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012 同じだからこそ
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「……嫌いです」
繕えなくなった私は、もうそれしか言えなかった。
私の言葉に、陛下以外の人間の顔が驚いているのが見なくとも分かる。
自分ですら言ったその瞬間に、後悔が体を支配していた。
ああ、間違えてしまった。
疑われている場面で、まさか不正解の方を言ってしまうなんて。
しかし陛下は一瞬固まったように見えたが『そうか』と笑顔のまま答え、同じ質問を残りの二人の令嬢にもしていた。
二人の令嬢は私とは違い、いかに自分が兄弟や姉妹を大切にしているか。
家族愛とはなど、楽し気に語っていた。
そこから陛下が執務に戻られるまで、生きた心地はしなかった。
そして何を言われたのか、どうしたのか。
それすら曖昧のまま、私は王宮より与えられた自室へと戻った。
「おっそーい。何していたの、姉さま。わたし、ずっと待っていたのに」
部屋を開けた瞬間聞こえてきたその声に、私は急いでドアを閉めた。
部屋の中には退屈そうにベッドに寝転んだ、マリンがいる。
「どういうこと、これは」
「へー? なにがぁ?」
マリンはゆっくりと体を起こし、こちらを向いた。
しかしニタニタとしたまま、話をはぐらかそうとする。
最終日となる明後日は、もう試験には参加しない。
だから今日の夜にでも体調を崩したことにして辞退する。
手筈としては、そうなる予定だった。
しかし目の前にはマリンがいる。
「最終試験には出ずに、今日帰る予定だったじゃない。それなのに、どうして」
「姉さまは最終試験になどでなくてもいいですよ? わたしが出ますし」
「馬鹿なこと言わないで」
「なんで? あー。まさかここまで来て、わたしが王妃になるのが嫌になった感じ?」
「そうじゃないでしょう!」
怒鳴る私を、マリンは鼻で笑った。
この子、初めからそのつもりだったんだ。
しかもこの部屋まで辿りつけたということは、おそらく手引きしたのは父だ。
自分が登城するタイミングで、侍女として変装でもさせてマリンを連れてきたのだ。
こんなの話が違い過ぎる。
約束が違うじゃない。
「大丈夫よ。ちゃーんと、一番おいしいとこはわたしが持って行ってあげるから」
にこやかに微笑みながら、立ち上がったマリンは私の肩に手を置いた。
「姉さまはいつも通りに戻ればいいじゃない。ほら、リオンさまだって返してあげる」
「あんたね!」
「やっだー。怖い顔。これで同じ顔だなんて嘘みたいね」
私はマリンの手を払いのけた。
ああ、そうだ。
この顔も、何もかも大嫌い。
私は私から全部奪っていくこの子が大嫌いなんだ。
だからあの時も、取り繕うことは出来なかった。
嘘でも好きだなんて、言いたくもなかったから。
「あはっはははは。まったく、ホント同じなのに残念すぎー」
悔しくて、どこまでも悔しくて。
マリンから離れ、背中を向けた。
するとドアを開ける音と共に、ドサリと何かが倒れる音が聞こえ、私は振り返った。
繕えなくなった私は、もうそれしか言えなかった。
私の言葉に、陛下以外の人間の顔が驚いているのが見なくとも分かる。
自分ですら言ったその瞬間に、後悔が体を支配していた。
ああ、間違えてしまった。
疑われている場面で、まさか不正解の方を言ってしまうなんて。
しかし陛下は一瞬固まったように見えたが『そうか』と笑顔のまま答え、同じ質問を残りの二人の令嬢にもしていた。
二人の令嬢は私とは違い、いかに自分が兄弟や姉妹を大切にしているか。
家族愛とはなど、楽し気に語っていた。
そこから陛下が執務に戻られるまで、生きた心地はしなかった。
そして何を言われたのか、どうしたのか。
それすら曖昧のまま、私は王宮より与えられた自室へと戻った。
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部屋を開けた瞬間聞こえてきたその声に、私は急いでドアを閉めた。
部屋の中には退屈そうにベッドに寝転んだ、マリンがいる。
「どういうこと、これは」
「へー? なにがぁ?」
マリンはゆっくりと体を起こし、こちらを向いた。
しかしニタニタとしたまま、話をはぐらかそうとする。
最終日となる明後日は、もう試験には参加しない。
だから今日の夜にでも体調を崩したことにして辞退する。
手筈としては、そうなる予定だった。
しかし目の前にはマリンがいる。
「最終試験には出ずに、今日帰る予定だったじゃない。それなのに、どうして」
「姉さまは最終試験になどでなくてもいいですよ? わたしが出ますし」
「馬鹿なこと言わないで」
「なんで? あー。まさかここまで来て、わたしが王妃になるのが嫌になった感じ?」
「そうじゃないでしょう!」
怒鳴る私を、マリンは鼻で笑った。
この子、初めからそのつもりだったんだ。
しかもこの部屋まで辿りつけたということは、おそらく手引きしたのは父だ。
自分が登城するタイミングで、侍女として変装でもさせてマリンを連れてきたのだ。
こんなの話が違い過ぎる。
約束が違うじゃない。
「大丈夫よ。ちゃーんと、一番おいしいとこはわたしが持って行ってあげるから」
にこやかに微笑みながら、立ち上がったマリンは私の肩に手を置いた。
「姉さまはいつも通りに戻ればいいじゃない。ほら、リオンさまだって返してあげる」
「あんたね!」
「やっだー。怖い顔。これで同じ顔だなんて嘘みたいね」
私はマリンの手を払いのけた。
ああ、そうだ。
この顔も、何もかも大嫌い。
私は私から全部奪っていくこの子が大嫌いなんだ。
だからあの時も、取り繕うことは出来なかった。
嘘でも好きだなんて、言いたくもなかったから。
「あはっはははは。まったく、ホント同じなのに残念すぎー」
悔しくて、どこまでも悔しくて。
マリンから離れ、背中を向けた。
するとドアを開ける音と共に、ドサリと何かが倒れる音が聞こえ、私は振り返った。
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