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018 味方のいない状態で
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「彼らが妹だけを愛していたから。私の婚約者だったリオンもマリンのことを愛していました。それこそ、私と婚約を交換したいほどに。しかしあの子は、リオンよりも王妃選定試験を選んだ」
試験に行くとマリンが言ったあの日、早朝に蒼白な顔をしてまで止めに来たリオン。
おそらくその時にも愛を囁き、婚約を私と交換してでもいいから行かないでくれとでも懇願したのだろう。
しかしマリンはそれを拒絶した。
あの子はリオンと結婚するよりも、王妃になる方が自分にとって良いと判断したから。
「しかし元より勉強の嫌いなあの子では、選定試験になど通るはずもなかった」
「な、何を言い出すんだマリン。やめないか」
物理的にでも私を止めようとする父たちに、陛下はスッとその手を上げた。
すると外で待機していたのか、騎士が部屋に流れ込み父たちを拘束する。
「何をなさるのですか、陛下」
「それはこちらの台詞だ。今はこの俺と令嬢が話しているんだ。邪魔をするな」
父たちはそれでも抵抗をしていたが、騎士たちを前にどうにもならなかった。
「私は父に脅され、マリンと入れ替わり一日目の午後に王妃選定試験へ参加いたしました。その後の試験は全て私がこなしました。そして最終日、私は試験を辞退すると言ってあったのですが、あの子が……。マリンが最後だけもう一度入れ替わると」
そしてあの事件が起きた。
王妃候補を狙った暗殺事件。
まさかマリンもあんな形で最後を迎えるとは思ってもみなかったでしょうね。
「自分が入れ替わり、陛下を籠絡≪ろうらく≫し、必ずや王妃になるなどと……。許されざることをしたのです」
目をつぶれば、あの時のマリンの顔が思い浮かぶ。
立ち位置が違えば、あそこに転がっていたのは間違いなく私だった。
「それを申告するということは、すなわち令嬢にも罪があるということとなるが?」
私は陛下を見た。
陛下の言うことはもっともであり、私は分かった上で申告したのだ。
罪などもうどうでもいい。
私が私でいられるのなら。
「承知の上です」
これでいい。
そう思ったのに、陛下は予想もしなかった言葉を私に投げかけた。
「そなたの言い分は分かった。だがそれを、どう証明する?」
「それは……」
「そなたを知る者、家族、婚約者、その全てがそなたはマリン令嬢だと言う。そして姉が目の前で殺されたことによる錯乱で、自分は姉本人だと言い張っていると言っているではないか」
陛下の言葉の意図は分からない。
だけどその通りだ。
私は私を証明出来る?
自分を知る身近な人は皆、私をマリンだと言う。
しかもすでにアイラの死亡は届けられていて、覆すにはキチンとした証拠が必要なのだろう。
だとしたら……。
マリンにとても良く似ていて、あの子の影のように生きてきて、今まで何かを残してきたわけでもない。
証人となってくれる人もいない。
私は私だという証明すら、出来ないじゃない。
「まぁ、そんな顔をするな。申し開きの場を双方に設けよう。そこで言いたいことを話すのだな」
数日間の後、陛下は私の死亡を覆すための王宮裁判を開くと話してくれた。
しかし勝率はあるのだろうか。
だけど私として生きていくためには、出ないという選択はなかった。
試験に行くとマリンが言ったあの日、早朝に蒼白な顔をしてまで止めに来たリオン。
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そしてあの事件が起きた。
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陛下の言うことはもっともであり、私は分かった上で申告したのだ。
罪などもうどうでもいい。
私が私でいられるのなら。
「承知の上です」
これでいい。
そう思ったのに、陛下は予想もしなかった言葉を私に投げかけた。
「そなたの言い分は分かった。だがそれを、どう証明する?」
「それは……」
「そなたを知る者、家族、婚約者、その全てがそなたはマリン令嬢だと言う。そして姉が目の前で殺されたことによる錯乱で、自分は姉本人だと言い張っていると言っているではないか」
陛下の言葉の意図は分からない。
だけどその通りだ。
私は私を証明出来る?
自分を知る身近な人は皆、私をマリンだと言う。
しかもすでにアイラの死亡は届けられていて、覆すにはキチンとした証拠が必要なのだろう。
だとしたら……。
マリンにとても良く似ていて、あの子の影のように生きてきて、今まで何かを残してきたわけでもない。
証人となってくれる人もいない。
私は私だという証明すら、出来ないじゃない。
「まぁ、そんな顔をするな。申し開きの場を双方に設けよう。そこで言いたいことを話すのだな」
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だけど私として生きていくためには、出ないという選択はなかった。
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