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014 死んだのは私
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一通りの診察を終えると、医師たちから許可を得た両親が私のベッドに駆け寄る。
私たちが襲われすぐに自宅へ一報が届いてからは、私の隣の部屋に滞在が許されそこにずっといてくれたらしい。
そして私も王妃選定試験の待機部屋から、もっと広いこの客間へ移動させられていた。
二人は私を見るなりその瞳に涙をあふれさせ、縋るように床に膝をつきながら私の手を握った。
両親が私のために涙を?
なぜだかそれだけで、じんわりと胸が熱くなり私も涙をこらえることが出来なかった。
私でもちゃんと愛されていたんだ。
そんな安心感が、先ほどまでの酷い悪夢など忘れさせてくれる。
「おか……あ……さま」
久しぶりに声を出そうとしたせいか、それとも涙のせいか。
うまく言葉にならなかった。
しかし母は私の手を握ったまま、何度も頷き声をかけてくれた。
「ああ、良かったわ。あなただけでも生きていてくれて」
「本当にな。神さまに感謝するよ」
「ええ、わたくしたちの可愛い娘、マリンを助けて下さり感謝します」
「……え」
この現実こそが、夢ではないかと思えるほど、その言葉は残酷に思えた。
「なん、て?」
「大丈夫だ、マリン。今は混乱しているかもしれないが」
「ええ、そうよ。目の前であの子を殺されてしまったのだもの。混乱してしまっても仕方ないわ」
「ちが」
「大丈夫よ」
そんな言葉を繰り返す両親が、どこまでも恐ろしく気持ちの悪いモノにしか思えなかった。
私、アイラが死んで、マリンが生きているなど、どうして思えるの。
いくら双子とはいえ、両親には区別がつく。
もちろん間違えられたこともあるけど、毎回区別がつかなかったわけではない。
だって親だもの。
だけど二人は私をマリンだと言う。
ううん。そう思い込んでいるだけ?
私が死んだ方が良かったから。
それとも、他に目的でもあるっていうの?
だけどそのどちらにしても、二人は私をマリンに仕立て上げたいということだけは分かる。
でも、冗談じゃない。
いくらなんでも、あり得ないわ。
「私は……マリンじゃ、ない」
「いいえ。今あなたはその怪我のせいで混乱しているのよ」
「ああ、そうだ。今はゆっくり休みなさい。陛下からもここで療養するように言われておるからな」
「まって、じゃああの子は」
「アイラの葬式ならもう終わったわ。あとで怪我が良くなったら、お墓参りに行きましょうね」
さらりと言う母の言葉に、私は凍り付いた。
葬式は終わり、お墓までって。
でもこの人たちは、アイラが死んだことにしたのよね。
私が死んだことにされたって……。
どうなるの? いえ、どうすればいいの。
このままじゃ、本当に私がいなくなってしまう。
私は両親が部屋に戻ると、私は一縷の望みをかけて手紙を書いた。
そう、婚約者であったリオンへと――
私たちが襲われすぐに自宅へ一報が届いてからは、私の隣の部屋に滞在が許されそこにずっといてくれたらしい。
そして私も王妃選定試験の待機部屋から、もっと広いこの客間へ移動させられていた。
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両親が私のために涙を?
なぜだかそれだけで、じんわりと胸が熱くなり私も涙をこらえることが出来なかった。
私でもちゃんと愛されていたんだ。
そんな安心感が、先ほどまでの酷い悪夢など忘れさせてくれる。
「おか……あ……さま」
久しぶりに声を出そうとしたせいか、それとも涙のせいか。
うまく言葉にならなかった。
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「ああ、良かったわ。あなただけでも生きていてくれて」
「本当にな。神さまに感謝するよ」
「ええ、わたくしたちの可愛い娘、マリンを助けて下さり感謝します」
「……え」
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「なん、て?」
「大丈夫だ、マリン。今は混乱しているかもしれないが」
「ええ、そうよ。目の前であの子を殺されてしまったのだもの。混乱してしまっても仕方ないわ」
「ちが」
「大丈夫よ」
そんな言葉を繰り返す両親が、どこまでも恐ろしく気持ちの悪いモノにしか思えなかった。
私、アイラが死んで、マリンが生きているなど、どうして思えるの。
いくら双子とはいえ、両親には区別がつく。
もちろん間違えられたこともあるけど、毎回区別がつかなかったわけではない。
だって親だもの。
だけど二人は私をマリンだと言う。
ううん。そう思い込んでいるだけ?
私が死んだ方が良かったから。
それとも、他に目的でもあるっていうの?
だけどそのどちらにしても、二人は私をマリンに仕立て上げたいということだけは分かる。
でも、冗談じゃない。
いくらなんでも、あり得ないわ。
「私は……マリンじゃ、ない」
「いいえ。今あなたはその怪我のせいで混乱しているのよ」
「ああ、そうだ。今はゆっくり休みなさい。陛下からもここで療養するように言われておるからな」
「まって、じゃああの子は」
「アイラの葬式ならもう終わったわ。あとで怪我が良くなったら、お墓参りに行きましょうね」
さらりと言う母の言葉に、私は凍り付いた。
葬式は終わり、お墓までって。
でもこの人たちは、アイラが死んだことにしたのよね。
私が死んだことにされたって……。
どうなるの? いえ、どうすればいいの。
このままじゃ、本当に私がいなくなってしまう。
私は両親が部屋に戻ると、私は一縷の望みをかけて手紙を書いた。
そう、婚約者であったリオンへと――
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