【完結】妹の代わりなんて、もううんざりです

美杉日和。(旧美杉。)

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011 極限状態

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「いやぁ、みんなよく頑張ってくれているみたいだな」

 陛下のその言葉が、本当の意味でのねぎらいなのか、その逆なのか。

 頭を下げたままの私たちには到底分からない。
 だけどこのまま立ち去ってくれたら。

 顔を見られなくても済む。
 私とマリンは一卵性の双子。

 一度や二度会ったくらいでは、特徴を変えない限りは今まで見分けられたことはない。
 だけど万が一ということはある。

 顔を合わせないなら、合わせない方がいい。
 どうかこのまま立ち去って。

 私のささやかな願いなど、簡単にかき消された。

「ああ悪かった。そう畏まらなくていい。頭を上げてくれ」

 一番聞きたくない言葉だった。
 
 しかし私だけ頭を上げないわけにもいかない。
 
 一度息を飲んだあと、気が付かれないように息を吸い込み顔を上げた。

「ああ、君が噂のね」

 顔を上げたその瞬間、陛下と視線が合う。
 何を思ったのか、彼は真っすぐに私を見ていた。

「試験管たちから聞いているよ。初回以外はとても優秀な成績を収めているようじゃないか」

 バレないことだけを重視しつつ、普通にやってきたつもりだったのに。
 一番初めのマリンの出来が悪すぎだったのか、悪目立ちしていたのか。

 どちらにしても、注目を浴びてしまっていたなんて。
 
 どうしよう。どうしたらいいの。
 今日、退場予定だったのに。
 
「お茶だけは苦手でして」

 なんとか誤魔化して逃げ切らないと。
 極力マリンに似せる様に、にこやかに笑顔を作った。

「そうか。苦手なのか。それならば仕方ないな。まるで人が変わったかのようにその後から快進撃だったから気になってな」

 顔に出すな、顔に出すな。
 今はとにかく笑え。

 きっとバレてる。
 バレてるけど確証がないから陛下はきっとこんなことをおっしゃるのだわ。

 今もし少しでも不安な顔をしてしまえば、それだけでバレてしまうもの。

「陛下に気にかけていただけたなど、これ以上にない喜びですわ」
「……そうか」

 陛下もそう言いながら、笑った。
 その笑顔の裏が、どこまでも恐ろしい。

 なんでこんなことになったの。
 全部マリンのせいなのに。

 だけど……最後まで断り切れなかった私も、きっと同罪なのね。

「ところで令嬢、そなたは姉妹や兄弟をどう思う」
「は?」

 質問の意図が分からず、思わず私は素に戻ってしまった。

「言葉のままさ。好きか? 大事か?」

 心臓の音がいつもよりも早く大きい。
 しかも胸からではなく、自分の耳元にそれがあると思えるほど。

 これはなんと答えたら正解なのか。
 限界の私には、もう分からなかった。
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