見習いスーツアクターは異世界でガチバトルさせられる

随想アルファ

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始まり。あいつとの再会へPrat1

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一か月前。

洋学浩生、ようがく ひろお。
特撮&アニメの雑学オタク。

俺が親友と呼ぶに相応しかったあいつがこの世から離れた。

俺は林原一、はやしばら はじめ。
俺達の繋がりは、とあるアニメの話から始まった。
そして趣味が合い、しかし微妙に違いが有る事で・・・仲が良かった。
けど。
もういないんだ。

・・・。

寂しさが無いと言ったらウソだ。
しかし、高校を卒業してからは仕事に就いたからには手を抜けなかった。
つまり。
俺はあいつの病変に気が付くのが遅すぎたんだ。
最近妙に太ってきていたけど・・・。

それに。
かつて、あいつと語り合った仕事に付けた。
頑張るっきゃないだろう?

だけど。
もう。
あいつと語り合う事なんて、できやしないんだ。


その日の朝。
雨だった。

「くそ。
 それでも行くしかないか。
 あいつとの約束だしな」

憂鬱感に苛まれつつ俺はワンルームマンションから外へ出る。


いまから思えば。
非日常な予感が有ったんだろうと思う。

今は亡き友へ行ってくると呟いて。
俺は出かけていった。

通勤はチャリだ。
それもママチャリ。色々試した結果の最適解。
職場まで、およそ5キロ。これを遠回りで走る。
持久力を付ける方法として自己流だ。
特に速く走る事は無いので、安全運転。

ただし。
カゴやらジュニアシートやらくっ付けているが、ペットボトルが満載だ。
服にもポケットを増設&強化している。
作業服が最も適していた。
これにもペットボトル。
リュックを背負っていて、中には着替えやタオルとやっぱりペットボトル。

ペットボトルには水が入っている。
量=重さの調節が出来るのと、水分補給が出来るのと補充が簡単で、廃棄も気兼ねが不要の優れモノだ。
大きいのは邪魔に成るので小柄のを複数使っている。
なんだかんだで、前に10から20キロ、後ろも20から25キロ。自分自身にも15キロくらい。
合計では40から70キロくらいか。
まあ、チャリを漕ぐ負荷だ、登坂だとしんどい。
あんまり重いと夏とか脱水で酷い目に遭っているからな・・・。

けど。
世の母親ってすごいと思う。
赤ん坊を背負って後ろに園児を乗せて、しかも荷物を前のカゴに入れてチャリを漕ぐんだ。
子育て、御苦労様です。

今は見慣れたせいで不審がられなくなったけど。
結構、好機の目で見られている。
仕方ないけどな。
出発してすぐに雨が止んだ、ラッキーだった。

さて。
全く何もイベントは起きずに。
職場に付いた。

ここは主に、特撮や刑事ドラマのやられ役やモブや爆発とかの犠牲者役を請け負っているスタントマン育成所兼プロダクションだ。

俺なんてまだまだ端役にもなってないが。

朝礼で社長であり指導役の、おやっさん(そう呼べって言われている)が予定や訓示を短めにして今日が始まる。

大体、半数が撮影で俺らは訓練や雑務をこなす。
これからしばらくはおやっさんのシゴキが続くんだ。
おやっさん。
見た感じほぼ悪役だ。実際それで活躍していたし、悪役なのに渋くてカッコよかった。
だから結構恵まれていると思う。

筋肉質でガタイがスゴイ。威圧感は有るけど、すごく気を使ってくれる優しい人だ。
なのでギャップが凄くて。

けど、メチャメチャ綺麗で可愛い系の奥さんがいるのは意外でもあるし、納得もできる。
背も低くて華奢。なんだけど凄く気が強くて、おやっさんはしりに敷かれているのがまるわかり。
彼女の事は「おっかちゃん」と皆が呼ぶし、俺もそう言っている。
何て言うのか、さっぱりした性格の人で。
腰まである奇麗な長い黒髪を頭のてっぺんで纏めているので少し勿体無い。
あと訛りがあって・・・「だっちゃ」が語尾に付く。マジで。最初は戸惑ったし、あいつには妙に羨ましがられた。
分からんでもないが、それはおやっさんの方に、じゃないだろうか?

「さて、ハジメ。今日は少ししごくぞ、気を引き締めてくれ」
おやっさんは普段は名前をファーストネームで呼ぶ。
「はい」
「内容は組手だが、防具ナシで舗装の上でだ。荒くはせんが、ちゃんと受け身を取れよ」
「は・はい・・・」
うおお。
これは生傷決定だな。
雨の所為でまだ濡れているから滑りやすい、気が余計に抜けないや。

「ま・うまく出来れば、実際の暴漢相手でも決められるからな。簡単な所作なら教えたい者が居たら伝授してやれ」
「は、はい」
元クラスメイト達の顔が浮かぶ。

おやっさん、気を使ってくれているんだな。
高校時代に。
クラスメイトと引率の担任を含めて。
集団失踪事件があった。
俺達が戻って来たのは一週間後。
立ち入り禁止の教室の中に、突然戻った。
消えた時と同じに。

だけど俺たちがあのへんな場所に居たのなんて、僅か数分間、十分も有ったかどうか。
けど。
戻って来たのは七日後。

居なくなった時よりも戻ってからの方が大騒ぎ。
そりゃそうだ。
けど凄かった。
サバイバルスクールに出る寸前で、時間に成っても誰も来ないから様子を見に来たら・・・誰も居なかった。
その後。
突然全員戻って来たんだから。

色々と調べられた。
医学的にも。精神的にも。政治志向的にも。
教育委員会も凄くて、引率の先生たちもかなりの負担だったな。

不思議なのは。
人数が合わない事と、記憶が俺らと皆で食い違う点。
主張したが。
取り合ってくれなかった。

忘れていた事だ。
いや。
思い出さないようにしていた事。

おやっさんは気にしていたんだろうけど、全く感じられなかったな。

そんな事を思っていたからか。

また起きた・・・。
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