魔伝士ネイラーラ・ゾフィープ

随想アルファ

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箱庭異端 終章

終章9話

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出現した錆の凄い刀身は、手に持った瞬間に完全に新品の輝きと拵えが再現された。

そのまま前に向けて、ぐるりと腕を回す。

全く重さを感じていない様だ。

前に向けた時に気が付いたが、より幼くなった身体が宙に浮いている。
そして、刀の真下に亀裂が生れる。


典江だった存在は無表情のまま、念を込める雰囲気が高まって、強烈な熱量を撒き散らし始めた。
耐えきれず着ていた服が燃え盛り、灰となって飛び散る。
 
身体には縦方向に赤く光る直線がいくつも走り、髪がたなびく。

股間から白濁液が迸り、地面に溜まってボコッと半透明で四角い柱が生えて来る。
その頂部は胸の辺りまで伸びていき、右手を翳して押し込む動作をすると・・・。
身体の前に突然垂直に現れた、複雑な文様の有る円形が描かれて眩しく光る。

次の瞬間には前触れなく、今までとは桁違いの熱量を伴った炎が渦巻きながら放出された。
それは。
殆んど等身大の口径の大出力ビームだ。

こちら側は・・・地面に穿たれた亀裂が音を立てて深くなり、さらに前方に伸び出していった。

直撃する炎のビーム、身の回りは炎が二つに分かれて迸って行く。
放電まで伴って。

左右に分かたれた炎はそのまま直進して、進路の邪魔になる建築物と路面を巻き込んで粉砕し尽くす。

路面と平行に放たれた凄まじいエネルギーは、水平線状に破壊を与えて、高層式の倉庫や、人がいるか不明だがビル等が、薙ぎ払われていく。
固定されなくなったからだろう、空中に次々と吹き飛ばされて宙を舞って・・・地上に叩き付けられる。
幾つもの地上に在った無傷な建造物を巻き込んで。
更にそれらの現象は周囲を無差別に襲う。

特撮映像か、ゲームの画面か、と言った風景の現実が瞬く間に、一方的に暴力的に染め上げていく。

しかし。
俺は情けなくもへたり込んでいた、身をかわした後のままの姿勢に近い・・・。
エイリの雄姿には程遠い。

しかし。
エイリの変化は俺を固まらせるには十二分。
声を掛けるのも自分を動かすのも、気持ちをどうするのかも、頭が真っ白になって分からない。

もっと、恐ろしいのは。
その変化を俺が容認しているって事だ・・・。

ふと。
誰か別の気配を感じる。
他人では無い、とは思うが・・・警戒をする事を否定している自分が心底怖い。

此方に注がれている視線を辿る。
「ミーチ?・・・なのか」
なにか、やれやれと言った気配?雰囲気?が伝わって・・・消えた。

現実に戻されていると、突如として凄まじい衝撃が伝わってくる。

音も。

そこには、半透明に突き出した何かをエイリから延びて行った亀裂が破壊していた。
同時にビームも魔法陣も消えて、典江だった物体が微動だにせず直立しているだけだった。
しかし。無事では無い。
その裸体には幾つかの罅が視られる。
亀裂と言ってもいい、だが、出血は無い。滲んではいる様だが・・・。
皮膚が大きく切れてくっ付いている、外観の表現としてはそれ以上でも以下でも無く。
縫合でもしなければ在ってはならない傷で・・・もっとも縫合の痕跡なんて無いが。

その傷以外のダメージは無い。
同時にもう一つ体の輪郭が違う様に思える、身体のパーツの割合が日本人離れしている。
つまり。
造られたって事になる。
「やはり、プロトタイプ」
一人呟く。

まだ戦いは終わっていない。
典江の背後か、頭上か、何か気配が吹き上がって、俺たちの周囲をぐるりと囲む無数の光輪。
物量で来るのか・・・とも、まだ攻撃可能なエネルギーが残っているのか・・・とも思う。
地面が輝いて、俺を中心にかなりの数の 光る輪 が表れて拡大していく。
同時に水平に地面が均されて・・・光輪からの一斉射撃が始まった。
直撃の居この威力は小さいのだろうが、その連射と発射点の数は衝撃は凄まじく、ダメージを与えて蓄積、地面の輪は光を失って砕ける。
それと同時に均されていた地面は砕けていく。
どの位、続いたのだろう。

目の前には俺とエイリの足元にしか光る輪が無くなっていた。

エイリの右腕は少し上を向くと剣は滲んで朧に蠢き形を変える。
現れたのは火縄銃を思わせるフォルム。
かなり直線でリデザインされているが。
特徴的なのは銃身の隣、平行する形でもう一つの銃身が存在している。
再び前に向けてるとカチャッと金属音の後、平行していた銃身の外側が回転する。
丁度、銃身が重なって長くなり、勘合部分が噛み合う動きと音が聞こえて銃口付近から三本の棒が伸びて地面に刺さる。
金色の電気騎士か!とツッコミを入れるが。
引き金を引いたらしい音が微かに届く。むしろスイッチみたいだったが。

棒立ちしている典江の胴体に黒い点が浮かび、背後に轟音と衝撃が突き抜ける。
しかし、それでもまだ
戦闘継続できるのか、腕を曲げて胸の前に持っていこうとする。

ああ。まずいな・・・。
俺はゆっくりと立ち上がって歩き出す。
エイリの傍を通り抜けると、え?っとこちらを見上げると顔が見えたのだろう、納得した表情を見せて右手を下げると持っていた銃は消える。

そのまま典江の姿をした 物 の前に進み、顔を両手で掴んで顔を突き合わせて目をお互いに見つめ合う。

俺は 物 の目を強い視線で見詰めると。
「もう終わりだ」
 物 の眼球には俺の眼が写る。
茶色の瞳には。
瞳孔が四つ浮かび上がる。

次いで、同行は黒い点になって瞳が紫に変わってうっすらと光る。
「やめる。いいな」
見つめ合う姿勢のまま少しの時間が流れて 物 の両腕から力が抜けてだらりと下がる。

ボン!と 物 は四散し、消滅していく。
押さえて持っていた顔は最後まで残って、緩やかに消えていく。

「やれやれ」
典江の顔が消えていくのを見ながら、嫌な気持ちを持ちつつもようやく今回の一連の事を終わらせられると思う。
俺自身も、元々の人格に仮初の人格が溶け込む・・・いや、望んだ 忘れた自分 に戻って来る記憶を受け入れる。

ふわりと。現れる、宙に浮いた半透明の少女。
「あの・・・ごめんなさい・・・調子に乗り過ぎちゃって」
腕組みして溜息を一つ。
「お母様・・・怒ってます・・・よね?」
少しの間。
「まあ、許すよ。プロトタイプも一応は完了したんだろ?取り敢えずは典江を戻してあげて」
「・・・許してもらえるの??」
少し浮いている高さを低くする。と。顔を傾げる。
あざといけど、まあ、いつもの事だ。
「後で説教な」
絶望した表情をしたが、にっこりとほほ笑む。そうして透明感が強まり消える。
どうしても、男の状態だと甘くなるなあ・・・と思う。まあ、カルテット・・・いや第四形態にも怒られてもらおう。

「望んだ事だし、後味が悪くなるのは予想していたが・・・」
ちょいっと、服を引っ張る感覚。そっちを見やるとエイリが心配げに見上げている。

感傷に浸り過ぎていた。と反省して、微笑む。
「ゴメン。少し気が逸れていた・・・もう大丈夫だよ。行けそう?」
「うん。よかった・・・あんまり辛そうだったから・・・私は平気。これからだし」

頷く。
片膝をついて、眼を合わせる。
姿勢を低くして優しく尋ねる。

「これから。・・・あの時に渡る。これは・・・これも俺の我儘、辛い思いはエイリの方が大きい・・・一緒に行ってもらえるかな」
「うん!」
パッと笑顔で俺に抱き着く。

ああ。エイリの匂いだ。
ずっと一緒にいた。
幼い頃から共に居た、あの村に居た頃の、ただ一人の肉親。

父も母も居た頃はまだ良かったけど。

抱き合った二人を、優しく包む光。

消えていく。

「後の事は。残った者達の作業だな・・・」
呟く。
「まあ。かなり、やらかしたが・・・な」

「昔懐かしい、あの村に。もう一度行こう」


あの村。・・・山間の小さな・・・人口の村。
あの場所は、どうにか生きていけるだけの恵みが有った。
一本の川が流れて、魚なんかが絶える事無く獲れて、採取すると数は少ないが種類の多い山の幸。
慎ましく暮らす分には問題の少なかった場所に生まれた育っていった。

何回目なのか。
数えるのを止めるくらいの一生の一つ。

忘れられない前世の記憶達、そのどれもが、苦痛と悲しみに塗れていた。

大体が子供のうちに戦争やら、ケモノやら、必用な虐待に苦しんで殺されて行った。
偶に大人になっても碌な目に逢わない。
殺さないと殺される環境や、理不尽な扱い、奴隷の子供にも生まれた事が有った。

見かけも性別も様々だったなあと振り返る。人が多かったが、獣人や実験的に生まされた生物って時も有った。

そんな中でも少しは幸せだと、楽しかったと思わせてもらえる生き又も・・・無くは無かった。

結局は無残な運命に翻弄されたが、幼い頃は幸せだった。
そこにもう一度赴く。
それだけの能力をすでに持ってしまっているから。

何より、エイリの復讐の為に、俺の怒りの発散の為に。

あの場所。

あの時。

あの瞬間の直前に。
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