魔伝士ネイラーラ・ゾフィープ

随想アルファ

文字の大きさ
26 / 27
箱庭異端 終章

終章10話

しおりを挟む
父が仕事の途中で事故に倒れ、母がその後に流行った病に屈し、幼い妹と俺を村全体で面倒を見る事にしたのは兄妹にとって不幸中の幸いだった。
唯一、の幸運は偶々地主の家系だった、事で辛うじて食い扶持には満ちていた。
もっとも最低限だが。

村はあの時まで、農業も畜産も恙なく行われ、さほど多くは無い人口も良い方向に働いてはいた。

少ない俺の幸せなひとときだった。


両親は死に、本家側には拒否されたのは只々駆け落ちしたのが両親だったから。
まだ幼い妹と済むのは、此方から願った水車小屋と道具を治めている小屋だった。

俺が仕事の手伝いで毎日与えられる穀物などを水車の動力で挽き、道具のメンテナンスと管理をする事で実際に問題無く生活を出来てはいた。

妹は、所謂お兄ちゃん子になっていて、いつもベッタリしていた。
仕方が無い、急に両親をあっと言う間に失ったのだから。
その為、邪魔をしなければ兄と共に仕事を手伝う事を許された。

その時の口癖が「お嫁さんになる」だった。
幼い妹が拙い言葉での発言はとても可愛らしくて、大人達から微笑まれて、愛おしく大切に扱われていた。
それが申し訳ないと思うと共に、未来に不安を感じていた。

その不安は全く違った形で現れる事になるとは・・・。

来るべく決められたその日のかなり前から。
妹とは一線を越えていたんだ。
その時は、お互いに思い出して悲しんでいた。
何方が先だったかなんて覚えてなんていない。
父が死に、母が永遠に分かれて、二度と会えない事から抱きしめ合って泣いた。
お互いに頭を撫ぜて、背中をさすって・・・、家族を失った悲しみを二人だけで共有していった。

どちらかからか・・・或いはそれ以前から俺が妹に性的悪戯をし始めたからか・・・互いの性器を見せ合って、触り合って、気分が高まり過ぎていて。
気が付いたら、裸になって抱き合い慰め合っていて、ついでに・・・お互いに性器を弄り合って・・・最終的に結合していた。

一線を超えていたのはさすがに後ろめたく後悔していたが。

切っ掛けは妹の言葉の「お嫁さんになりたい。好きな人が出来たら邪魔はしない、一緒に可愛がってほしい」だったろう。
その時は既に記憶は全て甦っていたので背徳感も半端無く、同時に、真逆に、他人だけと肉親でも有る妹に欲情していて、犯したことに・・・初めてを・・・散らした事に満足していた。
その後も何回も交ぐ合い続けて。

忌まわしき瞬間が訪れた。

その日は仕事が無くてお休みになっていた珍しかった一日。

久々にお互いに弄り合って只ひたすら・・・まぐわっていた。

ズシン!ともガチャ!ともつかない音や気配、振動を実際に伴って。
一瞬後、訪れたのは悲鳴と騒動と衝撃。

「!!!」

咄嗟に妹の身体を抱き、姿勢を低くして声を潜める。
それでも、抱きしめていても自由度を担保していての俺の行動に、妹・・・エイリはジッとしていた。

暫くの後。俺達は服を着て装備を確かめる。逃げるか、対峙するか。
何方にせよ、逃げるのを主にして最低限の装備で個々から出るしかないだろう。
少なくとも装備はこの水車小屋では無く、道具小屋に移るしかない。

正直、今の俺は現状発揮する能力の大半は封じられている。
単純に生きているからだ。
生体では能力を発揮すると大半の生命力を消費するので、代替えする条件が必要だからだ。

しかし。
不利過ぎる・・・。
今、迫っている脅威はこんな子供では不可避なのだと感じている。

支度をして、様子を窺う為に外を如何う。
ここは・・・建築資材としては、瓦と不透明なガラスが有って、採光は可能だが外見までは無理な条件から直接見るしかない。

少し。引き戸を開けて除いた、外の風景は。

惨状だった。

建築物のいくつかは破壊を受け、まだ逃げ切れず、逃げまどう人を襲っているのは、スプラッシュド・ワイバーンと呼称される大型有翼系爬虫類、ドラゴンとは異なり、倭異種とされる竜族。
特徴的なのは、消化液を噴射する舌の存在。
形状は尖った嘴と三重に並ぶ歯。頭部の後方に聳える固い角。滑らかな皮膚には細かく滑らかな鱗。
巨大な羽の前肢と羽毛の無くて鋭く強力な詰めの後肢。長大の尾。

この魔獣は魔力を有してその翼に飛行能力の魔法を行使して、低速でも低空を飛翔でき、捕食の為に消化液の噴射と爪で捕獲して純粋な肉食を行う。

身体の一部を熔解されて逃げられず痛みと恐怖でどれだけ苦しい思いをしているのか分からぬ人や、すでに頭部や胴体部を分解されて死んでいる人、鍵爪で捕えられて空中に掬い上げられて絶叫を上げている人。
多くが見知っているのが・・・今はこの村には絶望しかない事を映し出していた。

妹は怯えているかと思えば、しっかりとしている。その手は俺と同じく細かく震えていたが。

此処にいても宜しくは無いので、道具小屋に行く事を告げる事にする。
数回の襲撃の余波でかなりのダメージを受けてギシギシと悲鳴を上げているのだから。

直上を何回も飛ぶことで魔力の余波や風圧で圧力破壊が始まり、水車のトルクで決定的な破局が訪れんとしていた。

下着を着る余裕は無く、上着と少しの皮鎧を纏って飛び出す。


動物でもそうだが。幼い子供や幼体なんて柔らかく、咀嚼するも歯ごたえが無い。
消化液を直撃なんてしたら簡単に熔解してしまう。


村を襲ったのは中規模な群れだが、最近この辺りに出没するのを頻繁に目撃されていたのと同様と思われた。
何故ならその群れのリーダーには頭部の二本に走る斜めの傷跡が有り、それが動き始めた俺達の後ろから迫っていたからだ。

大きく口を開いて舌を伸ばして、開口部から消化液が噴射する。

咄嗟にエイリを庇って自分の体で覆うも・・・遮蔽物になんて成り得るほどでも無く柔らかい身体は、あっけなく貫いて、そのまま妹の身体も貫いた。

背中に受けた液を半分は受け止めたが、散乱した飛沫は容赦なく他の部分を直撃していく。
溶解した体から免れた溶解液は妹の首を貫いて、宙に頭が舞う。

幸いなのは即死だった事。しかし、何も判らない事が無念でも・・・あった。

胴体を半分失い、庇った左腕も残ったのは付け根のみ。
右足も下が無く、絡まる様に崩れ落ちる。
その中で、右手は妹の頭を辛うじて受け止める事が出来た。

俺自身の頭も飛沫を受けて脳も半分失い、左目も無くしている。
心臓部が残っているだけだ。

液体に還元していく体の中に蹲りながら、妹の頭を抱きしめる。

嗚咽を上げる事は無く、只管涙を流す。
頭上を飛行して通り過ぎようとしているリーダーのスプラッシュ・ワイバーン。
全く無意識にそれを見上げて・・・。

自分の死と引き換えに、能力の開放。

固有の能力は、呪いの自由制禦。
同時に呪力の応用での術式の発現、これは何回も繰り返された死と誕生の繰り返しで得られた予定調和と純粋な感情の発露。
この時のは対象に目印を刻む事。
後からどの程度の呪いを打ち込むかはその時考える事だ。

見上げた視線のその先に、写り込むワイバーンの腹部に刻み込むのはまるでレーザー加工だった。
腹部に浮かび上がった、一線の 光る赤い色 は次には複雑な魔法陣とケロイド上の物体が生じていた。が。
それを見届ける事無く、俺は死に向かっていった。

最後の力を込めて。

妹の魂を天に向かって届ける。魂の記憶を読み取る、読み込んだ記憶と思いを自分の力を分離して埋め込む。
このままではただのエナルギだけだが・・・。
自身の細胞の一部を使って封印の結晶体に変化して、自分の死に行く魂に同化していく。

完全に液状化して。もう、この場には存在を続けない兄妹。
地面を汚す液体の染み、骨の一部と衣服と肉の固まり。


それを眺める、工具部屋の陰に実体化していた今の俺とエイリ。
死の瞬間を再度、実体を伴って見届ける。

さあ、次は復讐だ。

「辛かったね。ごめんなエイリ」
「ううん。平気だよ」
フルフルと頭を横に振るエイリ。

工具小屋を超えて、大きく転回して同じ軌道に戻るリーダー。
その間にも略奪と破壊と、食事をする群れの個体群。

地上に降り立ち、ぎこちない足裁きで地上を移動して半溶解した人を喰い、家畜を襲い、食欲を満たそうとする多くの固体。

阿鼻叫喚の地上。
睥睨しながら迫って来るリーダーと目が合う。
大きく威嚇の雄たけびを上げつつ消化液の発射体制を取る、その行動を見て「馬鹿の一つ覚えめ」と口にして。

身体に刻んだ紋章と肉塊から一気に広がる植物の部分。
空中を移動していたがタイムラグが無く地上まで伸びる根と幹。ワイバーンの身体から延び茂る枝と葉。
地上に達した根は地面を貫き幹は元から有ったと主張する幹。
ワイバーンの身体は中から飛び出す無数の枝。
葉があっという間に枝から生える。
そして、三本の傷の有るワイバーンの頭部が凄まじい勢いで凄い数が生えて来る。
大きさがまちまちで・・・。

多分、間違いなく苦痛を与える呪いだろう。

花開いたワイバーンの頭は大きく口を開いて独特の鳴き声を挙げる。
その声が周りのワイバーンの行動を変える。
次々と地上に降り立ち、或いは空中を周回するワイバーンの群れ。
声を挙げ続けた口からは球形の物体を消化液と共に、周りのワイバーンに吐き出した。
直撃したらそのままワイバーンに喰い込み、次には内部から根や枝が吹き出して植物に変化する。
幹にはワイバーンの頭部が埋まって。

俺はリーダーのワイバーンの頭に寄って行く。
コイツはこのまま生きていく。
「ザマアだな。喰わなくても済むようになったんだ感謝しろ」
侮辱の視線で眺める。

振り返ると、すぐ傍まで来ているエイリに向かって声を掛ける。
「帰ろう」
「うん」

二人を包む魔法陣、そして消える。

この村は実質失われ、ワイバーン除けの木工製品を名産物として売り出す事でどうにか復興した。

いくつかの奇妙な風習を残して。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ
ファンタジー
少年はひたすら逃げた。突如変わり果てた街で、死を振り撒く異形から。そして逃げた先に待っていたのは絶望では無く、一振りの希望――魔剣――だった。 逃げた先で出会った大男からその希望を託された時、特別ではなかった少年の運命は世界の命運を懸ける程に大きくなっていく。 なれば〝ヒト〟よ知れ、少年の掴む世界の運命を。 銘無き少年は今より、現想神話を紡ぐ英雄とならん。 時き継幻想(ときつげんそう)フララジカ―――世界は緩やかに混ざり合う。 【概要】 主人公・藤咲勇が少女・田中茶奈と出会い、更に多くの人々とも心を交わして成長し、世界を救うまでに至る現代ファンタジー群像劇です。 現代を舞台にしながらも出てくる新しい現象や文化を彼等の目を通してご覧ください。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...