【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉日和。(旧美杉。)

文字の大きさ
24 / 52

024

しおりを挟む

「そうだ。さっき思ってすっかり他の会話をしていて忘れていたんだけど、どうしてルド様はお手紙をくれなかったのかしら」

「んー。お忙しかったからではないのですか?」

「そうかな……」

「ルド様からお手紙のお返事が欲しかったのですか? ああでも、せっかくお花までつけられたのに、そのことにも何もなかったでしたからね」

「別にお手紙が欲しかったとか、お花の感想が欲しかったってわけじゃないんだけどさぁ」

「ふふふ。お嬢様、可愛らしいですね」

「もう。からかってはダメよ」

「すみません。つい、あまりにも可愛らしくて」


 元から可愛らしいサラに言われるのって、なんだか恥ずかしいわね。

 でも、本当に手紙がもらえなかったからいじけているってわけではないんだけどな。

 ただそう。なんていうか、ルドなら忙しくても手紙で返してくれる気がしたのよね。

 だからわざわざ花までつけたんだもの。

 それが王宮の侍女に、『遠くない範囲でなら許可する』だなんて伝言。

 事務的っていうか、ルドらしくないっていうか。なんか……。ああ、モヤモヤするぅぅ。

 でも絶対にいじけてなんていないんだもん。違うんだもん。そんな子どもみたいなこと、私は言わないんだもん。

 頬を少し膨らませたまま、離宮の外へと続く扉を私は開けた。

 涼やかな風が髪を撫で、ドレスの裾を揺らす。風は小春日和というように、柔らかく温かい。花の香りもどこからか流れてきていた。

 先ほどまでのもやもやした気持ちが、全て風に乗って飛んで行くようだった。

 
「わぁ、気持ちいい」


 風が気持ちいいし、花の匂いが風にのって運ばれてくる。

 どうやら目の前の垣根がある裏側には、お風呂に浮かべていた薔薇や他の花たちが咲いているようだ。

 空もどこまでも高く、雲も少ない。

 
「外は気持ちいいわね。ルド様ともお散歩したいなぁ」

「そうですね、お嬢様」


 思わず本音が零れ落ちる。

 でも本当のことなんだから、これは仕方ない。

 ルドと一緒だったら、きっともっと奥のお庭までお散歩出来るわけだし。

 どうせなら異世界を満喫してみたい。


「ああ、でもお庭にテーブルを出してもらってルド様とお茶をしてもいいわね。せっかくいい天気なんだもん。ルド様は次いつがお休みなのかなぁ」

「それも良さそうですね」

「でもルド様は外とか嫌いかなぁ。ルド様は何が好きなんだろう」

「どうですかねぇ」

「ルド様って太陽の光よりも月の光の方が似合うのよね」

「お嬢様、さっきから殿下のことを連呼していますよ」

「深い意味はないのー」

「わたしは全然あってもいいと思うのですけどね~」

「もう、サラのいぢわるぅ。絶対にないもーん。たぶん、そぅ、ないはずだもん」

「お嬢様、それ」

「もー、だめ」

「認めてあげた方が気持ちが楽になることもあるのですよ、お嬢様」

「むぅ。ちがうもーん」

「ホント、お嬢様は可愛らしいですね。殿下がお好きになられるはずですわ」

 
 サラのが十分に可愛いのに。もぅ。

 恥ずかしくなってそそくさと歩く私の数歩後ろをサラが着いてくる。

 そんなにルドのことを連呼していたのかな。でもほら、ルドしか親しい人もいないし。

 ともかく今はこのつかの間の自由を満喫しよう。

 意外にも離宮は大きい。

 二階建てで、私が住んでいたマンションの二倍くらいあるんじゃないかな。

 これをきょろきょろと辺りを見渡しながらのんびり歩けば、けっこうな時間になるような気もする。

 明日はルドが許可してくれたら、離宮の中の探検をしてみてもいいわね。

 毎日ただあの部屋だけだと息が詰まってしまう。

 離宮を見上げれば、かなりの数の窓があった。

 私がいたのは一番奥の二階のお部屋だ。ルドがカーテンを閉めているせいで外が見えなかったし。

 きっとあの部屋、本当は日当たりが一番いいんだろうな。窓の前に木などもないし。遮るものがなく、遠くまで見渡せることだろう。

 もしかしたら庭とかも全部見れるようになってるんじゃないかな。

 ルドも変ね。どうせ閉じ込めておきたいのなら、窓のない部屋にすればいいのに。鳥籠と言いつつも、一番いい部屋にするなんてまったく……。


「ふふふ」

「急にどうしたんですか、お嬢様」

「んー。なんでもないわ。明日は離宮の中の探検をしてみたいわね」

「それは冒険みたいで楽しそうですね」

「でしょー」

 
 そう言って振り返り、サラを見た私の視界の切れ端に、見慣れた髪色の男性が入る。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜

氷雨そら
恋愛
 婚約相手のいない婚約式。  通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。  ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。  さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。  けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。 (まさかのやり直し……?)  先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。  ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。 小説家になろう様にも投稿しています。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私は、全力で死亡フラグを回避したいのに、なぜか空回りしてしまうんです(涙)

藤原 柚月
恋愛
(週一更新になります。楽しみにしてくださる方々、申し訳ありません。) この物語の主人公、ソフィアは五歳の時にデメトリアス公爵家の養女として迎えられた。 両親の不幸で令嬢になったソフィアは、両親が亡くなった時の記憶と引き替えに前世の記憶を思い出してしまった。 この世界が乙女ゲームの世界だと気付くのに時間がかからなかった。 自分が悪役令嬢と知ったソフィア。 婚約者となるのはアレン・ミットライト王太子殿下。なんとしても婚約破棄、もしくは婚約しないように計画していた矢先、突然の訪問が! 驚いたソフィアは何も考えず、「婚約破棄したい!」と、言ってしまう。 死亡フラグが立ってしまったーー!!?  早速フラグを回収してしまって内心穏やかではいられなかった。 そんなソフィアに殿下から「婚約破棄はしない」と衝撃な言葉が……。 しかも、正式に求婚されてしまう!? これはどういうこと!? ソフィアは混乱しつつもストーリーは進んでいく。 なんとしてても、ゲーム本作の学園入学までには婚約を破棄したい。 攻略対象者ともできるなら関わりたくない。そう思っているのになぜか関わってしまう。 中世ヨーロッパのような世界。だけど、中世ヨーロッパとはわずかに違う。 ファンタジーのふんわりとした世界で、彼女は婚約破棄、そして死亡フラグを回避出来るのか!? ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体などに一切関係ありません。 誤字脱字、感想を受け付けております。 HOT ランキング 4位にランクイン 第1回 一二三書房WEB小説大賞 一次選考通過作品 この作品は、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

ヒロインに躱されて落ちていく途中で悪役令嬢に転生したのを思い出しました。時遅く断罪・追放されて、冒険者になろうとしたら護衛騎士に馬鹿にされ

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
第二回ドリコムメディア大賞一次選考通過作品。 ドジな公爵令嬢キャサリンは憎き聖女を王宮の大階段から突き落とそうとして、躱されて、死のダイブをしてしまった。そして、その瞬間、前世の記憶を取り戻したのだ。 そして、黒服の神様にこの異世界小説の世界の中に悪役令嬢として転移させられたことを思い出したのだ。でも、こんな時に思いしてもどうするのよ! しかし、キャサリンは何とか、チートスキルを見つけ出して命だけはなんとか助かるのだ。しかし、それから断罪が始まってはかない抵抗をするも隣国に追放させられてしまう。 「でも、良いわ。私はこのチートスキルで隣国で冒険者として生きて行くのよ」そのキャサリンを白い目で見る護衛騎士との冒険者生活が今始まる。 冒険者がどんなものか全く知らない公爵令嬢とそれに仕方なしに付き合わされる最強騎士の恋愛物語になるはずです。でも、その騎士も訳アリで…。ハッピーエンドはお約束。毎日更新目指して頑張ります。 皆様のお陰でHOTランキング第4位になりました。有難うございます。 小説家になろう、カクヨムでも連載中です。

処理中です...