大嫌いな双子の妹と転生したら、悪役令嬢に仕立て上げられました。

美杉日和。(旧美杉。)

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第一章

第十四話 思惑とドレス

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 王家主催の夜会は、年に4回ほどある。

 私は基本的に顔だけ出して、すぐ帰るというのを繰り返していた。

 そのため、まともに参加するのは今回が初めてと言ってもいいところだろう。

 貴族主催のお茶会などは頻繁にあるのだが、もっともこちらの方はほぼ不参加だ。

 今回の婚約破棄からの、父の夜会出席命令がなければ今日の夜会もいつも通り顔だけ出して帰れたのに。

 さすがにそういうワケにはいかない。

 父と一度話してみたらという母の言葉があっても、仕事一筋であの怖い顔の父と話す勇気は湧かずに今日に至る。

 グレンがチェリーを迎えに来る馬車に一緒に乗って行けばと母には言われたが、それだけはきっぱりお断りした。

 今日もまた馬車に一人乗ることになるが、三人よりはマシね。

 それよりもまず差し当たっての問題が目の前にあった。


「ん-困ったわね」


 いくつかのドレスをベッドの上に広げ、私は頭を抱える。

 この前の買い物の時に母の勧めでドレスを数着作ったものの、やはり今夜の夜会には間に合わなかっのだ。

 仕方なく既製品も購入したのだが、やはりオーダーメイドと見比べると見劣りしてしまう。

 王家主催の夜会で、しかも婚約者を探そう!

 なんてイベントでもなければ、ある程度テキトーでもいいのに。

 そう。今まではずっと、挨拶だけだったから既製品のドレスで済ませてきてしまっていたのだ。

 ん-。さすがに今日はなぁ。


「でも、この前の昼食会で着たドレスをまた着て行ったら、チェリーにどんな嫌味を言われることか」


 ただでさえ、今日は周りの反応が怖いのに。

 わざわざ揚げ足を取られると分かってることなど、絶対にしたくはない。

 あーあ。これなら、常日頃からルカの言うようにちゃんと令嬢としての最低限の持ち物は持っておくべきだったわね。

 特に必要ないし、買い物も行きたくないし~なんて、令嬢としてはかなりな失格よね。


「そうは言っても、今日がその当日なのだから仕方ないわね。とりあえず既製品のドレスにこの前買った装飾品を付ければいっか」

「アイリスお嬢様ー!!」

「ルカ、どーしたの? ノックもなしにいきなり入ってきたら、びっくりするじゃない」

 
 息を切らしながら、大きな白い箱を抱えたルカが部屋に飛び込んでくる。


「申し訳ありません。ですが、グレン様からお嬢様たちにこれが届きまして」

「んんん? グレンから? 私にじゃなくてチェリーへの贈り物でしょ、どーせ」


 ルカは抱えていた箱を、ベッドの上に置いた。

 白い箱に金の模様の絵が描かれた箱に、赤いリボンがかかっている。

 婚約をしていた時だって、グレンから贈り物などもらったことはないに。

 元婚約者と現婚約者を間違えるなんて、どうなってるのかしら。

 店がいけないのか、持ってきた人がいけないのか。

 とにかくルカに、チェリーの部屋まで持って言って貰わないとダメね。


「そうではなくて、アイリスお嬢様とチェリーお嬢様のお二人に届いたんです」

「私たち二人にそれぞれ?」

「そうなんですよ。チェリ-様はご自分のだけではないことに、とても腹を立てていたようです。ただ奥様からの指示で、わたくしが急いでお持ちしました」


 自分の手柄だから誉めてと言わんばかりに満面の笑顔を浮かべるルカがかわいい。


「ありがとう、ルカ。でもグレンからなんて、一体何かしら」


 リボンを解き、箱を開けると1枚のメッセージカードが入っていた。


『この前の謝罪も兼ねて、君がこの先輝くことを祈って』

「はぁ? これを着て来いってこと? 私はあなたの女でもないのよ。まったく……これはさすがにチェリーも怒るでしょうね」

「でもアイリスお嬢様、ドレスに罪はないですから」

「それはそうだけど」


 確かにモノには罪はないけど。

 そういう問題ではない気がする。

 本来、貴族間においてドレスはよほど親しい人の何かの記念か、婚約者などにしか送ることはない。

 それをわざわざ婚約者のチェリーと、その姉でしかない私に送ったのだ。

 チェリーからしたら、これ以上におもしろくないことはないだろう。

 母が手早くルカに箱を渡したのは、チェリーが怒りのあまりドレスを台無しにしてしまうと思ったからに違いない。

 それにしてもいくら謝罪とはいえ、グレンは私にドレスを送ってなにがしたいの。

 全然、この前からのグレンの行動は読めない。

 私を悪役令嬢に仕立て上げたかったのは、チェリーだけだったようなことも言っていたし。

 信用できないというか、胡散臭い。

 本の読みすぎじゃないけど、グレンのキャラって裏で工作している腹黒インテリメガネって感じなのよね。


「まぁ、すごい。これは、最近出たばかりのフィッシュテールドレスですよ。しかも、オーダーメイドの。さすが、公爵家は違いますねー。他の令嬢もこのドレスを手に入れるのに半年以上待ちなのだと聞きましたよ」


 ルカは考え込む私を気にすることなく、中からドレスを取り出した。

 ドレスは濃紺からゆっくりと朝焼けのような茜色に変化するグラデーションの一見ロングに見える。

 そしてそれに合わせた編み上げのヒールが入っていた。

 ルカが取り出したドレスを合わせて、私は鏡の前に立つ。

 この一枚だけでいくらするのだろう。

 シンプルに見えるものの、一枚のシルクを染め上げているドレスだ。

 考えただけでも、恐ろしい。


「でもこれ、私着ていくの? グレン。嫌がらせにもほどがあるわ」

「そんなことないですよ。王都では今一番の流行の最先端ですし、足の細いソフィアお嬢様くらいしか着こなせない一品ですよ。しかも、フルオーダー品なんて」


 公爵家の急ぎの品となれば、どこの貴族を差し置いても先に作られる。

 しかし、なぜよりによってこのデザインなのだろう。

 鎖骨が見えるくらいの胸の開きはまだ我慢出来る。

 問題はこのドレスの短さだ。

 前丈が膝上になっていて、後ろが床につくか付かないかの長さなのだ。


「足……あし……」


 思わず頭を抱える。

 高校の時ですら、スカートはギリギリ膝が見えるか見えないかの長さだったのに、これはそれよりはるかに短い。

 こんな露出の多い服で、どうしろと言うのだろう。

 いくらヒールの編み上げの部分が膝まで来るといっても、こんな紐では何も隠せやしない。

 しかも裾の部分の茜色が、思い出したくもない人を連想させる。


「まさかね」

「アイリスお嬢様なら、絶対に似合うと思って送ってくださったのですよ」

「そういう問題じゃないと思うんだけど」

「あ、でも、この色、なんだか王弟殿下様の瞳の色に似ていますよね」

「よく見ていたわね。なんか嫌だわ」

「お嬢様はああいう感じの方はお嫌いですか?」

「あんな風に女の人を侍らかせて喜んでいる人なんて、好きなわけないでしょ」

「まあまあ、そんな話は置いておいて、とにかくお着替えしましょう。今日は目一杯、ルカ頑張りますから」


 ニコニコするルカを横目に、まだ昼前なのにこれから何時間かかるのだろうとうんざりしたのは秘密だ。
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