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第三章
第四十ニ話 初めての食材たち
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なんとかフライパン三つ分の肉を切り分けたところで肉に塩とこしょうを振り、揉みこむ。
そして熱していた油の中ににんにくみたいなものを丸ごと入れる。
みたいなというのは、味はとても似ているのだが名前がこの世界では違うらしい。
しかし食材の名前を教えてもらったのだが全く頭に入ってこなかったので、覚えるのは早々に諦めることにした。
「すごーい。なんかいい匂いですね、アイリスお嬢様」
「本当ね。これを料理に使うことはよくあるけど、こんな丸ごと入れるなんて私も初めて見るわ。でも、とても食欲をそそる匂いね」
「これはとても簡単で、ここに切った肉とキノコを入れて混ぜながら火が通れば完成です。みんなに出す前に味見してみます?」
熱々のアヒージョをやや深めの器に盛りつけながら、二人に声をかけた。
出来立てを食べられるのは、作った人だけの特権だ。
「そうね、せっかくだから一口食べましょう」
アンジーさんとルカはコクコクと頷いた後、フォークでコカトリスの肉を刺す。
二人ともこれが魔物の肉だということをすっかり忘れているようで、そのままアヒージョを口に入れた。
「何これ。これはなんの肉だった? 口に入れるとこの油? タレ? の匂いが口中に広がって、ピリリと後を引くこの味ー。やだ、お酒欲しい」
「お嬢様、すごいです。こんな美味しいもの、ルカは初めて食べました。辛いのに、すごくおいしいです」
「この油にパンを付けても美味しいのよ」
どうやらアヒージョは成功のようだ。
次は煮込みとスープの用意をしてから、残りのコカトリスの肉を焼いてしまおう。
「ルカ、これをみんなの元に届けてきて」
「はい、お嬢様」
とりあえず、深皿六皿分あるからしばらくは大丈夫だろう。
「アンジーさんは残りのコカトリスに塩だけ振って焼いてもらってもいいですか? 皮を先に焼いて、パリパリになるまで焼いてしまって下さい。私は煮込み料理に取りかかります」
「分かったわ」
寸胴鍋に水と人参や白菜のような葉物を切って入れ、火にかける。
残っている肉は二種類だ。
そのうち、やや臭みのあり硬そうな肉を手に取る。
このまま調理しても美味しくないだろうから、とりあえず肉をみじん切りにする。
切った肉にすりおろしたショウガとネギ、卵の黄身を入れ、塩とコショウを加えて混ぜればつみれの完成。
そのつみれと少量のお酒を入れれば、つみれ汁の出来上がりだ。
「大変です、もうなくなりました!」
出て行ったばかりのルカが、空のお皿を抱えて帰ってくる。
「えええ。早すぎだし」
冒険者たちの食べるスピードがこんなにも早かったなんで、想定外だ。
寸胴鍋の中はまだつみれを入れたばかりだから、すぐには出せない。
そうなると先にアンジーさんの焼いている肉を出さないと。
「アンジーさん焼けましたか?」
「ええ、これはお皿に盛っていいのかしら」
「はい。盛ってから味付けしますので、次を焼き始めて下さい」
「分かったわ」
アンジーさんの焼いた肉に、別で作っておいた焦がしネギ油を乗せる。
ジュっといういい音と、香ばしい匂いが広がっていく。
「肉はあと二皿ほどあるからケンカしないように言ってきてね」
両手で抱えるほどの大きなお皿があと二つもあるのだから、これを食べる頃にはだいぶお腹が膨れると思うけど。
残りのコカトリス肉を焼きながら、つみれ汁の味見。
野菜はすっかり柔らかくなっていて、つみれからも出汁が出ている。
「んー、これはこれで美味しいけど、みんなにはちょっと薄いかな」
濃い味の物を二品出したので薄くてもいいんだけど、味噌とか醤油があればもっと美味しくなるのに。
だけどそうなると、今度は米が食べたくなる。
この世界にも米はあるのかな。
恋しくなっても、どうしようもないのに。
なんか、ね。
戻りたいなんて一度も思ったことなかったのに、変な感じだわ。
「アイリスちゃん、大丈夫? 少し疲れた?」
「あ、いえ。大丈夫です。これ、味が薄くて何か調味料はないですかね?」
「そうね、塩とコショウではないものなら、ここにあるけど。みんながお土産に他の地域から買ってきたものばかりで、使ったことはほとんどないのよね」
アンジーさんが指さした棚には、瓶に入った色とりどりの香辛料が置かれている。
どれが何かも見ても分からないので、一つ一つ開けてはまず匂いを確認することにした。
その中の黒い液体を開けると、やや魚の匂いのするものがある。
一滴、手のひらに垂らして味見してみる。
「ん、魚っぽい醤油……」
「しょうゆ?」
「そういう調味料です。すこし癖があるけど、つみれ汁に入れるなら大丈夫かな」
そのままスプーン一杯分入れて、かき混ぜる。
「お嬢様、あの人たち食べるスピードがおかしいんですけど。先ほどの焼いたお肉なんて、取り分けたら一瞬ですよ。すでにお酒も飲み始めちゃってますし」
「あー」
向こうに行かなくても状況が目に浮かぶ。
きっと宴会のようになっているんだろうな。
「残りのコカトリスも焼けたから、これとつみれ汁を合わせて持って行きましょう」
「そうね、とりあえず届けましょう」
一旦、全ての火を止めると、出来上がった物を両手に持ち配膳を始めた。
そして熱していた油の中ににんにくみたいなものを丸ごと入れる。
みたいなというのは、味はとても似ているのだが名前がこの世界では違うらしい。
しかし食材の名前を教えてもらったのだが全く頭に入ってこなかったので、覚えるのは早々に諦めることにした。
「すごーい。なんかいい匂いですね、アイリスお嬢様」
「本当ね。これを料理に使うことはよくあるけど、こんな丸ごと入れるなんて私も初めて見るわ。でも、とても食欲をそそる匂いね」
「これはとても簡単で、ここに切った肉とキノコを入れて混ぜながら火が通れば完成です。みんなに出す前に味見してみます?」
熱々のアヒージョをやや深めの器に盛りつけながら、二人に声をかけた。
出来立てを食べられるのは、作った人だけの特権だ。
「そうね、せっかくだから一口食べましょう」
アンジーさんとルカはコクコクと頷いた後、フォークでコカトリスの肉を刺す。
二人ともこれが魔物の肉だということをすっかり忘れているようで、そのままアヒージョを口に入れた。
「何これ。これはなんの肉だった? 口に入れるとこの油? タレ? の匂いが口中に広がって、ピリリと後を引くこの味ー。やだ、お酒欲しい」
「お嬢様、すごいです。こんな美味しいもの、ルカは初めて食べました。辛いのに、すごくおいしいです」
「この油にパンを付けても美味しいのよ」
どうやらアヒージョは成功のようだ。
次は煮込みとスープの用意をしてから、残りのコカトリスの肉を焼いてしまおう。
「ルカ、これをみんなの元に届けてきて」
「はい、お嬢様」
とりあえず、深皿六皿分あるからしばらくは大丈夫だろう。
「アンジーさんは残りのコカトリスに塩だけ振って焼いてもらってもいいですか? 皮を先に焼いて、パリパリになるまで焼いてしまって下さい。私は煮込み料理に取りかかります」
「分かったわ」
寸胴鍋に水と人参や白菜のような葉物を切って入れ、火にかける。
残っている肉は二種類だ。
そのうち、やや臭みのあり硬そうな肉を手に取る。
このまま調理しても美味しくないだろうから、とりあえず肉をみじん切りにする。
切った肉にすりおろしたショウガとネギ、卵の黄身を入れ、塩とコショウを加えて混ぜればつみれの完成。
そのつみれと少量のお酒を入れれば、つみれ汁の出来上がりだ。
「大変です、もうなくなりました!」
出て行ったばかりのルカが、空のお皿を抱えて帰ってくる。
「えええ。早すぎだし」
冒険者たちの食べるスピードがこんなにも早かったなんで、想定外だ。
寸胴鍋の中はまだつみれを入れたばかりだから、すぐには出せない。
そうなると先にアンジーさんの焼いている肉を出さないと。
「アンジーさん焼けましたか?」
「ええ、これはお皿に盛っていいのかしら」
「はい。盛ってから味付けしますので、次を焼き始めて下さい」
「分かったわ」
アンジーさんの焼いた肉に、別で作っておいた焦がしネギ油を乗せる。
ジュっといういい音と、香ばしい匂いが広がっていく。
「肉はあと二皿ほどあるからケンカしないように言ってきてね」
両手で抱えるほどの大きなお皿があと二つもあるのだから、これを食べる頃にはだいぶお腹が膨れると思うけど。
残りのコカトリス肉を焼きながら、つみれ汁の味見。
野菜はすっかり柔らかくなっていて、つみれからも出汁が出ている。
「んー、これはこれで美味しいけど、みんなにはちょっと薄いかな」
濃い味の物を二品出したので薄くてもいいんだけど、味噌とか醤油があればもっと美味しくなるのに。
だけどそうなると、今度は米が食べたくなる。
この世界にも米はあるのかな。
恋しくなっても、どうしようもないのに。
なんか、ね。
戻りたいなんて一度も思ったことなかったのに、変な感じだわ。
「アイリスちゃん、大丈夫? 少し疲れた?」
「あ、いえ。大丈夫です。これ、味が薄くて何か調味料はないですかね?」
「そうね、塩とコショウではないものなら、ここにあるけど。みんながお土産に他の地域から買ってきたものばかりで、使ったことはほとんどないのよね」
アンジーさんが指さした棚には、瓶に入った色とりどりの香辛料が置かれている。
どれが何かも見ても分からないので、一つ一つ開けてはまず匂いを確認することにした。
その中の黒い液体を開けると、やや魚の匂いのするものがある。
一滴、手のひらに垂らして味見してみる。
「ん、魚っぽい醤油……」
「しょうゆ?」
「そういう調味料です。すこし癖があるけど、つみれ汁に入れるなら大丈夫かな」
そのままスプーン一杯分入れて、かき混ぜる。
「お嬢様、あの人たち食べるスピードがおかしいんですけど。先ほどの焼いたお肉なんて、取り分けたら一瞬ですよ。すでにお酒も飲み始めちゃってますし」
「あー」
向こうに行かなくても状況が目に浮かぶ。
きっと宴会のようになっているんだろうな。
「残りのコカトリスも焼けたから、これとつみれ汁を合わせて持って行きましょう」
「そうね、とりあえず届けましょう」
一旦、全ての火を止めると、出来上がった物を両手に持ち配膳を始めた。
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