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020 どうせもう巻き込まれているから
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「原因は⁈」
「そんなの分かったら苦労しないだろ」
「ザイオン、このことは王都には報告してあるのかい?」
「ああ。とっくにしてある。だが……」
ザイオンは視線を落とす。
「王都からの救援はない」
「ふざけんなよ! なんでだよ」
今にも食ってかからんばかりのガルドが、ザイオンの胸ぐらを掴んだ。
分かってる。
ザイオンが悪いわけではないって。
それでも止まることが出来ない。
今のガルドはそんな風に見えた。
「未知の病が王都にまで蔓延したら困るからということだ。原因は探ってはくれるらしい。だが、人は派遣できないと言われた」
人を派遣しないのに、どうやって原因を探るというのだろう。
体よく断られただけで、きっと調査なんてしない。
国はただこの病の行き先を遠くから見ているだけ。
もし完治したならそれでよい。
でも全滅するのならば、拡大させないだけ。
きっとそんな感じなんだろう。
医療が発展していないこの世界では、ある意味それが精一杯なのかもしれないけど。
「ふざけんなよ。全滅するまで傍観する気かよ!」
「さすがにそれはさせないさ。街のみんなで原因を探している。だが……」
「感染は拡大しているのか?」
「……そうだ」
原因も分からなければ、感染防止策もない。
それで治したり、広げないようにするなんてさすがに無理だ。
せめて原因さえ分かれば、どうにかなるかもしれないけど。
「人が意気揚々と依頼を終わらせてきたっていうのに……」
「依頼完了の手続きはしてやる。ひとまず金をもらたったら、避難するんだ」
「そんなわけにいかないだろ!」
「おまえが感染したら、ジュリアが悲しむ」
「それは……」
ガルドの性格からしたら、きっとこの街を救いたいんだろうな。
ここに残って、みんなと共に病と闘いたいんだと思う。
だけどザイオンの言うことも分かる。
妹さんにとっては、大事な兄なんだから。
でもそれを言ってしまったら……。
「ザイオンさんだって、同じじゃないんですか? ジュリアさんにとって大切な旦那さんだと思うんです」
「そうかもしれないが、おれにはこの仕事がある」
「そうですよね。それにこの街に残っている人たちも、感染するかもしれなくても離れられない理由がある。違いますか?」
「そうだ」
「それなら、あんまり役に立たなくても、人手は多い方がいいんじゃないですか?」
病は怖いけど、このまま見なかったことにしてココを去ることは出来ない。
あとでリーシャたちにはしばらくこの街に滞在しなきゃいけなくなったことを告げればいい。
それで少しでも協力できるなら、きっとその方がいいとボクは思うから。
「危険すぎる」
「そうですかね? だいたいもう、この街に入ってしまった以上、感染していないという保証はありません。それなら原因を見つけて、どうにかした方がいいと思うんです」
この病が空気感染ならば、すでに感染しているリスクは高い。
それなら協力した方が助かる確率も上がるもの。
リーシャにはため息をつかれそうだけど。
「まず状況を教えてくれませんか? これはいつ、どこから始まったのか」
時系列をまとめて、まずは原因を探す方がいいな。
その中にヒントとなるものがあるかもしれないし。
「随分と頼りになりそうな感じだが、本当にいいのか?」
「もう巻き込まれてるかもしれないから、大丈夫です」
「それなら……いいが」
そう言いながらザイオンはぽつりぽつりと、ことの始まりを話し始めた。
「半月くらい前の話だ。山に一番近い家の住人から、この病は始まったんだ」
初めは山に近い住人数名。
そのあとだんだんと、広がっていった。
症状としては胃腸風邪のような症状で、発熱に嘔吐があるという。
「井戸に何か入れられたんじゃないかって、最初は疑ったさ。だけど山に近い井戸も、下流の井戸も水は同じだった」
「じゃあ、水ではないってことだな」
「変なものを食べたとか、流行る前に何かあったとかないのか?」
「何か、か……」
ザイオンは顎に手をかけ、記憶を辿っていた。
流行った経路が山からだんだん下流にかけてってなれば、普通は水を疑うだろう。
しかも感染性の胃腸風邪っぽいなら、何か口にしたものがダメだった可能性が高いわけだし。
吐いたものから感染することも考えられるけど、ザイオンの話では街の中の半数以上が感染しているという。
それなら、人から人へにしても多いんだよなぁ。
普通、感染した人には対策をして近づくわけだし。
ここまで広がったのには、もっと別の要因がありそうな気がする。
「あの病が始まる前に、街の中で行方不明者が出たんだ」
「行方不明者?」
「ああ。若い人妻でな。旦那の話では、買い物に出かけたまま戻ってこないっていうんだ」
「さすがにそれは関係ないだろう」
「まぁ、そうだな。だが、変わったことっていうのは本当にそれぐらいしかなくてな」
「集団で同じものを食べたとかないのか?」
「祭りの時期じゃないからなぁ。それはさすがにない」
同じものは食べてないってことは、集団食中毒でもないし。
だけど、行方不明者か。
その奥さんはどこに行ったのかな。
それはそれで気になるけど、今はまず病をどうにかしなくちゃ。
「そんなの分かったら苦労しないだろ」
「ザイオン、このことは王都には報告してあるのかい?」
「ああ。とっくにしてある。だが……」
ザイオンは視線を落とす。
「王都からの救援はない」
「ふざけんなよ! なんでだよ」
今にも食ってかからんばかりのガルドが、ザイオンの胸ぐらを掴んだ。
分かってる。
ザイオンが悪いわけではないって。
それでも止まることが出来ない。
今のガルドはそんな風に見えた。
「未知の病が王都にまで蔓延したら困るからということだ。原因は探ってはくれるらしい。だが、人は派遣できないと言われた」
人を派遣しないのに、どうやって原因を探るというのだろう。
体よく断られただけで、きっと調査なんてしない。
国はただこの病の行き先を遠くから見ているだけ。
もし完治したならそれでよい。
でも全滅するのならば、拡大させないだけ。
きっとそんな感じなんだろう。
医療が発展していないこの世界では、ある意味それが精一杯なのかもしれないけど。
「ふざけんなよ。全滅するまで傍観する気かよ!」
「さすがにそれはさせないさ。街のみんなで原因を探している。だが……」
「感染は拡大しているのか?」
「……そうだ」
原因も分からなければ、感染防止策もない。
それで治したり、広げないようにするなんてさすがに無理だ。
せめて原因さえ分かれば、どうにかなるかもしれないけど。
「人が意気揚々と依頼を終わらせてきたっていうのに……」
「依頼完了の手続きはしてやる。ひとまず金をもらたったら、避難するんだ」
「そんなわけにいかないだろ!」
「おまえが感染したら、ジュリアが悲しむ」
「それは……」
ガルドの性格からしたら、きっとこの街を救いたいんだろうな。
ここに残って、みんなと共に病と闘いたいんだと思う。
だけどザイオンの言うことも分かる。
妹さんにとっては、大事な兄なんだから。
でもそれを言ってしまったら……。
「ザイオンさんだって、同じじゃないんですか? ジュリアさんにとって大切な旦那さんだと思うんです」
「そうかもしれないが、おれにはこの仕事がある」
「そうですよね。それにこの街に残っている人たちも、感染するかもしれなくても離れられない理由がある。違いますか?」
「そうだ」
「それなら、あんまり役に立たなくても、人手は多い方がいいんじゃないですか?」
病は怖いけど、このまま見なかったことにしてココを去ることは出来ない。
あとでリーシャたちにはしばらくこの街に滞在しなきゃいけなくなったことを告げればいい。
それで少しでも協力できるなら、きっとその方がいいとボクは思うから。
「危険すぎる」
「そうですかね? だいたいもう、この街に入ってしまった以上、感染していないという保証はありません。それなら原因を見つけて、どうにかした方がいいと思うんです」
この病が空気感染ならば、すでに感染しているリスクは高い。
それなら協力した方が助かる確率も上がるもの。
リーシャにはため息をつかれそうだけど。
「まず状況を教えてくれませんか? これはいつ、どこから始まったのか」
時系列をまとめて、まずは原因を探す方がいいな。
その中にヒントとなるものがあるかもしれないし。
「随分と頼りになりそうな感じだが、本当にいいのか?」
「もう巻き込まれてるかもしれないから、大丈夫です」
「それなら……いいが」
そう言いながらザイオンはぽつりぽつりと、ことの始まりを話し始めた。
「半月くらい前の話だ。山に一番近い家の住人から、この病は始まったんだ」
初めは山に近い住人数名。
そのあとだんだんと、広がっていった。
症状としては胃腸風邪のような症状で、発熱に嘔吐があるという。
「井戸に何か入れられたんじゃないかって、最初は疑ったさ。だけど山に近い井戸も、下流の井戸も水は同じだった」
「じゃあ、水ではないってことだな」
「変なものを食べたとか、流行る前に何かあったとかないのか?」
「何か、か……」
ザイオンは顎に手をかけ、記憶を辿っていた。
流行った経路が山からだんだん下流にかけてってなれば、普通は水を疑うだろう。
しかも感染性の胃腸風邪っぽいなら、何か口にしたものがダメだった可能性が高いわけだし。
吐いたものから感染することも考えられるけど、ザイオンの話では街の中の半数以上が感染しているという。
それなら、人から人へにしても多いんだよなぁ。
普通、感染した人には対策をして近づくわけだし。
ここまで広がったのには、もっと別の要因がありそうな気がする。
「あの病が始まる前に、街の中で行方不明者が出たんだ」
「行方不明者?」
「ああ。若い人妻でな。旦那の話では、買い物に出かけたまま戻ってこないっていうんだ」
「さすがにそれは関係ないだろう」
「まぁ、そうだな。だが、変わったことっていうのは本当にそれぐらいしかなくてな」
「集団で同じものを食べたとかないのか?」
「祭りの時期じゃないからなぁ。それはさすがにない」
同じものは食べてないってことは、集団食中毒でもないし。
だけど、行方不明者か。
その奥さんはどこに行ったのかな。
それはそれで気になるけど、今はまず病をどうにかしなくちゃ。
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