愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します

美杉日和。(旧美杉。)

文字の大きさ
86 / 89

084 母に

「ルカはあたしのこと、見捨てたりなんてしないわよね?」
「ボクは……」

 腕を掴むルカの手に、力が入ったのが見て取れる。

「ルカ、一緒に帰りましょう?」

 私はその場にしゃがみ込み、まっすぐにルカを見た。
 そしてそのままルカに微笑みかける。
 
「ビオラ……でも」
「私はあの家でルカがいないと一人ぼっちだって言ったの覚えてる?」
「!」

 一度ルカは視線を落としたものの、私のその言葉に反応するかのように真っすぐにこちらを見てくれた。
 まだほんの数か月前。私たちが出会った時に話したことだ。

「でも、今は……」
「そうね。ルカの言う通り、今はあの屋敷の中でいろんな人と仲良くなれたわ。あなたのお父様である公爵様だってそう」
「……」
「でもね。私は初めからずっと、ルカ、あなたと仲良くなりたかった。もちろん一番初めに出来たお友だちであるのもそうだし。今はあなたを愛しているから」

 初めは友だちになってなんて頼んだけれど、今はもう違う。
 ずっとルカには言えなかったこと。もしかしたらルカの負担になってしまうんじゃないかって。ノベリアという実の母親がまともだったら、こんなことを言ったらルカが混乱するんじゃないかって思っていたから。

 でも今なら言える。
 私の本心でもあり、ノベリアにルカを渡さないという強い意思があるから。

「ルカ、お友だちではなく私の息子になってくれないかな。私をあなたの母親にさせてくれないかな」
「でも、でも、でも」

 ルカは何度か首を横に振ったあと、意を決したように言葉を紡ぎ出した。

「ビオラが子どもを生んだら……ボクのこといらなくなるんじゃないでしゅか。あの猫が来た時のように」
「ならないわ。確かにお世話が忙しくて、あなたのことを見てあげられなかったことは本当よ。でもね、たとえ私が子どもを生んだとしてもあなたを一番愛しているわ。だって、この世で天使のようにかわいい一番の息子じゃない」
「ボクが……ビオラの息子?」
「ええ、そうよ。だから一緒に帰りましょう?」

 私はそう言いながら、腕を大きく広げた。
 ルカは泣き出しそうなのか、それとも笑いたいのか。顔をぐにゃりとさせながらも、必死に考えているように見えた。

「馬鹿なこと言わないで! ルカの母親はあたしだけよ。あたしが生んだ子なの。だからあたしがこの子を育てるのよ!」
「先にそれを放棄したのはあなたでしょう。自分の都合で子どもを振り回さないで」
「うるさい、うるさい! ルカ、ねぇルカ。まさかこの女を選ばないわよね? あなたは、あなただけはちゃんとお母さまを選んでくれるわよね?」
「ボクは……ボクは……」

 ノベリアの行動も言動も、私には病的に思えた。
 ふらふらとルカに近づこうとするノベリアの手を、私は思わず掴んで引き留めた。
 するとノベリアは先ほどまでの悲観した顔ではなく、怒りに満ちた表情で私を睨みつける。

「あんたが邪魔しなければ……あんたが現れなければ、全部上手くいくはずだったのよ!」

 ノベリアは力任せに手を振り払い、私の手を振り解く。
 私がビオラとして転生しなければ、確かに彼女の思い描く通りの未来になっていただろう。
 でも、現実はそうならなかった。
 これが偶然だっていい。私はルカが大切で、今の幸せを守りたいから。

「残念だったわね。思い通りにならなくて。でも、それも全て自分のせいでしょう」
「あんたに何が分かるって言うの!」
「分かりたくもないわね」

 大昔に自分の父親の手によって、うちの父の愛人にされてしまったノベリアに同情をしないわけではない。でも、その先は彼女が望んで選んだ結果だから。

「私と一緒に帰りましょう、ルカ。あなたのおうちに」
「……はいでしゅ。ボクはビオラにお母さんになって欲しいでしゅ」

 ルカはそう言ったあと、泣きながら笑った。
感想 66

あなたにおすすめの小説

虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~

八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。 しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。 それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。 幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。 それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。 そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。 婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。 彼女の計画、それは自らが代理母となること。 だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。 こうして始まったフローラの代理母としての生活。 しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。 さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。 ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。 ※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります ※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)

嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。

しあ
恋愛
目が覚めるとお腹が痛い! 声が出せないくらいの激痛。 この痛み、覚えがある…! 「ルビア様、赤ちゃんに酸素を送るためにゆっくり呼吸をしてください!もうすぐですよ!」 やっぱり! 忘れてたけど、お産の痛みだ! だけどどうして…? 私はもう子供が産めないからだだったのに…。 そんなことより、赤ちゃんを無事に産まないと! 指示に従ってやっと生まれた赤ちゃんはすごく可愛い。だけど、どう見ても日本人じゃない。 どうやら私は、わがままで嫌われ者の皇后に憑依転生したようです。だけど、赤ちゃんをお世話するのに忙しいので、構ってもらわなくて結構です。 なのに、どうして私を嫌ってる皇帝が部屋に訪れてくるんですか!?しかも毎回イラッとするとこを言ってくるし…。 本当になんなの!?あなたに構っている時間なんてないんですけど! ※視点がちょくちょく変わります。 ガバガバ設定、なんちゃって知識で書いてます。 エールを送って下さりありがとうございました!

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

戻る場所がなくなったようなので別人として生きます

しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。 子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。 しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。 そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。 見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。 でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。 リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。

2番目の1番【完】

綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。 騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。 それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。 王女様には私は勝てない。 結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。 ※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです 自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。 批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…

離婚が決まった日に惚れ薬を飲んでしまった旦那様

しあ
恋愛
片想いしていた彼と結婚をして幸せになれると思っていたけど、旦那様は女性嫌いで私とも話そうとしない。 会うのはパーティーに参加する時くらい。 そんな日々が3年続き、この生活に耐えられなくなって離婚を切り出す。そうすれば、考える素振りすらせず離婚届にサインをされる。 悲しくて泣きそうになったその日の夜、旦那に珍しく部屋に呼ばれる。 お茶をしようと言われ、無言の時間を過ごしていると、旦那様が急に倒れられる。 目を覚ませば私の事を愛していると言ってきてーーー。 旦那様は一体どうなってしまったの?

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。