしたものか・・・。

会話が可能なら試みるか?
やってみよう。
「服を買わずに済んだね。礼を言っておくよ、有難う」

返答は期待してない。

「ごめんなさい。勝手にしちゃって・・・でも、ガマンできなかったの」
おおう。まさか返答が来るとは。
「いや良いんだ。で、ちょっと聞きたいんだけど・・・誰なのかな」
「・・・・」
「言いたくないなら別にいいよ」
「ちょっとルール違反したから、後で怒られるけど・・・こうなったら仕方ないよね」
唐突に目の前に魔法陣が多重展開した上に回転している。
本当に目の前だ。
鼻の頭に当たりそう・・・いや当たってんじゃないのか?コレ。
大丈夫か?と思っていたら一際大きく光って収まった。

そして半透明で佇む少女の姿。
凄く既視感。
「誰だっけな?」

「久しぶり?になるのかな・・・でもずっと傍に居たんだよ」
ストーカーですか。でも可愛いから良いか?いやいや。
「ごめん。誰?だっけ」
「忘れたの・・・あ・・・ううん。まだ思い出して無いんだね」

「え?・・・ああ。そうみたいで・・・重ねてごめん」
そういや、そんな設定だっけ。
「くす。でも変わってないから安心したよ、これからは直接護るからね」
さいですか。
きっとこの娘も人外で強力なんだろうな。
「うん。お願いするよ」
だからお願い。名前教えて!プリーズ・・・。

「思い出すまでなら・・・私の事は。幼馴染の・・・ミーチって言って欲しいの」

ん?幼馴染ですか・・・見かけの年齢は気にしちゃダメか。
「分かった。宜しくね・・・ミーチ」

少し間を置いて、満面の笑顔で「うん!」と言って消える彼女。

ま、いい出会いだったみたいなので結果オーケーで。

翌日はいよいよ冒険者稼業だ。寝よ寝よ・・・。

「すまないね、勝手に呼び出して」
「ここは?」
「君の心象世界。まあ、コンタクト用に使わせてもらっているけど」
「勝手にな・・・」
「うん?不機嫌だね。大丈夫。睡眠には干渉しないし、時間も経過するのは別なので」

ニコニコと記憶(?)さんが言う。

「そうそう、名前を伝えて置くよ。魔伝士とイコールなので使う時はこれから注意して欲しい」
「そうだね。名乗りは必要だよね」
「すまなかったね。君の名前でも有るんだ。その名はネイラーラ・ゾフィープ」

「ネイッザと似ているな」
おっと声に出てたか。
「この名は箱庭の賢者の一人として周知されているので肖りたい人が多いんだ。それに真名とかで縛られないから出世魚みたいに名前をその都度変えていくことも有る」
「そう・・・なんだ」
「冒険者タグとは別に庶民用の、謂わばIDタグの様な物が支給されるので、偽名だと別だけど分からない事にはならないんだ」
「なんか今回は随分とフレンドリーだな」
「まあ、ミッチーが想定外に接触したのでね。予定の前倒しなんだ」

そういえば。
「彼女に処罰とかあるのかい」
「今度の事がプラスになるかマイナスなのかで変わるけど、今のところは注意だね」
ふむ。じゃ俺次第か。
「記憶の管理者として出て来たのは、ちょっと重要な今世だったからで、いつもなら専任の担当が要るんだけどね」
えっそうなのか。
「驚くほどでもないさ。たまにやるからね。君は」
そうなんかい。

「これから少し伝えておきたい注意事項があるので聞いてくれ」

なんかまじめな態度に出られたんで緊張するな。
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