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021 種族としての能力
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「井戸の水はどうやって調べたんですか?」
「精密に調べることは不可能だが、全部の井戸の水を同じ日に汲んで違いがないか調べたんだ」
「それが全部同じだった、と?」
「ああ、そうだ」
向こうの世界みたいに、詳しく顕微鏡で、ということではないらしい。
魔法で分かるのは、同じかどうかということだけ。
感染者が出てない井戸の水も、出た井戸の水もみんな同じだったということ。
そこから井戸の水は感染源ではないとしたらしい。
その調べ方しか出来なかったっていうから、ある意味仕方ないんだろうけど。
でもなぁ。
「ん-。そこに不正はなかったんですかね?」
「不正? どういうことだ」
「だって、本当に同じ日に別の井戸から汲んだ水だったんですか?」
「そりゃあ、当たり前だろう。そんなこと誤魔化してどうするんだ」
普通ならそう考える。
だってこの街の人は、病に苦しんで、原因を探しているから。
だけど考えたんだ。
そうじゃない人がもしいるならって。
「たとえば、この病の原因を作った人とか。原因を特定されたら困る人とか。そういう人がいたら、どうすると思いますか?」
「確かにな。ルルドの言う通りだ」
「あーん? どういうことだよ、ランタス。俺たちにも分かるように説明してくれ」
「つまりだ。感染させた原因を作ったり、感染源を知っているヤツがいるとするならば、それを知られたくないハズだ」
「まあ、そうだろうが。だがだとして……水を誤魔化したってことか?」
「そう考えられますよね。同じ日に、違う井戸から汲んだってみせかけて本当は」
「そうじゃなかったってことか……」
「あくまで可能性の話です」
そう。
そう考えることも出来るということ。
これならば、本来は井戸が感染源なのだが、それを隠した人間のせいで分からなかったってことだもの。
一番、簡単な方法さ。
だけどこれが真実だとするならば、本当に全ての水が同じではないという証明をしなければならなくなる。
それに一番は、犯人捜しよりも病の発生源の特定が先だ。
「もう一度井戸を調べてみるにしても、細かな検査はここでは難しいんだ」
「あー、そうだよなー。王都の研究員でもいれば、そういうことも出来るかもしれないけど」
「ん-。何かいい方法はないかなぁ」
「見ずに調べる方法か……」
「あ……」
ランタスの言葉で、ふとボクは気づく。
この街に入ってから感じていた違和感に。
「そういえば、この街から変な匂いがしてるのって皆さんは気づいてますか?」
「匂い? いや、何の匂いもしないが」
「なんかルルドは匂うのかー?」
「はい。入って来た時からずっと」
もしかするとあの食べられない実のように、ボクの鼻が役に立つのかもしれない。
「匂いっていうのは、獣人だから感じるものなのか?」
「そうかもしれないが、もしかするとルルドの固有スキルなのかもしれない」
嬉々としてランタスがボクの能力をザイオンに説明し出す。
固有スキルとか言われると、なんかカッコイイな。
きっと、犬族だから鼻がいいだけだと思うけど。
それでも自分が認められた気分になる。
「すごいな、小さいのにボウズは」
「ザイオン、ちゃんとルルドと言え、ルルドと」
「ああ、すまん。つい癖で……。だいたい、さっきから聞いているとかなり頭も良さそうだが。どう見てもうちのチビと変わらない年齢だと思うんだが」
「ああ、子どもさんいるんですね。いくつなんですか?」
「今年六歳だ」
うん?
えっと……。
今、ザイオンはなんて言ったっけ?
自分の子どもと同じくらいに見えるって言わなかった?
「ぼ、ボクはさすがにもう少し上です」
キチンと数えたことはないけど、たぶん十歳は過ぎていたはず。
だいたい、中身はもっと年上だし。
そんなに子どもに見えるかなぁ。
背は高くないけどさ。
結構しっかりしてると思うんだけど。
「ちゃんと食えよ? ガルド、おまえが保護者ならちゃんとしてやれ」
「分かってる」
歳の割には幼く見えたから、逆に心配させてしまったかな。
ガルドほどは食べないけど、ランタスくらいは食べてるつもりなんだけど。
相変わらず背は大きくならない。
こういうのって、犬種とかもあるのかな。
獣人に犬種当てはめていいのか、知らないけど。
旅を続けてたら同じ種族に会えるかもしれないし。
その時はたくさん聞きたいことが出来ちゃったかも。
旅を続けるためにも、まずはこの街の病をどうにかしないと。
「ルルド、井戸がおかしいというならまた水集めてみるかー?」
「いや、それではダメだ。前回と同じように誤魔化されるかもしれない」
「そうだね。ランタスの言う通りだと思う」
「んじゃ、どーすんだ? 全部の井戸を回るか?」
「大変かもしれないけど、たぶんそれがいいと思う。ザイオンさん、井戸の地図とかはないですか?」
街の中にいくつ井戸があるか分からないけど、一つずつ潰していく方が一番正確だと思った。
ボクの言葉にザイオンは街の地図を出し、それを広げた。
「精密に調べることは不可能だが、全部の井戸の水を同じ日に汲んで違いがないか調べたんだ」
「それが全部同じだった、と?」
「ああ、そうだ」
向こうの世界みたいに、詳しく顕微鏡で、ということではないらしい。
魔法で分かるのは、同じかどうかということだけ。
感染者が出てない井戸の水も、出た井戸の水もみんな同じだったということ。
そこから井戸の水は感染源ではないとしたらしい。
その調べ方しか出来なかったっていうから、ある意味仕方ないんだろうけど。
でもなぁ。
「ん-。そこに不正はなかったんですかね?」
「不正? どういうことだ」
「だって、本当に同じ日に別の井戸から汲んだ水だったんですか?」
「そりゃあ、当たり前だろう。そんなこと誤魔化してどうするんだ」
普通ならそう考える。
だってこの街の人は、病に苦しんで、原因を探しているから。
だけど考えたんだ。
そうじゃない人がもしいるならって。
「たとえば、この病の原因を作った人とか。原因を特定されたら困る人とか。そういう人がいたら、どうすると思いますか?」
「確かにな。ルルドの言う通りだ」
「あーん? どういうことだよ、ランタス。俺たちにも分かるように説明してくれ」
「つまりだ。感染させた原因を作ったり、感染源を知っているヤツがいるとするならば、それを知られたくないハズだ」
「まあ、そうだろうが。だがだとして……水を誤魔化したってことか?」
「そう考えられますよね。同じ日に、違う井戸から汲んだってみせかけて本当は」
「そうじゃなかったってことか……」
「あくまで可能性の話です」
そう。
そう考えることも出来るということ。
これならば、本来は井戸が感染源なのだが、それを隠した人間のせいで分からなかったってことだもの。
一番、簡単な方法さ。
だけどこれが真実だとするならば、本当に全ての水が同じではないという証明をしなければならなくなる。
それに一番は、犯人捜しよりも病の発生源の特定が先だ。
「もう一度井戸を調べてみるにしても、細かな検査はここでは難しいんだ」
「あー、そうだよなー。王都の研究員でもいれば、そういうことも出来るかもしれないけど」
「ん-。何かいい方法はないかなぁ」
「見ずに調べる方法か……」
「あ……」
ランタスの言葉で、ふとボクは気づく。
この街に入ってから感じていた違和感に。
「そういえば、この街から変な匂いがしてるのって皆さんは気づいてますか?」
「匂い? いや、何の匂いもしないが」
「なんかルルドは匂うのかー?」
「はい。入って来た時からずっと」
もしかするとあの食べられない実のように、ボクの鼻が役に立つのかもしれない。
「匂いっていうのは、獣人だから感じるものなのか?」
「そうかもしれないが、もしかするとルルドの固有スキルなのかもしれない」
嬉々としてランタスがボクの能力をザイオンに説明し出す。
固有スキルとか言われると、なんかカッコイイな。
きっと、犬族だから鼻がいいだけだと思うけど。
それでも自分が認められた気分になる。
「すごいな、小さいのにボウズは」
「ザイオン、ちゃんとルルドと言え、ルルドと」
「ああ、すまん。つい癖で……。だいたい、さっきから聞いているとかなり頭も良さそうだが。どう見てもうちのチビと変わらない年齢だと思うんだが」
「ああ、子どもさんいるんですね。いくつなんですか?」
「今年六歳だ」
うん?
えっと……。
今、ザイオンはなんて言ったっけ?
自分の子どもと同じくらいに見えるって言わなかった?
「ぼ、ボクはさすがにもう少し上です」
キチンと数えたことはないけど、たぶん十歳は過ぎていたはず。
だいたい、中身はもっと年上だし。
そんなに子どもに見えるかなぁ。
背は高くないけどさ。
結構しっかりしてると思うんだけど。
「ちゃんと食えよ? ガルド、おまえが保護者ならちゃんとしてやれ」
「分かってる」
歳の割には幼く見えたから、逆に心配させてしまったかな。
ガルドほどは食べないけど、ランタスくらいは食べてるつもりなんだけど。
相変わらず背は大きくならない。
こういうのって、犬種とかもあるのかな。
獣人に犬種当てはめていいのか、知らないけど。
旅を続けてたら同じ種族に会えるかもしれないし。
その時はたくさん聞きたいことが出来ちゃったかも。
旅を続けるためにも、まずはこの街の病をどうにかしないと。
「ルルド、井戸がおかしいというならまた水集めてみるかー?」
「いや、それではダメだ。前回と同じように誤魔化されるかもしれない」
「そうだね。ランタスの言う通りだと思う」
「んじゃ、どーすんだ? 全部の井戸を回るか?」
「大変かもしれないけど、たぶんそれがいいと思う。ザイオンさん、井戸の地図とかはないですか?」
街の中にいくつ井戸があるか分からないけど、一つずつ潰していく方が一番正確だと思った。
ボクの言葉にザイオンは街の地図を出し、それを広げた。
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