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004 可愛い娘の頼み
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「いやしかしだなぁ……」
「お父さま、お願いです」
懇願するマリンに、父はチラリと私を見た。
おそらくは父も私と同じ考えなのだろう。
もし仮にもマリンが王妃となってしまったら、我が家はどうなるのか。
いくら可愛い自分の娘の願いでも、こればっかりは無理な話。
そんな困ったような顔で私を見られても、どうしようも出来はしない。
「だって自分の家門から王妃が出たとなれば、お父さまだって大出世ではないですか」
「それはそうだが。しかし選定試験はとても難しいものとなっているぞ。体の弱いおまえにはさすがに」
「だからこそですわ。たった一度のことではないですの。挑戦してダメなら諦めもつきますし」
やれるだけねぇ。
こんなにも病弱なのに。
仮になれたとしてもその勤めを果たせるのか。
なんて言ってしまったら、嫌な姉よね。
「あなた、今までこんなお願いをしてこなかったこの子がそう言うんです。挑戦させたらどうですか?」
「だがしかし……」
「体調が悪くなれば、それこそ辞退することも出来るわけですし」
「きっと国王陛下に見染められてきますわ」
父の心配をつゆとも知らない二人は、その了承を聞くこともなくすでに盛り上がっていた。
何を着て行くのか、どうやって自分をアピールするのか。
傍から見ればどうでもいいような話ばかり。
しかし盛り上がるマリンと母にそれ以上何も言えなくなってしまった父は、夕食後に私を自分の執務室へと呼んだのだった。
◇ ◇ ◇
「お呼びですか?」
「ああ、すまない」
父は先ほどの話し合いにややヤケになったのか、執務室ですでに二本目となるワインを開けていた。
こんなにも飲む父は、本当に久しぶりに見る気がする。
「座りなさい」
父はそう言いながら私を手招きすると、執務室のソファーに座らせた。
雰囲気からして、よい話ではないことはなんとなく分かる。
「マリンの話、おまえはどう思う」
「体調を崩し、王宮に迷惑をかけないか心配です」
「ああ、そうだな」
父はため息をつきながらそう答えた。
参加するための条件は確かに満たしているものの、選定試験ともなれば王宮からすぐには戻ってこれないだろう。
それにミスをすれば、もしかしなくとも家門の名に傷がつく。
「マリンは基本的な教育すら、おまえよりも遅れているそうだな」
「あの子は体が弱く、熱を出せばその分中断しますからね」
「ああ、困ったな……」
父は額に手を置きながら天を仰いだ。
そんなに困るのならば、もういっそ断ってしまえばいいのに。
しかし私の考えに反し、父は驚くことを言い出した。
「お父さま、お願いです」
懇願するマリンに、父はチラリと私を見た。
おそらくは父も私と同じ考えなのだろう。
もし仮にもマリンが王妃となってしまったら、我が家はどうなるのか。
いくら可愛い自分の娘の願いでも、こればっかりは無理な話。
そんな困ったような顔で私を見られても、どうしようも出来はしない。
「だって自分の家門から王妃が出たとなれば、お父さまだって大出世ではないですか」
「それはそうだが。しかし選定試験はとても難しいものとなっているぞ。体の弱いおまえにはさすがに」
「だからこそですわ。たった一度のことではないですの。挑戦してダメなら諦めもつきますし」
やれるだけねぇ。
こんなにも病弱なのに。
仮になれたとしてもその勤めを果たせるのか。
なんて言ってしまったら、嫌な姉よね。
「あなた、今までこんなお願いをしてこなかったこの子がそう言うんです。挑戦させたらどうですか?」
「だがしかし……」
「体調が悪くなれば、それこそ辞退することも出来るわけですし」
「きっと国王陛下に見染められてきますわ」
父の心配をつゆとも知らない二人は、その了承を聞くこともなくすでに盛り上がっていた。
何を着て行くのか、どうやって自分をアピールするのか。
傍から見ればどうでもいいような話ばかり。
しかし盛り上がるマリンと母にそれ以上何も言えなくなってしまった父は、夕食後に私を自分の執務室へと呼んだのだった。
◇ ◇ ◇
「お呼びですか?」
「ああ、すまない」
父は先ほどの話し合いにややヤケになったのか、執務室ですでに二本目となるワインを開けていた。
こんなにも飲む父は、本当に久しぶりに見る気がする。
「座りなさい」
父はそう言いながら私を手招きすると、執務室のソファーに座らせた。
雰囲気からして、よい話ではないことはなんとなく分かる。
「マリンの話、おまえはどう思う」
「体調を崩し、王宮に迷惑をかけないか心配です」
「ああ、そうだな」
父はため息をつきながらそう答えた。
参加するための条件は確かに満たしているものの、選定試験ともなれば王宮からすぐには戻ってこれないだろう。
それにミスをすれば、もしかしなくとも家門の名に傷がつく。
「マリンは基本的な教育すら、おまえよりも遅れているそうだな」
「あの子は体が弱く、熱を出せばその分中断しますからね」
「ああ、困ったな……」
父は額に手を置きながら天を仰いだ。
そんなに困るのならば、もういっそ断ってしまえばいいのに。
しかし私の考えに反し、父は驚くことを言い出した。
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