見習いスーツアクターは異世界でガチバトルさせられる

随想アルファ

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始まり。あいつとの再会へPrat2

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その時は唐突だった。
まるで、あの日の事をもう一度、するかのように。

それまでは。

師匠のおやっさんとの立ち合い、舗装上での組手。
実戦を意識した・・・そう、撮影の時によくある何らかの施設を使ったコンクリートやタイルの道や階段や・・・一応何らかのプロテクターを服の下に仕込むか着ぐるみならスタッフに委ねる。

おやっさんの構えは少し独特、俺もそれを継承している。
足を肩幅に開いて、半身に。
俺達は右足を引きいて、左手を水平に相手に突き出す。
右手は相手から見えぬ様に体の陰に入れる。

手の形はお互い違う。

おやっさんは攻めの手、左手の指は閉じられてゆっくりと左右に少しだけ振る。
まるでバイバイをするかのように。
これが意外とカチンとくるんだが、気を付けないとリズムを握られてしまう。
右手は握られ親指が外に出ているか中に入っているかで、力を加減している。

対する俺は守りの手、左手の指は広げてジャンケンのパーだ。
指の角度で間合いを図っている、少し視界を犠牲にするが・・・。
右の手は抜きての構えで俺は親指も添えている、受けの手として最初に使うからだ。
両膝は少し曲げて姿勢を下げている。
踏み込みかバックステップの為にね。

「先に行くぞ。いつもの通りに身を軽くしてな!!」
言葉が終わる前に、いや、同時に仕掛けて来た。
左腕の掌底が迫る。
それを左手で軽く腕へと当てて逸らす。
同時に右手を広げるとすぐにおやっさんの右拳が脇腹をえぐりに来るのを抑える。

一瞬の硬直。

俺はバックステップで蹴りに備える。

離れると。
「うん。早くなったが、状況判断がまだだな」

姿勢を解いておやっさんの顔に笑みが浮かぶ。
あこれ、ヤバい。
次は本気出すつもりだ・・・。

「ではっ此方から行きます!」
「応!!」
少しでもダメージをコントロールするにはこっちから行かないと・・・。

大きく左手を振って右からの突き。
上に撥ねられて姿勢を崩される、が、想定の中。
一瞬姿勢を低くする。
頭の上すれすれをおやっさんの拳が過ぎ去る。
撥ね上げられた右腕の肘を曲げつつ振り下ろすと同時に右膝を持ち上げる。
防御と攻撃を同時にするんだが。
見切られた。

距離を空けられて、おやっさんは満足そうに口角を歪ませて右腕を曲げ、左の人差し指で肘の辺りを指す。

僅かにかすっただけか・・・。

「もう一丁!」
今度はダメージ覚悟で突っ込む。
んだが・・・。


アレ?
地面が近づいて来る。
踏み出した右膝が頽れた?
知らない内にダメージを食らった??
いや・・・。
そんな距離でも無いハズ。

見ている風景は暗転。

これ・・・気絶するんかいな・・・。
オイオイ。
まさか脱水か。
それにしてはスローモーション過ぎるだろ。

幾らなんでもこれは・・・まさか・・・違う事が起きている・・・のか?

暗闇の中、はっきりしている意識。
直前に見たのは目の前にいっぱいに迫ってきてた地面。
「小石の形がとても良く覚えているんだが」
声に出したが、反響もしないし耳にも届かない。
ああ、思い出した。
ちょうど、深夜に起きたら雪が降ってて凄く静かだった事を。
そっくりだ。

いや。現実逃避している場合じゃない。

それに。
急に開けた風景に驚いている・・・。
視界いっぱいに、星だ。

またたいていないぞ?

今度は急に流れ出した。
もう、光線が飛んで来ている感じだ。

風圧も自分の加速感も受けていないし、けど呼吸は普通だな。思考も出来ている。


暫くその光景は続いた。
時々、コースが変わって?・・・流れる角度が変化した事が数回。
終盤になったからか、ボヤアッとした丸い輪郭の結構大きな、光・・・眩しくは無くて、輪郭だけが見える状態。

・・・。
何で、こんなに落ち着いているんだろう?

ああ。
そうか。
初めてじゃないからか。・・・この感じが。

いつ。どこで。・・・だっけ?
いや・・・。
忘れる訳が無いじゃないか。
あの日。

高校の時。
サバイバルスクール当日に起きた一週間の集団失踪事件。
参加者が全員の。


数人の記憶が他の連中と違う事。
その中に俺と浩生が含まれる。
後日談も。

記憶から消えた存在、強灰真技。
だけど、彼は俺達の帰還する三日前に唐突に学校に現れていた。
不思議なんだが。
彼は全く驚かれずに自主退学の手続きを行い、家も引き払い、何処かへ去っていった。
いや。ちゃんと引っ越しをするんで市役所で事務処理はなされている。

更に。
その前後、俺達との合流を避けて、何かが起きていたらしい。
事故というには余りに不審な現象が起きていたから。

大岡典江・・・、酷い怪我を負って発見されて。
治療を受けてからは人が変わってしまった。
元に戻ったともいえる。

それまでひどく荒れていた生活だったのに、全くなかった事にしている。
親やクラスメイト達も・・・だ。

それも記憶はおろか補導された記録もだ。

記憶の混沌もここに関わっていると俺と浩生は考えている。
何が起きているのか。
起きたのかは、やはり不明だけど。


ところで。
俺の向かう先は丸い輪郭の中央なんかでは無くて。
だいぶ、端っこに向かっているな。
早回しの動画、よりもコマ送りに近いかな。
川?・・・水は流れていないが雰囲気的に。
両側に無数の石や岩がゴロゴロしている。
相変わらず距離感とかピントの外れた光景だ。

そして。
暗闇に浮かび上がった物が。
見えて来た。

なにか、四角く切り取られた・・・森や・・・山とか・・・なんか大地ってイメージのが。

どうして。
あんなに四角四角してんだよ!
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