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013 光を湛えないその瞳
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振り返るとそこには、黒い装束に身を包んだ男がいた。
彼の手にはナイフがあり、そこには赤いなにかが色づいている。
私は数歩後ずさり、ナイフからしたたり落ちるその先を見た。
私と同じ顔。
あれほど大嫌いだったあの子が、青ざめた顔のまま動かなくなっていた。
男は私とマリンの顔を交互に確認すると、顔をしかめる。
おそらく双子がこの部屋に揃っているなど、考えなかったのだろう。
しかし男が考えた時間はさほど多くはなく、ナイフを持ったまま私との距離を詰めようとした。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
自分でも驚くほど甲高い声が出た気がした。
ただ男は私にナイフを振り下ろし、それを必死に払いのけようとして腕に痛みが走る。
それは痛いを通り越し、灼けるような熱さに近かった。
「何事だ!」
男のナイフが次に私に届く前に、声を聞きつけた護衛騎士たちが部屋に流れ込む。
窓を割って逃走を図る、男。
そしてそれを追う騎士たち。
私は力なくその場に尻もちをつくと、もう動かないマリンとその目があった。
あれほど憎らしく、輝いていた瞳はもう何も映さない。
「大丈夫ですか?」
騎士たちの声をどこか遠くに感じた。
私もこのまま死ぬのだろうか。
どこまでも灼けるような痛みの中、意識は途切れた。
疲労とストレス、それに心的ショック。
挙句にあのナイフには、確実に妃候補であったマリンを殺害するための毒まで塗られていた。
致命傷ではないとはいえ、毒に耐性などない私は十日以上生死の淵を彷徨った。
朦朧とする意識の中見た夢は、どれも面白くもない過去のものたちばかり。
いつでも家族の中心にいたマリンと、そのオマケにすぎない私を何度も思い知らされ、その度に私にはマリンに消えて欲しかったという願望はなかったのか。
私の思いがマリンを殺したのではないのか。
何度も何度も、繰り返しそんな夢を見ていた。
「まだ……ゆめ?」
辛うじて動く左腕。
右腕を見れば、幾重にも包帯が巻かれていた。
あの時ほどの熱さはないものの、決して痛くないわけではない。
でも痛いってことは、生きてるってことよね。
ただ目を開けて飛び込んできた室内は、王宮より与えられた部屋でも自室でもなかった。
高い天井に、天蓋付きの恐ろしく広いベッド。
そのどれもが見ただけで、高いものだと分かる。
まだ私は王宮にいるということなのかしら……。
体はこわばったように固く、無理に動かすことは出来ない。
首だけでもと、横を向くとちょうど部屋の扉が開いた。
そして水差しを持った侍女と、その目が合う。
「あああ! 気が付かれたのですね! 誰か、誰かお医者様をすぐに呼んでちょうだい」
侍女は大きな声を上げながら、私に近づいてきた。
そこからわらわらと、医者や侍女たちが部屋に流れ込んでくる。
その一番奥には、両親の姿もあった。
彼の手にはナイフがあり、そこには赤いなにかが色づいている。
私は数歩後ずさり、ナイフからしたたり落ちるその先を見た。
私と同じ顔。
あれほど大嫌いだったあの子が、青ざめた顔のまま動かなくなっていた。
男は私とマリンの顔を交互に確認すると、顔をしかめる。
おそらく双子がこの部屋に揃っているなど、考えなかったのだろう。
しかし男が考えた時間はさほど多くはなく、ナイフを持ったまま私との距離を詰めようとした。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
自分でも驚くほど甲高い声が出た気がした。
ただ男は私にナイフを振り下ろし、それを必死に払いのけようとして腕に痛みが走る。
それは痛いを通り越し、灼けるような熱さに近かった。
「何事だ!」
男のナイフが次に私に届く前に、声を聞きつけた護衛騎士たちが部屋に流れ込む。
窓を割って逃走を図る、男。
そしてそれを追う騎士たち。
私は力なくその場に尻もちをつくと、もう動かないマリンとその目があった。
あれほど憎らしく、輝いていた瞳はもう何も映さない。
「大丈夫ですか?」
騎士たちの声をどこか遠くに感じた。
私もこのまま死ぬのだろうか。
どこまでも灼けるような痛みの中、意識は途切れた。
疲労とストレス、それに心的ショック。
挙句にあのナイフには、確実に妃候補であったマリンを殺害するための毒まで塗られていた。
致命傷ではないとはいえ、毒に耐性などない私は十日以上生死の淵を彷徨った。
朦朧とする意識の中見た夢は、どれも面白くもない過去のものたちばかり。
いつでも家族の中心にいたマリンと、そのオマケにすぎない私を何度も思い知らされ、その度に私にはマリンに消えて欲しかったという願望はなかったのか。
私の思いがマリンを殺したのではないのか。
何度も何度も、繰り返しそんな夢を見ていた。
「まだ……ゆめ?」
辛うじて動く左腕。
右腕を見れば、幾重にも包帯が巻かれていた。
あの時ほどの熱さはないものの、決して痛くないわけではない。
でも痛いってことは、生きてるってことよね。
ただ目を開けて飛び込んできた室内は、王宮より与えられた部屋でも自室でもなかった。
高い天井に、天蓋付きの恐ろしく広いベッド。
そのどれもが見ただけで、高いものだと分かる。
まだ私は王宮にいるということなのかしら……。
体はこわばったように固く、無理に動かすことは出来ない。
首だけでもと、横を向くとちょうど部屋の扉が開いた。
そして水差しを持った侍女と、その目が合う。
「あああ! 気が付かれたのですね! 誰か、誰かお医者様をすぐに呼んでちょうだい」
侍女は大きな声を上げながら、私に近づいてきた。
そこからわらわらと、医者や侍女たちが部屋に流れ込んでくる。
その一番奥には、両親の姿もあった。
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