【完結】妹の代わりなんて、もううんざりです

美杉日和。(旧美杉。)

文字の大きさ
7 / 21

006 私の味方

 部屋に戻り少し落ち着くと、やはりどうしようもない怒りがこみ上げてきた。
 それは枕を投げつけても、地団太を踏んでみても、消えることはない。

「いつでもこの家があの子中心で回っているのはわかっていたけど。でもそれでも、あんな言い方しなくてもいいのに」

 さも私のことなどどうでもいいような発言。

 何もかもマリン中心で、あの子が幸せになるためのコマみたいじゃない、私。

 悔しさは涙となってあふれ出てくる。
 いつまで我慢しなくちゃいけないの?

 何もかもうんざりよ。
 堪えきれなくなった私は、リオンに急ぎの文を書いた。

 さすがに身代わりになれという話は書けなかったけど。
 マリンが国王陛下の花嫁候補として選定試験を受けること。
 そのためにうちの跡継ぎがいなくなってしまうかもしれないこと。

 不安と不満。そして少しの悲しみを込め、朝一で届く様に侍女に手配してもらった。

 ほぼ眠れぬまま朝を迎え、一人窓の外をボーっと眺めているとリオンの馬車が見えてくる。
 
「リオン? 急ぎの文を見て、心配になって会いにきてくれたのかしら」

 いつもなら先触れを出して、約束をとりつけてからきちんと訪ねてきてくれるリオン。

 そんな彼がこんな早朝に駆けつけてくれた。
 そんなに私のことを心配してくれたなんて。うれしい。

 私の味方はやはり彼しかいないわ。

 いてもたってもいられなくなった私は一階に降り、玄関の扉を開けた。
 すぐに横付けされた馬車からは、蒼白のリオンが下りてくる。

「リオン!」

 すぐに抱きつけば、なぜか彼は私の両肩に手を置き、力強く私を引き離した。

「リオン?」
「あの手紙の内容は本当なのか? マリンが妃候補の選定試験に出るって」
「え、ええ。そうなの。止めたんだけど、あの子自分は条件にピッタリだから出るって聞かなくて」

 私の話を聞くうちに、なぜかリオンは不機嫌さを隠そうとはしなかった。
 
 こんな風に怒っているリオンを見るのは初めてな気がする。

 彼と初めて会ったのは、私がまだ五歳の頃。
 その頃からずっとリオンは私の傍で微笑んでくれていたのに。

「いくら条件がピッタリとはいえ、病弱なマリンでは無理だろう」
「私もそう言ったのだけど、大丈夫だって言いきっていて。だから父も母もそれに賛成してしまって……」
「ありえないだろう! ぼくが説得してくる」

 私の肩から手を離すと、その脇をすり抜ける様に一人リオンはマリンの部屋へと向かっていった。

 何が起こったのか理解できない私は、ただその場で一人立ち尽くす。

「リオン……」

 リオンが説得するのは、私のためよね。
 そうじゃなくとも、自分の義妹となるマリンの体を心配してのことよね。

「そうよね……きっとそうよ。だって……」

 そうじゃなければ、唯一の味方も失ってしまうじゃない。
 そんなことなど、考えたくもなかった。
感想 3

あなたにおすすめの小説

私だけが家族じゃなかったのよ。だから放っておいてください。

恋愛
 男爵令嬢のレオナは王立図書館で働いている。古い本に囲まれて働くことは好きだった。  実家を出てやっと手に入れた静かな日々。  そこへ妹のリリィがやって来て、レオナに助けを求めた。 ※このお話は極端なざまぁは無いです。 ※最後まで書いてあるので直しながらの投稿になります。←ストーリー修正中です。 ※感想欄ネタバレ配慮無くてごめんなさい。 ※SSから短編になりました。

そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるアルシエラは、高慢な妹とそんな妹ばかり溺愛する両親に嫌気が差していた。 ある時、彼女は父親から縁を切ることを言い渡される。アルシエラのとある行動が気に食わなかった妹が、父親にそう進言したのだ。 不安はあったが、アルシエラはそれを受け入れた。 ある程度の年齢に達した時から、彼女は実家に見切りをつけるべきだと思っていた。丁度いい機会だったので、それを実行することにしたのだ。 伯爵家を追い出された彼女は、商人としての生活を送っていた。 偶然にも人脈に恵まれた彼女は、着々と力を付けていき、見事成功を収めたのである。 そんな彼女の元に、実家から申し出があった。 事情があって窮地に立たされた伯爵家が、支援を求めてきたのだ。 しかしながら、そんな義理がある訳がなかった。 アルシエラは、両親や妹からの申し出をきっぱりと断ったのである。 ※8話からの登場人物の名前を変更しました。1話の登場人物とは別人です。(バーキントン→ラナキンス)

病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。

恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。 キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。 けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。 セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。 キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。 『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』 キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。   そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。 ※ゆるふわ設定 ※ご都合主義 ※一話の長さがバラバラになりがち。 ※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。 ※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。

母の中で私の価値はゼロのまま、家の恥にしかならないと養子に出され、それを鵜呑みにした父に縁を切られたおかげで幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたケイトリン・オールドリッチ。跡継ぎの兄と母に似ている妹。その2人が何をしても母は怒ることをしなかった。 なのに母に似ていないという理由で、ケイトリンは理不尽な目にあい続けていた。そんな日々に嫌気がさしたケイトリンは、兄妹を超えるために頑張るようになっていくのだが……。

【完結】狡い人

ジュレヌク
恋愛
双子のライラは、言う。 レイラは、狡い。 レイラの功績を盗み、賞を受賞し、母の愛も全て自分のものにしたくせに、事あるごとに、レイラを責める。 双子のライラに狡いと責められ、レイラは、黙る。 口に出して言いたいことは山ほどあるのに、おし黙る。 そこには、人それぞれの『狡さ』があった。 そんな二人の関係が、ある一つの出来事で大きく変わっていく。 恋を知り、大きく羽ばたくレイラと、地に落ちていくライラ。 2人の違いは、一体なんだったのか?

妹は謝らない

青葉めいこ
恋愛
物心つく頃から、わたくし、ウィスタリア・アーテル公爵令嬢の物を奪ってきた双子の妹エレクトラは、当然のように、わたくしの婚約者である第二王子さえも奪い取った。 手に入れた途端、興味を失くして放り出すのはいつもの事だが、妹の態度に怒った第二王子は口論の末、妹の首を絞めた。 気絶し、目覚めた妹は、今までの妹とは真逆な人間になっていた。 「彼女」曰く、自分は妹の前世の人格だというのだ。 わたくしが恋する義兄シオンにも前世の記憶があり、「彼女」とシオンは前世で因縁があるようで――。 「彼女」と会った時、シオンは、どうなるのだろう? 小説家になろうにも投稿しています。

義妹に婚約者を取られて、今日が最後になると覚悟を決めていたのですが、どうやら最後になったのは私ではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
フェリシティーは、父や義母、義妹に虐げられながら過ごしていた。 それも、今日で最後になると覚悟を決めていたのだが、どうやら最後になったのはフェリシティーではなかったようだ。 ※全4話。

殿下が私を愛していないことは知っていますから。

木山楽斗
恋愛
エリーフェ→エリーファ・アーカンス公爵令嬢は、王国の第一王子であるナーゼル・フォルヴァインに妻として迎え入れられた。 しかし、結婚してからというもの彼女は王城の一室に軟禁されていた。 夫であるナーゼル殿下は、私のことを愛していない。 危険な存在である竜を宿した私のことを彼は軟禁しており、会いに来ることもなかった。 「……いつも会いに来られなくてすまないな」 そのためそんな彼が初めて部屋を訪ねてきた時の発言に耳を疑うことになった。 彼はまるで私に会いに来るつもりがあったようなことを言ってきたからだ。 「いいえ、殿下が私を愛していないことは知っていますから」 そんなナーゼル様に対して私は思わず嫌味のような言葉を返してしまった。 すると彼は、何故か悲しそうな表情をしてくる。 その反応によって、私は益々訳がわからなくなっていた。彼は確かに私を軟禁して会いに来なかった。それなのにどうしてそんな反応をするのだろうか。