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「ど、どうしたのティア、いきなり大きな声を出して」
「あのねシロ、私この部屋の借りるお金のことを聞くのを忘れてしまっていたわ」
「えええ。そんなこと?」
「そんなことじゃないわ。すごく大事なことよ。私の持っているお金はそんなに多くないもの。この部屋を借りるのにはきっとすごいくお金がかかっているはずよ」
「それは、そうかもしれないけど」
「そうでしょう? すっかり忘れてしまってたわ。一番大事なことなのに」
こんなに大きく、しかも元王女が使っていた部屋だ。
きっと下の階の部屋の何十倍もするはず。
しかも管理人と言う名の侍女たちも配置されているし、食事もついているとなればいくらになるのだろう。
おそろしい金額だと言うことだけはわかる。
「一番そこじゃないと思うけど……。でもほら、ここは公爵が借りてくれてるわけだし、そんなに気にしなくてもいいんじゃない?」
「ダメよ。そういうわけにはいかないわ。ん-、そうね。どこかでお仕事とか出来ないかしら?」
「ティアが働くの?」
「そうよ。もちろん難しいことは無理だけど、掃除とか片付けとかそういうのは出来るもの。ほら、侍女みたいな仕事とかどうかしら」
うん。我ながらすごくいい考えだわ。
だって働いてお金を稼げば、ここの支払いの全部は無理でもいくらかは公爵に返せるし。
全部迷惑をかけるなんて絶対にダメだと思うのよね。
心苦しいし、それに何より何にも出来ない自分が嫌だから。
そうよ。働いたら知識も増えるし、今後もし婚約がダメになってしまったとしても生きる道が出来るわ。
「うん。明日、どこかでお仕事を斡旋してもえないか聞きに行きましょう」
「えー。さすがにダメじゃない? ティアは次期公爵夫人なのよ」
「でも何もしないってわけにはいかないわ。ほら、変装とかして私だってバレなければ大丈夫じゃないかな」
「なんでそういうとこには思い切りがいいかなぁ。もー。なんでかなぁ。こんな設定だったっけ」
「設定?」
「ああ、いえ。こっちの話。でもほら、さすがにカイルに相談してからのがいいんじゃない?」
「ダメよ。相談したらカイル様は絶対に反対するもの。でも私は私でちゃんとしたいの」
今は後ろ楯のない身だし。自分のことはちゃんと自分でしないと。
そしてそうね。ゆくゆくは、後ろ楯になって下さる人も探さないと。
勉強もしながらだから大変だけど、それでも管理人まで付けてもらえたからなんとかなるんじゃないかな。
あの家にいた時は、全員の分をやらされていたわけだし。
「そうと決まれば、今日は早く寝ましょう。明日も学園はお休みの日だし、何としても職探しをしちゃわないとね!」
「……変なコトにならないといいけど」
「大丈夫よ、シロは意外に心配性なのね」
「だって貴族が働くだなんて」
「貴族も働くものよ?」
「んー。働くの種類が違うと思うんだけど。まぁ、いいわ。好きにやってみたら」
「うん。さ、寝ようシロ」
「はいはい」
やや高い窓枠からストンと降り、今度はベッドにシロが飛び乗った。
見た目は猫だけど、シロにはその背に小さな羽根がある。
ただその羽根で飛んでるのを見たことはないのよね。
ふわふわ飛んだら、きっとかわいのに。
「ねぇ、シロは飛ばないの?」
「飛ぶ? あー、ああ。ん-、イマイチ仕様が分からないのよね」
「仕様?」
「そそ。急にこんなの付けられても練習しないと、無理よ。変なコト気にしないで寝るわよ」
「はぁい」
羽根って仕様なんだ。
精霊がこの世界に降りてくるときは羽根を付けられるのね。
なんか精霊にもいろいろあるのね、大変そう。
「明日は頑張って早起きするぞー」
「はいはい。見守ってるわ」
「ふふふ。ありがとー」
やや投げやりなシロもなんだか可愛いなぁと思いながら私たちは眠りについた。
「あのねシロ、私この部屋の借りるお金のことを聞くのを忘れてしまっていたわ」
「えええ。そんなこと?」
「そんなことじゃないわ。すごく大事なことよ。私の持っているお金はそんなに多くないもの。この部屋を借りるのにはきっとすごいくお金がかかっているはずよ」
「それは、そうかもしれないけど」
「そうでしょう? すっかり忘れてしまってたわ。一番大事なことなのに」
こんなに大きく、しかも元王女が使っていた部屋だ。
きっと下の階の部屋の何十倍もするはず。
しかも管理人と言う名の侍女たちも配置されているし、食事もついているとなればいくらになるのだろう。
おそろしい金額だと言うことだけはわかる。
「一番そこじゃないと思うけど……。でもほら、ここは公爵が借りてくれてるわけだし、そんなに気にしなくてもいいんじゃない?」
「ダメよ。そういうわけにはいかないわ。ん-、そうね。どこかでお仕事とか出来ないかしら?」
「ティアが働くの?」
「そうよ。もちろん難しいことは無理だけど、掃除とか片付けとかそういうのは出来るもの。ほら、侍女みたいな仕事とかどうかしら」
うん。我ながらすごくいい考えだわ。
だって働いてお金を稼げば、ここの支払いの全部は無理でもいくらかは公爵に返せるし。
全部迷惑をかけるなんて絶対にダメだと思うのよね。
心苦しいし、それに何より何にも出来ない自分が嫌だから。
そうよ。働いたら知識も増えるし、今後もし婚約がダメになってしまったとしても生きる道が出来るわ。
「うん。明日、どこかでお仕事を斡旋してもえないか聞きに行きましょう」
「えー。さすがにダメじゃない? ティアは次期公爵夫人なのよ」
「でも何もしないってわけにはいかないわ。ほら、変装とかして私だってバレなければ大丈夫じゃないかな」
「なんでそういうとこには思い切りがいいかなぁ。もー。なんでかなぁ。こんな設定だったっけ」
「設定?」
「ああ、いえ。こっちの話。でもほら、さすがにカイルに相談してからのがいいんじゃない?」
「ダメよ。相談したらカイル様は絶対に反対するもの。でも私は私でちゃんとしたいの」
今は後ろ楯のない身だし。自分のことはちゃんと自分でしないと。
そしてそうね。ゆくゆくは、後ろ楯になって下さる人も探さないと。
勉強もしながらだから大変だけど、それでも管理人まで付けてもらえたからなんとかなるんじゃないかな。
あの家にいた時は、全員の分をやらされていたわけだし。
「そうと決まれば、今日は早く寝ましょう。明日も学園はお休みの日だし、何としても職探しをしちゃわないとね!」
「……変なコトにならないといいけど」
「大丈夫よ、シロは意外に心配性なのね」
「だって貴族が働くだなんて」
「貴族も働くものよ?」
「んー。働くの種類が違うと思うんだけど。まぁ、いいわ。好きにやってみたら」
「うん。さ、寝ようシロ」
「はいはい」
やや高い窓枠からストンと降り、今度はベッドにシロが飛び乗った。
見た目は猫だけど、シロにはその背に小さな羽根がある。
ただその羽根で飛んでるのを見たことはないのよね。
ふわふわ飛んだら、きっとかわいのに。
「ねぇ、シロは飛ばないの?」
「飛ぶ? あー、ああ。ん-、イマイチ仕様が分からないのよね」
「仕様?」
「そそ。急にこんなの付けられても練習しないと、無理よ。変なコト気にしないで寝るわよ」
「はぁい」
羽根って仕様なんだ。
精霊がこの世界に降りてくるときは羽根を付けられるのね。
なんか精霊にもいろいろあるのね、大変そう。
「明日は頑張って早起きするぞー」
「はいはい。見守ってるわ」
「ふふふ。ありがとー」
やや投げやりなシロもなんだか可愛いなぁと思いながら私たちは眠りについた。
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