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久瀬という男
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男が着いた頃には数台のパトカーが到着し、マスコミや野次馬が殺到していた。
「やれやれ…」
男はため息をついて「あー警察です、ちょっと通して」と言って波を掻き分けて進んだ。
そして現場に立ち入ろうとしたその時だった。
「ちょっと!!ここは立入禁止です!!」
民間人を抑えていた警察官が彼を引き止める。
すると男は面倒くさそうに胸ポケットからタバコ…
「おっと、これじゃねぇな」
警察手帳を見せた。
「警部でしたか、これは失礼しました」
彼は黄色いテープを潜り抜けて現場へ入ると、鑑識が路地裏で吐いているのが見えた。
(ありゃあ新人だな…)
男の名前は久瀬 孝宏、32歳。
警視庁捜査一課の警部だ。
彼にも家族はいたが、今は離婚して別居中。
ふと先に来ていた他の刑事と目が合った。
「………」
向けられるのは鋭い目つきのみ。
歓迎されていないことを改めて悟る。
(しっかし、犯人がこうもあっさり捕まるとはな…。俺達の努力はなんだったんだろうな?)
そう思いながら階段を上り、現場へと着く。
「ひゃ~こりゃあまた派手にやってくれたな」
吊るされた死体は既に腐敗しきっており、至る所から虫がひょっこりとしていた。
「久瀬警部ですね」
突然呼ばれる声に反応し、振り返るとそこには大久保巡査部長がいた。
彼は階級的にも経験的にも久瀬の後輩にあたる。
「やめろよ、俺だって昇格したばかりなんだ。その呼び名はむずがゆい」
「そうですか」
穏やかな表情を変え、話し始める。
「被害者の名前は現場にあったものから推定して三隅 友樹、無職男性。彼は事件の1週間前から失踪していたそうです」
「…ふーん、で?現場にあった物って?」
「彼のスマホです。事件までの経緯を辿ると―…」
まず被害者のスマホから「斧を持った仮面をつけた女に襲われている」という通報を受ける。
そこへ警官2名が現場へ駆けつける。
しかし被害者は既にこの状態で殺されていて、そして加害者と考えられる女も気絶していた。
「―という感じですね」
「へぇー、そっか」
久瀬は釈然としなかった。
「やっぱり変…ですよね」
「うん、明らかにおかしいね」
(死体を見る限り、腐敗しきっているから彼はここ最近殺されたという線はないだろうし、通報したのも誰なのか分からない上、犯人である彼女はなぜ気絶していたのかもわからない)
「でも結果として犯人は捕まったのですから万事解決でいいんじゃないですか?」
「…そうか?本当にそうだといいんだがな」
なにより一番不可解なことが久瀬にはある。
(どうして通報者は犯人が女だと分かったんだ?)
事件の発端は3年前、荒川区の河川敷にて女性の死体が漂着してきた状態で発見されたことだった。
その死体を検死に回したところ、引き裂かれた腹部から…
仮面が出てきた。
それから事件は連続して増していき、気づけば捜査に進展がなに1つないまま被害件数は50件を上回るようになっていた。
そんな事件が昨日、あっさり解決した。
逮捕された犯人も容疑を認め、恐らく彼女には終身刑、良くても死刑が言い渡されることだろう。
血眼になって捜査をしていた自分達はなんだったのだろうか。
他の刑事たちは事件が終わったという安堵の感情と努力の虚しさを感じていた。
「大久保、お前どう思う?」
「正直に言うといまいちパッとしない終わり方だと思いますねぇ…」
「同感だな。俺もだよ」
一息溜めて久瀬が話す。
「こりゃあ刑事の勘ってヤツだがよぉ…」
「はい…」
「まだ事件は終わっちゃあいねぇ…」
「やれやれ…」
男はため息をついて「あー警察です、ちょっと通して」と言って波を掻き分けて進んだ。
そして現場に立ち入ろうとしたその時だった。
「ちょっと!!ここは立入禁止です!!」
民間人を抑えていた警察官が彼を引き止める。
すると男は面倒くさそうに胸ポケットからタバコ…
「おっと、これじゃねぇな」
警察手帳を見せた。
「警部でしたか、これは失礼しました」
彼は黄色いテープを潜り抜けて現場へ入ると、鑑識が路地裏で吐いているのが見えた。
(ありゃあ新人だな…)
男の名前は久瀬 孝宏、32歳。
警視庁捜査一課の警部だ。
彼にも家族はいたが、今は離婚して別居中。
ふと先に来ていた他の刑事と目が合った。
「………」
向けられるのは鋭い目つきのみ。
歓迎されていないことを改めて悟る。
(しっかし、犯人がこうもあっさり捕まるとはな…。俺達の努力はなんだったんだろうな?)
そう思いながら階段を上り、現場へと着く。
「ひゃ~こりゃあまた派手にやってくれたな」
吊るされた死体は既に腐敗しきっており、至る所から虫がひょっこりとしていた。
「久瀬警部ですね」
突然呼ばれる声に反応し、振り返るとそこには大久保巡査部長がいた。
彼は階級的にも経験的にも久瀬の後輩にあたる。
「やめろよ、俺だって昇格したばかりなんだ。その呼び名はむずがゆい」
「そうですか」
穏やかな表情を変え、話し始める。
「被害者の名前は現場にあったものから推定して三隅 友樹、無職男性。彼は事件の1週間前から失踪していたそうです」
「…ふーん、で?現場にあった物って?」
「彼のスマホです。事件までの経緯を辿ると―…」
まず被害者のスマホから「斧を持った仮面をつけた女に襲われている」という通報を受ける。
そこへ警官2名が現場へ駆けつける。
しかし被害者は既にこの状態で殺されていて、そして加害者と考えられる女も気絶していた。
「―という感じですね」
「へぇー、そっか」
久瀬は釈然としなかった。
「やっぱり変…ですよね」
「うん、明らかにおかしいね」
(死体を見る限り、腐敗しきっているから彼はここ最近殺されたという線はないだろうし、通報したのも誰なのか分からない上、犯人である彼女はなぜ気絶していたのかもわからない)
「でも結果として犯人は捕まったのですから万事解決でいいんじゃないですか?」
「…そうか?本当にそうだといいんだがな」
なにより一番不可解なことが久瀬にはある。
(どうして通報者は犯人が女だと分かったんだ?)
事件の発端は3年前、荒川区の河川敷にて女性の死体が漂着してきた状態で発見されたことだった。
その死体を検死に回したところ、引き裂かれた腹部から…
仮面が出てきた。
それから事件は連続して増していき、気づけば捜査に進展がなに1つないまま被害件数は50件を上回るようになっていた。
そんな事件が昨日、あっさり解決した。
逮捕された犯人も容疑を認め、恐らく彼女には終身刑、良くても死刑が言い渡されることだろう。
血眼になって捜査をしていた自分達はなんだったのだろうか。
他の刑事たちは事件が終わったという安堵の感情と努力の虚しさを感じていた。
「大久保、お前どう思う?」
「正直に言うといまいちパッとしない終わり方だと思いますねぇ…」
「同感だな。俺もだよ」
一息溜めて久瀬が話す。
「こりゃあ刑事の勘ってヤツだがよぉ…」
「はい…」
「まだ事件は終わっちゃあいねぇ…」
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