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第一章
閑話休題 侍女任命は突然①(ルカ視点)
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昼下がりの午後いつものように私、ルカは洗濯物を干す作業に取り掛かる。
午前中に集まった洗濯物たちを洗い、やっと干す作業に取り掛かるところだ。
このお屋敷のご家族様は全員で五名。
武官を務める侯爵様に、侯爵夫人。そして二人の美しい姉妹。
長女様は月のように聡明で物静かな美しさのあるアイリス様。
次女様は天真爛漫で、花の妖精のような愛らしさのあるチェリー様。
私もそれほど貴族の方を見たことはなくっても、お二人がどれだけ美しいか分かる。
この屋敷で住み込みで働くようになってまだ二年だが、とても充実していた。
「ルカ、ルカはどこにいますか?」
お屋敷の方から、大きな声を出して侍女長がやってくるのが見えた。
こんな時間に、私に何の用かしら。
しかもあんなに大きな声。
いつも静かで厳しい侍女長にしては、かなり珍しいことだった。
もしかして、私が何か大変なミスをしてしまったとか?
怒られる。どうしよう……。
「ルカ、ルカ!」
でも、出ていかない方がもっと怒られるわね。
高く干した洗濯物たちの間を抜け、私は声を上げた。
「はい、侍女長。ルカはここにおります」
「ああ、よかった。探したのよ」
「申し訳ありません。たくさんの洗濯物たちに邪魔されて、中々出てこれませんでした」
「まぁいいわ」
「あの、それで私に何か御用でしょうか」
どうか怒られませんように。
私は心の中で、手を組みながら祈った。
「それが本館で人が足りなくなってしまってね。急で悪いんだけど、今日からアイリス様付きの侍女に昇格することなったから」
「え? ですが、私はなんの身分もないのですよ。それがいきなりお嬢様付きの侍女にだなんて」
基本的に、お嬢様付きの侍女になるのはある程度の身分保障が必要なのだ。
誰かの紹介やどこかの貴族との遠縁など、しっかりとした者でなければなれない。
しかし私は平民。
しかも片田舎の村娘でしかなく、ここへも出稼ぎのために就職した。
ここに就職するだけでも、村長の推薦状が必要だったりととても大変だったのを覚えている。
それでもなれたのは、屋敷でほぼ一番下の身分である洗濯女。
ほぼ雑用係だ。
「それでも、よ。この際、身分のことは仕方ないわ。それに、あなたはまじめだからと推薦が入ったの」
「いや、でもしかし。お嬢様付きの侍女は、一番の人気部署ではないですか。ただの雑用係だった私が務められるほど、簡単ではないはずです」
「……それもそうなんだけど、そうもいかないのよ」
ただ困ったような表情の侍女長。
話の内容からしてもこの件が特殊であり、めんどくさい案件なのは分かっている。
でもだとしてもだ。
私にも一応のプライドというものがある。
出来もしない仕事を、出来る顔をしてするなんてお嬢様に対して失礼すぎるわ。
「アイリス様は基本的に何でもご自分でやられる方だし、先の侍女から引継ぎもあるから大丈夫よ。あなたなら出来るわ」
「ですが……」
やってみたいとは思わないことはない。
だってこれは、一生に一度あるかないかのチャンスだから。
私みたいな田舎者では絶対に就職出来ない先だもの。
「お給金は今の職からの昇格なので、金貨が一枚ほど増えるのだけどどうかしら」
「き、金貨一枚!?」
今の給料の約1.5倍。
今は住み込みでほとんど自分にお金がかからないとはいえ、給料のほとんどが仕送りにきえてしまっていた。
もし金貨一枚あれば、自分の買いたいものも買った上に仕送りも増やせる。
でもお金で判断すると絶対に失敗するって。
田舎を出る時に、甘い言葉をかけられても絶対に信じちゃだめだって。
お母さんたちに言われたじゃないの。
だから、だめ。
絶対に、だめ。
私は私は……。
「それ以外でも、アイリス様の覚えがよければ街に連れて行ってもらえることもあるのよ」
「やります! 私やります! ぜひ、やらせて下さい」
「ああ、良かった。あなたなら引き受けてくれると思ってたのよ。他に誰もいなかったから助かったわ」
「……え」
拝啓お母さん。
甘い言葉につられてしまったルカは、もしかするとピンチかもしれません。
午前中に集まった洗濯物たちを洗い、やっと干す作業に取り掛かるところだ。
このお屋敷のご家族様は全員で五名。
武官を務める侯爵様に、侯爵夫人。そして二人の美しい姉妹。
長女様は月のように聡明で物静かな美しさのあるアイリス様。
次女様は天真爛漫で、花の妖精のような愛らしさのあるチェリー様。
私もそれほど貴族の方を見たことはなくっても、お二人がどれだけ美しいか分かる。
この屋敷で住み込みで働くようになってまだ二年だが、とても充実していた。
「ルカ、ルカはどこにいますか?」
お屋敷の方から、大きな声を出して侍女長がやってくるのが見えた。
こんな時間に、私に何の用かしら。
しかもあんなに大きな声。
いつも静かで厳しい侍女長にしては、かなり珍しいことだった。
もしかして、私が何か大変なミスをしてしまったとか?
怒られる。どうしよう……。
「ルカ、ルカ!」
でも、出ていかない方がもっと怒られるわね。
高く干した洗濯物たちの間を抜け、私は声を上げた。
「はい、侍女長。ルカはここにおります」
「ああ、よかった。探したのよ」
「申し訳ありません。たくさんの洗濯物たちに邪魔されて、中々出てこれませんでした」
「まぁいいわ」
「あの、それで私に何か御用でしょうか」
どうか怒られませんように。
私は心の中で、手を組みながら祈った。
「それが本館で人が足りなくなってしまってね。急で悪いんだけど、今日からアイリス様付きの侍女に昇格することなったから」
「え? ですが、私はなんの身分もないのですよ。それがいきなりお嬢様付きの侍女にだなんて」
基本的に、お嬢様付きの侍女になるのはある程度の身分保障が必要なのだ。
誰かの紹介やどこかの貴族との遠縁など、しっかりとした者でなければなれない。
しかし私は平民。
しかも片田舎の村娘でしかなく、ここへも出稼ぎのために就職した。
ここに就職するだけでも、村長の推薦状が必要だったりととても大変だったのを覚えている。
それでもなれたのは、屋敷でほぼ一番下の身分である洗濯女。
ほぼ雑用係だ。
「それでも、よ。この際、身分のことは仕方ないわ。それに、あなたはまじめだからと推薦が入ったの」
「いや、でもしかし。お嬢様付きの侍女は、一番の人気部署ではないですか。ただの雑用係だった私が務められるほど、簡単ではないはずです」
「……それもそうなんだけど、そうもいかないのよ」
ただ困ったような表情の侍女長。
話の内容からしてもこの件が特殊であり、めんどくさい案件なのは分かっている。
でもだとしてもだ。
私にも一応のプライドというものがある。
出来もしない仕事を、出来る顔をしてするなんてお嬢様に対して失礼すぎるわ。
「アイリス様は基本的に何でもご自分でやられる方だし、先の侍女から引継ぎもあるから大丈夫よ。あなたなら出来るわ」
「ですが……」
やってみたいとは思わないことはない。
だってこれは、一生に一度あるかないかのチャンスだから。
私みたいな田舎者では絶対に就職出来ない先だもの。
「お給金は今の職からの昇格なので、金貨が一枚ほど増えるのだけどどうかしら」
「き、金貨一枚!?」
今の給料の約1.5倍。
今は住み込みでほとんど自分にお金がかからないとはいえ、給料のほとんどが仕送りにきえてしまっていた。
もし金貨一枚あれば、自分の買いたいものも買った上に仕送りも増やせる。
でもお金で判断すると絶対に失敗するって。
田舎を出る時に、甘い言葉をかけられても絶対に信じちゃだめだって。
お母さんたちに言われたじゃないの。
だから、だめ。
絶対に、だめ。
私は私は……。
「それ以外でも、アイリス様の覚えがよければ街に連れて行ってもらえることもあるのよ」
「やります! 私やります! ぜひ、やらせて下さい」
「ああ、良かった。あなたなら引き受けてくれると思ってたのよ。他に誰もいなかったから助かったわ」
「……え」
拝啓お母さん。
甘い言葉につられてしまったルカは、もしかするとピンチかもしれません。
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